医療法人を設立するときに、院長先生が所有する建物を売却してはいけない理由

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2016/03/20
医療法人を設立するときに、院長先生が所有する建物を売却してはいけない理由


医療法人を設立するときに、院長先生が所有する建物を売却してはいけない理由

院長先生が、個人で所有している建物で医院や病院を開業していることがあります。もしくは、医院を事業承継したので、土地と建物は、祖父や父親の所有となっていて、院長先生が医院経営や病院経営のために賃貸していることもあります。
その院長先生が、医療法人の設立を申請しました。

この申請で、医療法人の財産目録の中に、建物と土地を計上してしまう院長先生がいます。

設立したばかりの医療法人には、お金がないので、院長先生が建物と土地を現物出資するという形になります。もしくは、銀行がその建物と土地を担保に、医療法人を設立したあと、すぐにお金を貸して、買い取るという方法もあります。

どちらかと言えば、前者の現物出資の方が一般的のようです。

「診療のために使っている建物と土地を、医療法人が所有するのは、当然だ」と考えるかもしれません。しかも現在は、持ち分の定めのない医療法人が増えてきていて、現物出資を行ったとしても、持分には相続税がかかりません。

祖父や父親が現物出資しても同じ取扱いなので、かなりの相続税の節税対策と言えます。ただ、すぐに現物出資したり、売却するのは、ちょっと待って欲しいのです。

まず、土地は祖父母の時代からずっと所有していたとして、途中で相続や贈与があっても、最初に取得した日の取得価額を引き継いでしまいます。

もし祖父の時代から、医院や病院の経営を行っていると、その土地の取得価額は、かなり安いことが予想されます。また、父親が買ったが、契約書を紛失していると、取得価額は分かりません。

取得日の売買契約書がなければ、売却価格の5%を取得価額とみなします。

医療法人を設立するときに、院長先生が所有する建物を売却してはいけない理由

どちらかのケースに当てはまるのに、土地を医療法人に売却してしまうと、多額の売却益が発生して、院長先生、もしくは、祖父などに所得税がかかってしまうのです。

ただそれでも、土地を売却した方がよい場合もあります。
先ほども説明しましたが、土地を現物出資した場合、持分の定めのない医療法人であれば、持分に相続税がかからないからです。

 

つまり、「支払う所得税 < 節税できる相続税」となれば、売却益が発生する土地でも、医療法人に移転させるという選択肢もあり得るのです。

 

一方、祖父や院長先生が、平成のバブル時代に、高い価格で土地を買っているケースもあります。このとき、土地を売却すると、売却損が発生しますが、同じ年度内に、不動産の売却益がないと通算できずに、切り捨てとなってしまいます。

売却益が出る土地を、第三者に売却するタイミングと合致するならば、良いかもしれません。

 

次は、建物ですが、こちらは違う問題があります。
こちらは、建物の簿価(減価償却したあとの金額)で、医療法人に売却することになります。
そのため、原則は、建物の売却したときに、売却益は発生しません。なお、父親が買ったとき、もしくは請負を依頼したときの契約書を紛失していたら、「建物の標準的な建築価額表」か、取得価額を計算しても問題ありません。
とすれば、やはり売却益は発生しません。

では、違う問題とは何でしょうか?

それは、消費税です。
現在、個人事業主として医院経営や病院経営を行っていて、自由診療の医業収益が1年間(1月1日から12月31日で判定)で、1000万円を超えていると、消費税を納めることになります。
消費税を納める人を、課税事業者と呼びます。自由診療とは、実際の診療行為の報酬だけではなく、医薬品やサプリメントの売上も含めて判断します。

そのため、現在、ほとんどの院長先生が課税事業者になっていると予想されます。

もし、院長先生が建物を所有していて、かつ課税事業者になっていると、建物を医療法人に現物出資、または売却したときに、その消費税を納める義務が発生してしまうのです。

例えば、建物の価格が1000万円ならば、80万円の消費税を納めることになるのです。

一方、建物を買った、もしくは現物出資してもらった医療法人は、設立から2年間は消費税を納めなくてもよいため、還付もしてもらえません。
つまり、建物の消費税分の支払いが、まったく損になってしまうのです。

これは祖父や父親が建物を所有している場合でも、院長先生からもらっている賃料が、1年間で1000万円を超えていると、課税事業者になっています。ただ、消費税の制度は、あくまで、今年1000万円を超えた場合、2年後から納める対象になるのです。

だから、医療法人も設立してから、2年間は消費税を納めなくてもよいのです。

医療法人を設立するときに、院長先生が所有する建物を売却してはいけない理由

ということは、院長先生が建物を売却してもよいのは、2年前の自由診療の医業収益が1000万円を超えていない場合です。

 

そのため、医療法人を設立して事業を開始したときではなく、2年間待ってから、売却すれば、消費税を納める必要はなくなります。

 

さらに、医療法人が課税事業者となっていれば、建物を買ったことで、消費税を一部、還付してもらえます。

ただ、実は、これで終わりではありません。建物だけを医療法人に売却すると、土地は祖父、または院長先生が所有することになるため、やるべきことがあります。

それは、次回、解説いたします。

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