医療法人が、建物を所有している場合には、地代を支払うべき?

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2016/03/30
医療法人が、建物を所有している場合には、地代を支払うべき?

医療法人が、建物を所有している場合には、地代を支払うべき?

院長先生が、個人事業主のときに、建物と土地を所有していたとします。そこから、医療法人に法人成りしたときに、すぐに建物と土地を売却してはいけませんでした。
現物出資でも、売却したことと同じです。
土地は売却益が発生し、建物は消費税がかかってしまう可能性が高いからです。建物と土地を、祖父が所有していても、同じでした。

 

まず、土地ですが、「支払う所得税<節税できる相続税」であれば、売却益が発生しても、医療法人に移転させるという選択肢はありました。

 

ただ、先祖代々の土地で、その時価が1億円とすれば、2000万円の所得税が発生します。
そもそも、それが支払えなければ、医療法人に移せません。

 

一方、建物は、院長先生個人が課税事業者から外れる、2年後に売却すれば、問題ありませんでした。

 

このとき、建物を医療法人の所有にすると、消費税以外で、何かメリットがあるのでしょうか?

 

基本的に、医院経営や病院経営で儲かったお金は、医療法人に貯めるべきです。
「所得税>法人税」となるため、医療法人の方が、無駄な税金を支払わないからです。そのお金で、建物を修繕したり、病棟を増やせれば、患者のためにもなります。銀行からお金を借りて、それらを行っていたとしても、医療法人で返済した方が、資金効率は良くなります。

院長先生が個人でやるならば、高い所得税ばかり支払って、医院や病院のために使えないのであれば、意味がありません。

ということで、建物は医療法人の所有とすべきですが、実は、土地を医療法人に移せないとすると、祖父や院長先生から、借地権が医療法人に贈与されたとみなされてしまうのです。この借地権の割合ですが、30%から90%の範囲で、国税庁のホームページの路線価図で、全国のどの地域でも確認できます。

地主は、底地の権利を持っていて、「1-借地権の割合」と計算されます。

一般的には、住宅地は60%ですが、都心部になってくると、90%という地域もあります。
90%ということは、土地を所有している人の権利は小さく、土地を利用している人が、土地の価値のほとんどを使っていることになります。このように、利用価値がある土地ほど、借地権割合は高くなります。

医療法人が、建物を所有している場合には、地代を支払うべき?

医院や病院が開業している場所は、都心部もありますが、郊外の駅前も多いはずです。
住宅地でなければ、70%程度の借地権の割合になるでしょう。
それでも、土地の価値が1億円とすると、7000万円が医療法人に贈与されたとして利益になります。

法人税の税率が30%とすると、2100万円の法人税を支払うことになります。

1億円の土地を売却した場合に発生する所得税よりも、高くなってしまいます。

では、借地権を贈与とみなされない方法はないのでしょうか?

 

(1)相当の地代を支払う

借地権が贈与されたとみなされるのは、医療法人からの権利金の支払いがないからです。
土地の利用価値のほとんどを、その建物の所有者である医療法人が占有するのに、何の支払い行わないからです。
ただ、だからと言って、権利金を医療法人から、院長先生に支払うこともできません。なぜかと言えば、支払った瞬間に、院長先生の個人の売上となり、高い所得税がかかってしまうからです。

1年間の給料と合算されてしまうので、所得税率が最高税率に近くなってしまうと予想されます。
院長先生が受け取った地代に対する経費としては、固定資産税ぐらいしかありません。

では、他の方法はないのでしょうか?

 

実は、建物を所有する医療法人が、底地の所有者である院長先生に、権利金を支払う代わりに、毎年、高い地代を支払えば、借地権の贈与はなかったものとみなされます。

 

高い地代とは、「過去3年間の土地の時価の平均×6%」と決まっています。これを相当の地代と呼びます。全国での平均の地代を見ると、時価の2.3%という統計データがありますので、約3倍となります。

例えば、土地の時価が1億円とすると、全国平均では、1年間で230万円の地代を支払っているということです。それよりずっと高い、600万円の地代を、医療法人が院長先生に支払えば、問題ないということなのです。

先ほどの権利金に比べると、そこまで、院長先生の所得が上がるわけではありません。
また、相当の地代を支払うことで、もう一つメリットがあります。

 

それは、院長先生が亡くなったとき、土地の評価が、路線価の80%となるのです。

 

高い地代を支払っているので、借地権の評価をゼロとしてくれるということです。

 

(2)無償返還の届出書を提出する

医療法人が、相当の地代を支払えば、借地権はゼロとなりますが、どうしても、院長先生の所得は上がってしまいます。また、過去3年間の土地の時価の平均をもとに計算するため、土地の価値が上がっていくと、相当の地代も引き上げなくてはいけません。

では、相当の地代を支払う以外の方法はないのでしょうか?

医療法人が、税務署に、「無償返還の届出書」を提出するという方法があります。

 

無償返還の届出書とは、医療法人が最後に建物を取り壊したら、無償で院長に借地権を返還しますという宣言です。

 

これによって、医療法人が借地権の権利を主張しないということなのです。
このとき、「無償返還の届出書」には、医療法人が固定資産税の3倍程度の地代を支払い、賃借権を発生させる方法と、まったく地代を支払わず、つまり無償(使用貸借という)とする方法のどちらかを、選択できます。

基本的には、賃借権を発生させる方を選択すべきです。

理由は、使用貸借で無償とした場合、借地権がまったく発生しません。そのため、地主である院長先生が亡くなったときには、土地は更地で評価されてしまうのです。

 

一方、賃借権を発生させておけば、土地は相当の地代を支払ったときと同様に、80%で評価してくれるのです。

 

つまり、それだけ、相続税対策になるということです。

それならば、相当の地代を支払わず、「無償返還の届出書」を提出した方が、院長先生の所得税が高くならず、得だと考えるでしょう。

ところが、1つだけ、相当の地代よりもデメリットがあります。それは、医療法人が相当の地代を支払っている場合には、借地権の評価はゼロとなると、先ほど解説しました。

一方、「無償返還の届出書」を提出して、賃借権を発生させている場合には、医療法人の持分を評価するときに、土地の時価の20%分を借地権として加味するのです。

法人税では借地権が贈与されたとみなさないのですが、相続税を計算するときだけ、相当の地代との関係から、このような取扱いになっているのです。

ところが、よく考えてみますと、持分の定めのない医療法人であれば、そもそも、持分の評価を行いません。

 

つまり、持分の定めのない医療法人であれば、「無償返還の届出書」を提出して、賃借権を設定するのが、最もよいことになります。

 

もし、持分の定めのある医療法人で、事前に、その持分を評価したときに、かなり相続税が高くなってしまうという場合には、相当の地代を支払うという選択肢もあると考えます。

 

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