医療法人の理事長は、医師や歯科医でなくても、なれるのか?

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2016/07/20
医療法人の理事長は、医師や歯科医でなくても、なれるのか?

医療法人の理事長は、医師や歯科医でなくても、なれるのか?

先日、医療法人の理事から、下記のような相談を受けました。
「父親が亡くなり、譲り受けた内科の医院の事務長を20年以上やってきました。ただ、自分自身は医師の免許はなく、父親を手伝ってきた勤務医師2人と話し合い医療法人を設立したのです。」
私は、「なぜ、医療法人にしたのか?」と聞きました。

(1) 所得税よりも、法人税の方が安い

勤務医師が個人事業主として開業した場合、事務長はそこから給料をもらうことになります。今までは父親でしたが、勤務医の先生が、開業医に変わるのです。ところが、この勤務医の先生は、どこからか、法人税の方が得だという話を聞いてきて、「自分が高い所得税を支払うのは嫌だ」と言い出したのです。

残りの2人も、節税なるならばよいと、賛成しました。

(2) 借金や医療機器のリースについて

事務長が、父親から銀行の借金や医療機器のリースの負債を引き継ぎました。ところが、銀行からは、やはり勤務医の先生にも連帯保証人になって欲しいと要求されたのです。断わってもよかったのですが、これからも追加で融資をお願いすることもあるかもしれません。借金の残債も5000万円と高くなかったので、承諾したのですが、そのときに、銀行から医療法人の設立を提案されたのです。
個人事業主よりも、医療法人の方が、銀行としても、返済期間を長くできるという話でした。

3人とも、返済期間が長ければ、資金的な余裕もできるということで、賛成したのです。

(3) 看護師や社員の就業規則について

父親の時代は、看護師や社員とは口頭での約束で、給料や有給休暇を与えていました。退職金についても、父親の一存で、金額も決めていたのです。看護師や社員も、父親とは長い付き合いだったので、トラブルはありませんでした。
ただ、これからのトラブルを防止するために、3人で話し合い、ここで雇用契約書や就業規則を整備することになったのです。それで、事務長と雇用契約を締結してもらい、勤務医が開業した医院や病院に人を派遣するという方法を採用しようとしました。ところが、派遣法も改正されて、その方法は難しくなったのです。

そこで、医療法人を設立すれば、スムーズに雇用契約を締結できると考えたのです。

 

以上のことから、3人とも医療法人を設立することで、合意しました。
最初は、理事長として事務長、2人の勤務医を理事とする医療法人を設立しようと、都道府県に申請を出しました。
ところが、衛生局の担当者から、医療法人の理事長は、医師、または歯科医師でなければいけないと告げられたのです。そこで、勤務医の1人の先生を理事長として、事務長は理事になったのです。

事務長は、ここからため息をつきながら、話します。
「最初はよかったのですが、1年も経つと、3人の意見がバラバラになって、今では、険悪な雰囲気なのです。特に、理事長に就任した勤務医が、追加の融資の連帯保証になったことで、精神的にきつくなったのか、看護師や社員を怒鳴ったりするのです。今から医療法人を解散することもできないし、困りました」

医療法人では、理事のうち1人が、理事長として選任されて、代表して業務を統括しなければいけません。理事会の権限という意味では、理事長も、他の理事と同じです。
このとき、理事長になれない人が、下記のように決められています。

医療法人の理事長は、医師や歯科医でなくても、なれるのか?

さらに、医療法では、理事長は「医師、または歯科医師である理事の中から選任する」と決められています。ただ、都道府県知事の認可を受ければ、医師、または歯科医師でない理事を、理事長とすることもできるのです。
その場合の条件は、下記のように決まっています。

医療法人の理事長は、医師や歯科医でなくても、なれるのか?

理事長とは、対外的にも、組織の内部的にも、医療法人を代表して、引っ張っていく力がある人でなければいけません。

 

そのため、理事長となる人物は、単なる医学の知識だけではなく、経営や人事にも精通していることが必要なのです。

 

医師や歯科医師でなくても、経営能力があり、医療に関しても知識があれば、別に医師や歯科医師でなくても構いません。そのため、父親の医院で20年以上も、事務長として経験があることを衛生局に相談していれば、理事長として認めてもらった可能性は高いと考えます。

そこで、私が、「今からでも遅くないので、衛生局に相談した方がよいですよ。理事長を交代できるはずです」と助言しました。

ところが、事務長(理事)からは、
「現在の理事長が、そもそも、理事長の座を降りるのか、疑問になっているのです」
と力なく答えました。
もう1人の理事と話し合い、理事長を引き降ろすこともできます。強硬策を取れば、喧嘩になることは見えていて、一緒にやっていくこと自体が難しくなります。それだけではなく、働く看護師や社員も巻き込み、患者にも迷惑がかかるかもしれません。しかも、理事長が銀行からの連帯保証人になっていることが、問題を複雑化しています。
つまり、その理事長が辞めて、医療法人を退社しても、連帯保証を抜くことができません。
銀行と交渉することもできますが、その行動を起こすことが、すでに今の理事長を交代して、医療法人を辞めてもらうことが前提になってしまうのです。
本人からは、医療法人を辞めるどころか、理事長を交代する承諾すら、取れていません。
今は、冷静な話し合いしか、解決方法はないのですが、時間と労力がかかり、そもそも、医療法人にすべきだったのかと疑問が沸いてきます。

医療法人に成ることで、多くのメリットがあります。

 

ただ、そのメリットだけにとらわれずに、医療法人になったあと、どのような運営をしていくのか、誰が理事や理事長となり、運営していくのかを事前によく話し合って決めてください。

 

都道府県の担当者も、最初は一般的なことしか言わないのですが、突っ込んで相談すると、いろいろと、親身になって教えてくれるものです。
今回は、第三者の3人でトラブルになったケースですが、親族だけが理事会を占める医療法人でも、兄と三男が医師、次男が事務長という立場でトラブルに発展しているケースもあります。
特に、親族の場合には、感情が入るため、お金だけでの話ではなく、こじれると大変です。
くれぐれも、注意が必要です。

 

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