医療法人が解散すると、残った財産は国のものになる

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2012/04/03
医療法人が解散すると、残った財産は国のものになる

「医療法人は、儲かるために経営しているわけではない」という理念のもと、配当が禁止されてきました。

一方、院長に対する報酬はいくらでも出せましたが、役員報酬を医療法人の利益に連動して支払うと、税務上、変動した部分が、経費になりません。

例えば、医療法人の決算日が近づいてきて、今年は、儲かってきたと分かった9月に、院長の役員報酬を上げると、その上げた部分は、役員賞与とみなされて、すべて経費になりません。

上の図で言えば、赤い斜線部分です。

経費にならないのに、その役員賞与に対応する部分の所得税は納めます。つまり、法人税と所得税の二重課税になるのです。

これは、医療法人が今年は、儲かっていないから、院長の役員報酬を下げた場合でも、それまで多く支払ってきた部分が経費にならないのです。税務上では、利益を調整するように、役員報酬を変動させてはいけないのです。そのため、どうしても、医療法人には、利益が発生します。

普通は、その利益が貯まると、株主に配当して吐き出すのですが、それが禁止されている医療法人にはお金が貯まり、出資持分の評価はかなり高くなってしまいます。

これが、相続の時には、相続税を高くしてしまい、事業承継ができない理由の1つにもなっていました。

医療法人の持分を相続しても、そこから、配当をもらえるわけでもなく、第三者に売却できる市場もないので、相続人は相続税を延納するか、相続税を銀行から借りてきて納めていました。

延納には利子税、借金には金利が発生します。利子税も、金利も、事象承継した子供の経費にもなりません。

そこで、医療法人を解散すれば、出資持分の比率に相当する部分がお金で返還されます。

もちろん、医療法人を解散するとなると、社員の雇用の問題、銀行やリース会社のとの契約の問題など、単純ではありません。

それでも、資産を売却して、借金を返済し、残った財産を出資持分の比率に応じて、お金を返還してもらえれば、配当されたことと同じです。(このとき、出資持分を超えたお金は、配当とみなされて、所得税がかかります)

この配当があれば、相続税を支払うことができます。

でも、「医療法人は、儲かるために経営しているわけではない」という理念は、どうなってしまったのでしょうか?

これが許されるのであれば、最初から、配当を禁止する必要がありません。それどころか、配当を受け取るために、無闇に医療法人を解散させる院長もいました。医療法人の経営の安定化という観点からも、良くない行為です。

これらのことを踏まえて、平成19年4月1日に、医療法人に関する新しい法律が施行されました。それにより、平成19年4月1日以降に設立申請された医療法人は、院長の出資持分がなくなりました。院長が、医療法人にいくら出資しても、議決権の比率がないということです。相続税もゼロ評価です。

そして、残余財産は、定款の定めにしたがって、下記の者から選定して分配されることになります。

【1】国

【2】地方公共団体

【3】医療法31条に定める公的医療機関の開設者

【4】郡市医師会又は都道府県医師会

【5】財団医療法人又は社団医療法人であって
持分の定めのないもの

これが、医療法人の原則的な取り扱いになり、拠出型医療法人と呼ばれます。

ただ、院長が最初に出したお金まで、国や地方公共団体に帰属してしまうとすれば、例えば、医療法人を設立する時に、自分の所有する土地や建物を現物出資することを躊躇することになります。

医療法人で使うべき土地や建物は、医療法人の名義にした方が、税務上のメリットもありますし、銀行からの融資も受けやすくなります。

そこで、基金制度というものが作られていて、最初に院長が出したお金だけは、返還されるという取り決めを定款に記載することができるようになっています。

もちろん、院長だけではなく、最初に出資した人に、そのお金を戻すことができます。

この場合でも、最後に、院長が出したお金を超えて、配当を受けることはできません。それは、院長の相続人でも同じことです。

そして、基金は返還されるので、相続税では、最初に出したお金を、医療法人に貸し付けているという仮定のもと、評価されます。債権と同じということです。

さらに、財団法人としての医療法人もありますが、設立することは少ないので、ここでの説明は省きます。

では、平成19年3月31日までに設立された医療法人は、どうなるかということです。これは、持分の定めがある医療法人です。

とすれば、この持分の定めのある医療法人は、今後、どのような取り扱いになるのでしょうか?

現在、「持分の定めをなくすこと」は、経過措置の間はないとされています。

今まで、自分の持分だったものを、勝手に国や地方公共団体に強制的に寄付させることはできません。そのため、経過措置の期間は決まっていません。

つまり、半永久的に、持分の定めがあるままとなると予想しています。

もちろん、持分の定めがない医療法人に移行することもできます。相続税の問題や事業承継者がいない場合には、有効です。ただ、その場合、出資者側と医療法人側の税務については、気をつけてください。

【1】出資者側の税金

出資者が院長個人の場合には、何の税金も発生しません。現在は、医療法人の基金に株式会社も出資することができます。

その場合、持分の定めがない医療法人に移行すると、その持分は寄付されたものとみなされ、寄付金の損金不算入の計算対象になるため、注意が必要です。

【2】医療法人側の税金

医療法人側に法人税がかかることはありません。ただし、院長が出資を放棄することで、相続税を不当に減少させたと認められた場合には、医療法人に対して贈与税がかかることになります。

では、相続税を不当に減少させた場合とは、どんな場合なのでしょうか?そして、これを回避することはできるのでしょうか?

相続税法では、4つの要件を満たせば、不当に減少させたとみなさないと明記しています。

(1)医院経営と病院経営

医療法人の役員のうち、3分の1以下が院長及びその親族等で、それ以外は親族でない人で占められていることが必要です。

(2)特別の利益供与

医療法人に出資持分を贈与した院長及びその親族等に対して、医療法人から貸付を行なったり、資産を低額で譲渡するなど、特別に利益を与えてはいけません。

医療法人の資産を不当に誰かにあげることは、医療法上も好ましくありません。

(3)残余財産

医療法人が解散した場合に、その残余財産は国、または地方公共団体等に帰属させなければいけません。ただ、これは、持分の定めのない医療法人になれば、当然のことです。

(4)法令違反

医療法人が法令違反する事実、その帳簿書類の隠蔽、または仮装していないことです。そもそも、このようなことをすれば、医療法人として脱税、又は銀行に対しての詐欺行為になるので、やるはずがありません。

ということは、問題は、(1)の要件になると思われます。

大きな医院や病院でなければ、医療法人の役員が、院長、またはその親族等以外で、3分の2を占めることは難しいでしょう。

そのため、小さな医療法人は、持分を放棄せず、現状維持として、医師や看護師の数が増えて、医療法人の組織が大きくなったときに、持分を放棄することになるのではないでしょうか。

相続税が高いからと言って、無闇に、持分を放棄しないよう気をつけてください。あとで、高い贈与税を支払うことになってしまいます。

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