一般社団法人であれば、医療法人の持ち分を買い取って、議決権も持てます。①

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2016/12/30
一般社団法人であれば、医療法人の持ち分を買い取って、議決権も持てます。①

一般社団法人であれば、医療法人の持ち分を買い取って、議決権も持てます。①

医療法人の株主は、「社員」と呼ばれます。
通常、株式会社の場合であれば、その株主になれるのは、個人だけではなく、法人でもなることができます。そして、出資金額に応じて、議決権を持ちます。
株式会社では、原則、「株式会社の持ち分比率(出資金額の比率)=議決権の割合」となるのです。

例えば、Aさんが、100万円を出資して、B法人が900万円を出資して、1000万円で株式会社を設立したとします。すると、Aさんの持つ議決権は10%しかなく、B法人が残りの90%の議決権を所有することになります。株式会社に対する持ち分も、1対9となります。

ただ、こんな単純な話では終わりません。
あくまで、最初に出資したのが1対9という割合ということで、簡単な事例になっているのです。

次に、Aさんが100万円を出資して、株式会社Xを設立したとします。そのあと、株式会社Xが儲かって、2000万円の利益が出たとします。法人税を30%支払うと、残りは税引き後の利益は1400万円です。この段階で、B法人が900万円を出資したとします。

とすると、Aさんと、B法人の議決権は、どうなるのでしょうか?

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先ほどと同じように、登記簿謄本上では、B法人が資本金の90%である900万円を出資したと記録されます。そのため、資本金は1000万円となるのです。このあと、90%の議決権を持つB法人が、すぐに株式会社Xを解散させたとします。株式会社では、議決権の過半数を有する株主が出席し、かつ議決権の3分の2以上の賛成で解散できます。

つまり、B法人が90%の議決権を持つとすれば、B法人の意思決定だけで、Aさんの意見を無視して解散することが可能なのです。

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そもそも、900万円を出資した瞬間に、2160万円をもらえる権利が発生するとすれば、AさんがB法人の出資を断るでしょう。

結局、B法人が出資するときの株式会社Xの価値は、100万円ではなく、1500万円なのです。

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現実には、Aさんとして、株式会社Xの将来性がもっとあると考えていれば、それも加味して、B法人の議決権をもっと小さくしなければ、900万円の増資に応じないと主張することもあり得ます。ここでは、そこまで考えずに、単純に過去の利益から株式会社Xの時価を計算して、B法人の議決権を決定しました。

もう一つ、覚えておいて欲しいのは、議決権のある株式であれば、Aさんが亡くなったときに、その相続人が株式を相続して、議決権を行使できるのです。同様に、B法人の株主が亡くなったとすれば、その相続人がB法人の議決権を相続します。そして、株式会社Xの議決権を間接的に所有することになります。

本題に入りましょう。
医療法人の場合、持ち分の定めのある医療法人と持ち分の定めのない医療法人があります。

まずは、持ち分の定めのない医療法人の場合、上記の株式会社のような持ち分比率というものはありません。

医療法人の株主である「社員」は、1人1票の議決権だけを持ち、多数決で運営方針を決定していきます。

このとき、2つだけ注意点があります。

1つ目は、この社員たる地位は、個人だけではなく、法人でも取得できることです。

法人が医療法人の株主になることができるのです。ただし、営利を目的とした株式会社は取得できません。あくまで、非営利を目的とした一般社団法人や一般財団法人でなくてはいけません。さらに、別の医療法人が、医療法人の社員になることも許されていません。

でも、持ち分ではなく、議決権だけですので、社員となる一般社団法人としても、配当を受け取れるわけでもなく、解散したときに残った財産も国や地方公共団体に行くので、儲かることはありません。そのため、院長先生が医療法人の議決権を過半数に保ちたいという目的がある場合だけ使うことになります。

例えば、医療法人が分院を出すと、そこには常駐で管理責任者となる医師が必要となります。管理者となると、医療法46の5条第6項により医療法人の理事となります。

都道府県の担当者から、理事は医療法人の株主(社員のこと)に加えることを指導されることがあります。

「理事=社員」という法律はないのですが、その指導に従うことがほとんどです。そのため、分院を増やしていくと、社員数が増えて、院長先生の議決権の割合が薄まっていくことになります。

そこで、一般社団法人を設立して、社員に加えておけば、過半数の議決権を確保できるのです。

このとき、社員の地位である議決権は相続されないということは、覚えておいてください。院長先生が所有していた社員たる地位は、死亡すれば、誰にも承継されません。一般社団法人は倒産しないかぎり、ずっと社員としての地位を保てるというメリットもあるのです。

次に、持ち分の定めのある医療法人の場合ですが、株式会社と同じように持ち分比率というものがあり、かつ社員には議決権もあります。ところが、株式会社と決定的に違うところがあります。

それは、持ち分の定めのある医療法人では、「持ち分比率 ≠ 議決権の割合」になっているということです。

持ち分比率は、先ほどの株式会社のように、時価で計算します。一方、議決権は、あくまで1人の社員に1票となります。持ち分の定めのある医療法人の持ち分は、営利法人でも取得できます。株式会社が増資したり、売買したりできるということです。

ところが、営利を目的とする株式会社は、社員としての議決権は行使できません。社員としての地位は、あくまで個人、または非営利の法人しか、取得できないのです。

そして、持ち分の定めのある医療法人の社員の議決権も、やはり相続されません。ところが、持ち分の定めのある医療法人の持ち分比率は、財産なので、相続人に相続されるのです。

例えば、父親である院長先生の持ち分が60%で、次に医療法人を継ぐはずの長男の持ち分が40%とします。相続税の対策で、院長先生の持ち分を長男に少しずつ贈与していたのですが、時間切れで亡くなってしまったのです。院長先生が亡くなると、相続人である3人の兄弟が、その持ち分を相続します。そのあと、次男と長女が、医療法人の社員(株主のこと)になれば、何の問題もありません。

ところが、次男も長女も医療法人の経営には関与しておらず、かつ、いつも威張っている長男との仲は良くなかったのです。

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もともと、院長先生の持ち分を長男に贈与していたことに対して、「勝手に遺産分割を決められていて、不公平だ」と2人は考えています。院長先生の遺言書はなかったので、医療法人の持ち分は3人の法定相続分で分けられて、60%は3分の1ずつで、20%ずつを相続することになります。

持ち分比率でいえば、長男が自分の持ち分と合わせて60%となり、次男と長女がぞれぞれで20%、合わせても40%にしかなりません。ところが、議決権は1人1票なので、次男と長女が社員になると2対1となり、長男の意見が通らなくなります。

そこで、長男は2人が社員に参加することを認めませんでした。医療法上は、現在の社員が認めない限り、新しい社員として参加できません。

では、次男と長女は、40%の持ち分を所有しているだけで、何もできないのでしょうか?
議決権がないので、何もできない気もするのですが、持ち分の定めのある医療法人の定款には、必ず、下記の条項が入っています。

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上記のことから、次男と長女は、40%分の持ち分の払い戻しを、医療法人に対して請求できることになります。

実際に、1億円の40%というと4000万円ですが、そのお金が医療法人にあるわけではありません。医院や病院の建物の内装設備や医療機器に投資しているのですから、換金できる余地などありません。そのため、持ち分の定めのある医療法人の社員は、生前に長男に贈与するか、譲渡しておく必要があるのです。もしくは、一般社団法人を設立して、そこに売却するという方法もあり得ます。

もっと具体的な方法と、実行した場合の税金については、次で解説していきます。

 

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