医療法人が実際に行える事業の範囲は、どこまでなのか?

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2015/12/10
医療法人が実際に行える事業の範囲は、どこまでなのか?

医療法人が実際に行える事業の範囲は、どこまでなのか? 医療法人が開設できる施設は、原則として、医療法で決められた病院、診療所、又は介護老人保健施設の3つになります。

ただ、業務に支障がない範囲であれば、定款又は寄付行為を変更することで、他の医療に関係する業務を経営することができます。

もちろん、医療法人は公益性が高い社団法人と考えられているため、勝手に新しい業務を行うことは、問題となります。
そこで、この定款や寄付行為の変更には、都道府県の窓口に、2年分の新規事業計画書を提出して、都道府県知事の許可を取る必要があります。

 

項目

社員総会による定款変更決議の内容

許可申請の窓口

各都道府県
(例えば、東京都であれば、福祉保健局医療政策部医療安全課が、窓口)

許可申請に必要となる書類

(1)定款変更許可申請

(2)定款の新旧条文対照表

(3)新定款(修正を指摘されることもある)

(4)定款変更を決議した社員総会の写し(要原本証明)

(5)開設する有料老人ホームの従業員定員、敷地及び建物の構造設備の概要を記載した書面及び建物平面図

(6)定款変更後2年間の事業計画及びこれに伴う予算書

(7)医療法人の運営状況を明らかにした書類

(8)不動産を賃借して事業を行う場合には、賃貸借契約書及び、不動産の登記簿謄

標準処理期間

平均6週間程度
(各都道府県でも少しずつ違うため、事前に窓口で、相談することが望ましい)

現在、医療法人は診療行為だけで、医業収益(売上)を十分に上げることは難しくなってきています。

他の医療に関する業務に参入することで、新たな医業収益を上げるチャンスを掴むべきです。
ぜひ、あなたの医療法人にも検討して欲しいと思うのですが、やれないこともありますので、その範囲を知っておきましょう。

 

(1)附帯業務の範囲

医業に附随する業務のうち、一定の要件を満たすものは、附帯業務と呼ばれます。
医療法42条に規定される附帯業務は、下記のものになります。

 

業務内容

具体的な事例

医療法人などで働く人の養成又は再教育

看護専門学校、リハビリステーション専門学校 (医学生を大学で学ばせることは、業務範囲外)

医学又は歯学に関する研究

臨床医学研究所、再生医療研究所

疾病予防のために有酸素運動を行わせる施設

メディカルフィットネス(ただし、厚生労働省の施設要件を満たす必要がある)

疾病予防のために温泉を利用させる施設

クアハウス(ただし、厚生労働省の施設要件を満たす必要がある)
(公衆浴場は、業務範囲外)

衛生に関する事業

薬局、施設所、衛生検査所 (クリーニング所、美容院、床屋は業務範囲外)

社会福祉に関する事業

難病患者等居宅生活支援事業、乳幼児健康支援一時預かり事業

社会福祉に関する事業

難病患者等居宅生活支援事業、乳幼児健康支援一時預かり事業

介護に関する事業

有料で、患者を送迎する事業

介護に関する事業

(2)で詳細に解説する

上記の中で、「患者の移送に関する事業」ができることを、初めて知った院長先生もいるかもしれません。
現在、高齢者の患者の中には、自分の車も持っておらず、公共交通機関を使うために、バス停や駅まで歩くことも難しい方が多数います。

そのため、医療法人が指定訪問介護事業者に該当している場合に、要介護者の通所、通院等のための送迎を有料で、行うことができることになっているのです。

このとき、有料であれば、タクシー事業者と同じであり、道路運送法の旅客自動車運送事業に該当するため、医療法人として、「一般旅客自動車運送事業、又は特定旅客自動車運送事業」の許可を取得しなければいけません。

もし無料であれば、あくまで医療法人の附帯業務という意味しかなく、道路運送法の旅客自動車運送事業には該当しないため、許可は必要ありません。

ただ、医療法人としては、送り迎えの車やバス、その運転手、それに事故を起こした場合の損害保険料などを負担しているので、無料では利益を圧迫させることにしかなりません。
であれば、院長先生が車で、訪問診療として患者の自宅を回った方が、医療法人の医業収益も、利益も上がるでしょう。

 

(2)介護事業について

附帯業務の中で、最も注目されているのは、介護事業です。
これからは、医院や病院の病床は厚生労働省の方針で、減らされていきます。

一方で、団塊の世代が70歳を迎えて、その受け皿がないと困ります。
この受け皿になるのが、介護事業の施設なのです。
附帯業務の中で、絶対的に、これから伸びる業務です。

伸びない事業、例えば、先ほどの入院施設は、手術をする患者の数が増えてたとしても、滞在する時間(入院日数)を減らさなければいけません。
そのため、患者をかなり早く回転させることになるのです。

でも、それほど多くの患者がいるわけでもなく、みんなで、取り合いになるのです。
同じようにシェアを獲得するために競争していたのでは、医院経営も病院経営も苦しくなる一方です。

シェアを奪い合う業界では、2割が勝ち組となり、8割が負け組となる結末を迎えるのです。

一方、全体の市場が伸びている業界であれば、参入した医院や病院のほとんどが儲かるということもあり得るのです。

少なくとも、8割が負け組になることはありません。
今や平成19年の医療法の改正によって、医療法人は、ほとんどの介護事業に参入できます。
代表的なものが、下記の6つです。

介護事業の種類

サービス付き高齢者住宅と有料老人ホームは、初期投資額が同じように感じるかもしれません。
ただ、サービス付き高齢者住宅は、助成金があったり、固定資産税が安くなったりと、特典があるのです。その代り、一定の要件を満たす必要があります。

有料老人ホームは、一番自由に作ることができるのですが、ほぼアパート経営と同じであるため、魅力的なものを造らないと、入居者が集まりません。
特に、高齢者になると、引っ越すという意思決定には、かなりの時間を要します。
一度、入居してもらえれば、逆に引っ越されるリスクも減るのですが、空室が埋まるまでの資金繰りには気を付ける必要があります。

なお、注意すべきことは、医療法人を設立して、医院経営や病院経営を行わず、介護事業だけを行うことは認められていません。
そのため、あくまで、附帯事業であることを覚えておいてください。

 

今までは、19床以下の診療所の多くが、ベッドを返還して、無床のクリニックになってきました。
これからは、20床以上の病院でも、診療報酬の改訂で医業収益が激減したり、衛生上の管理を強化されたり、個人情報の管理を徹底させるために、増え続ける経費に耐えられず、ベッドを返還していくと予想されます。

とすると、その病棟部分は、空室になっていきます。

病棟が古ければ建て替えたり、そこまでやらなくても、修繕によって、介護事業に転用することは十分に考えられるのです。

だからこそ、今のうちに、競合する医療法人よりも早く、介護事業に参入することで、有利に展開させなくてはいけないと思うのです。

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