医院や病院だからこそ、採用時の健康診断はしっかりとやりましょう

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2014/02/20
医院や病院だからこそ、採用時の健康診断はしっかりとやりましょう

医院や病院だからこそ、採用時の健康診断はしっかりとやりましょう 開業したばかりの個人の医院や病院は、看護師やスタッフの数も5名前後です。

知り合いからの紹介で入社していたり、毎日、院長先生と顔を合わせて話をする人間関係もあり、入退者も多くありません。

それから黒字が何年間も続き、医療法人になると組織が大きくなり、看護師やスタッフの数も10名を超えてきます。そうすると、看護師やスタッフ同士のいざこざ、院長先生との距離も微妙に遠くなり、入退者が増えてきてしまうのです。

とくに大学病院でなければ、医院や病院の場合、新卒を採用することは、ほとんどありません。
中途採用で、しかも年齢が高い人を採用することも多いはずです。
結婚していて、年齢が高い方が、生活も安定していて、人当たりも良いという理由で採用する院長先生も多くいます。

それで、このあいだ、医療法人の院長先生から、下記のような質問を受けました。

「採用予定者に健康診断を受診してもらったところ、肝臓の数値が異常に高く、再検査の受診を検討しています。もし、大きな病気の場合には採用しない方向で考えていますが、法律的には問題ないですよね」

そもそも採用予定者に対して健康診断等を実施することは、労働安全衛生法で定められています。

これは採用時点での働く人の健康状態を確認すると同時に、そもそも、医療法人の仕事に従事できるのかという判断も必要だからです。
医院や病院では、夜間診療を行っていたり、手術があれば、長時間、立ちっぱなしということもあります。

基本的に、採用時に行う健康診断の内容は、下記となります。

【1】    既往歴(身体的、精神的な過去の病歴)の調査

【2】    業務歴(どんな環境の職場で働いていたか?)の調査

【3】    自覚症状の有無

【4】    身長、体重、視力、聴力の検査

【5】    胸部エックス線検査

【6】    血圧の測定

【7】    採血による検査(貧血、血糖値、コレステロール値など)

【8】    肝機能検査

【9】    尿検査

【10】    心電図検査

特に、血圧、血糖値、コレステロール値などに異常があると、大きな病気につながりがちです。最初から、夜間診療などの勤務ができないことになります。

医療法人は、看護師やスタッフに健康診断を受診させ、健康状態を把握する義務もあります。これは採用予定者に関しても同じなのです。

もし採用予定者の肝臓の数値が異常に高いときには、注意することがあります。
それはB型肝炎、C型肝炎のウイルス感染の可能性もあるということです。

これに関しては、裁判事例があります。

<国民金融公庫事件 平成15年6月 東京地裁>

  • 大卒予定者(内々定者)に健康診断を受診させた
  • 1人のある数値に異常があり、再検査を受診させた
  • さらに、精密検査を受診させた結果、B型肝炎と判明
    → この時点では再検査と精密検査を受診させた理由は伝えていない
  • 内々定は出していたが、不採用とした

そして、裁判となったのですが、
会社は一部では勝ちましたが、負けた部分もありました。

(勝った部分)

あくまでも内々定であり、内定ではないので、不採用は妥当。
「内々定」と「内定」は法的な意味が違います。

・内々定・・・会社が採用を予定しているだけのレベル
・内定・・・・会社が内定の意思を表示し、相手も承諾した状況

今回は内々定の段階であり、内定の段階まで進んでいなかったので、不採用と判断したことは、問題ありませんでした。

(負けた部分)

○ B型肝炎の調査等について本人の同意を取っていない
○ 個人のプライバシーを侵害している
だから、慰謝料として150万円の支払が命じられたのです。

 

この裁判では病気とブライバシーの両面が問題となったのです。
おそらく、事前に再検査と精密検査を行なう理由を伝えておけば、賠償責任はなかったはずです。

だから、「この時点では再検査と精密検査を受診させた理由は伝えていない」という部分がポイントだったのです。

最初の質問に対する答えは、下記のようになります。

  • 再検査の理由をきちんと伝えることが重要
  • 検査結果により、採用の可否を判断
  • 不採用の場合は、理由も含めて誠実に対応

また上記の裁判ではB型肝炎が原因でしたが、最近はうつ病等の精神的な疾患も大きな問題となっています。

うつ病等はデリケートな問題でもあり、再発する可能性もあるため、採用する医療法人にとっても、十分に考えなければいけません。
とくに医院や病院での仕事は激務で、患者との関係でストレスも強く受け、精神的に追いつめられてしまう看護師やスタッフも多いのです。

これに関しては、今はまだ判例もガイドラインも存在しないのが、現在の状況です。
院長先生からも、「うつ病を発症したスタッフの対処がわからない。知り合いの精神科の先生に紹介状は書いてあげたが、これから、どうすればよいのか」と質問されたこともあります。

最初の面接時に下記の質問をしてください。

  • 過去の病歴(身体的、精神的)に関して
  • 職務経歴などに空白の期間がある場合、何をしていたか

そして、内々定を出した段階で健康診断を実施するのです。

こうしておけば、入社後に「聞かれなかったので答えませんでしたが、実は○○という病気なんです」という結果はなくなるのです。

実際の事例でも、非常に優秀な人物だったのですが、採用後にすぐ倒れ、調べてみたら、長い間、重い病気を患っていたというものもあります。
この事例も採用の段階で健康状態をチェックしていれば、採用はしないという判断もあったでしょう。

こういう事態に陥らないようにするためにも入口でしっかりとチェックしておくことが大切です。

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