保険診療において、「療養の範囲」を知っていますか?

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2015/11/30
保険診療において、「療養の範囲」を知っていますか?

保険診療において、「療養の範囲」を知っていますか?

自由診療と保険診療には、決定的な違いがあります。
自由診療は、医療法に基づいて、診療の方針は、院長先生の裁量権で決定できます。

一方、保険診療は、健康保険法に基づいて、診療の方針は、療養担当規則に沿って、診療を行わなければいけないのです。

保険診療において、「療養の範囲」を知っていますか?

ということで、保険診療は、療養担当規則(正式には、「保険医療機関及び保険医療養担当規則」)を守る必要があるのです。

この規則の名前が、「保険機関及び保険医」となっているように、医院や病院が組織として守るべきこと、院長先生が保険医として守るべきこと、2つのことが記載されています。

この療養担当規則の内容を知らずに、違反すると、保険医療機関の許可が取り消されたり、院長先生自身が処分されることさえあります。
そのため、この規則については、院長先生は当然のこと、医院経営や病院経営に携わる看護師や社員もすべて、知っておくべきです。

療養担当規則が決めていることを、ここでは、一覧にしますが、必ず、院長先生が確認して、一度は看護師や社員に説明を行ってください。

  • 1.療養の範囲(保険診療で行うべき内容を定めたもので、保険診療の範囲が記載)
  • 2.院内掲示をすること(食事療養費、保険外併用療養費、手術件数など)
  • 3.保険証を確認すること(健康保険、介護保険など)
  • 4.一部負担金を患者から受け取ること(3割負担、1割負担など)
  • 5.入院患者に食事を提供すること
  • 6.特別な費用(選定療養費)を徴収する場合の届出
  • 7.コルセットなどの必要性を証明する保険医の証明書を交付
  • 8.診療の記録を記載したら、5年間は保存し、その他の書類の記録は3年間保存すること
  • 9.許可病床数の範囲で入院患者を受け入れ、寝具類を具備し、必要な注意、指導を行うこと
  • 10.必要な看護師の確保(7対1、10対1など)と付き添い看護の禁止
  • 11.定期的な地方厚生局長への報告
  • 12.保険医の診療方針(施術の同意、処方箋の交付など)

この療養担当規則の概要を見ると、当たり前のことしか記載されていないように感じるでしょう。
だから、医院や病院で働く看護師や社員に、「療養担当規則を知っていますか?」と聞くと、意外と「知らない」と答える人が多いのです。

日本で暮らすのに、民法や刑法をよく知らないと、生活できない訳ではありません。
当たり前のことは、知らなくても困らないのです。

同じように、日常で普通に医院経営や病院経営を行い、患者を診療していたら、何の問題も発生しません。
ただ、日常生活でも、民法や刑法に抵触するような問題を起こせば、損賠賠償請求されることもあります。

だからこそ、医院経営や病院経営に携わっている人は、療養担当規則で禁止されていることを、概要でもよいので知っておくべきです。

1.無診察診療の禁止

院長先生が、診察をせずに治療を行ってはいけません。
よくある事例では、再診の患者が、薬だけをもらいに来たので、受付で、処方箋を出してしまうことです。
必ず、院長先生が、事前に診察をしなければいけません。

 

2.特殊診療と混合診療の禁止

保険診療では、学会などで発表され、治療に一定の効果が認められたとしても、みどり本の点数表にある治療法(厚生労働大臣指定している)以外は、特殊診療として認めていません。

そして、この保険診療を、1日の診察で、自由診療と併せて行うこともできません。
(1日ではなく、午前と午後で分けれるという意見もあるが、通常は保険診療と自由診療の日は変えるべき)

そのため、健康診断や予防注射、妊婦健診も治療ではないため、自由診療となり、保険診療と同時に行うことはできません。

 

3.研究的診療の禁止

大学病院などの研究として新薬の試験や、検査データの収集のためだけに患者を検査するなど、研究の負担を、保険診療で行うことはできません。

 

4.保険薬局に関する禁止

院長先生が作った処方箋をもとに、院外薬局で調剤する医院や病院が多くあります。
そのとき、患者に対して発行する処方箋の様式と記載事項は決められていて、どの保険薬局でも分かるようになっています。

そのため、院長先生から患者に対して、特定の保険薬局を指定したり、そこからキックバックとして、金品や財産上の利益をもらうことは、禁止されています。
飲食による接待でも、頻繁に行っていれば、利益をもらっているとみなされます。

厚生労働省は、お薬手帳を持ってもらい、1人の患者が1つの薬局を集中して使うことを推薦しています。1つの薬局で、その患者の薬を管理できれば、重複の排除や併用して飲んではいけない薬のチェックができるからです。

 

5.金品の提供の禁止

医院や病院に患者を紹介してくれた事業者に対して、保険医療機関が金品や経済上の利益を渡してはいけません。

 

6.付き添い看護の禁止

入院患者に対して、患者の負担により、その医院や病院の看護師や社員以外の者による看護を受けさせてはいけません。
患者の家族の看護については、子供は、母親などが精神的な支えになったり、病状が改善したり、終末期で家族が精神的な看護を行う場合などは許されますが、それ以外で看護することは許されません。

 

ここまでは、療養担当規則で禁止されていることでしたが、「保険証の確認」は、医院や病院がやるべきこととして、非常に大切です。
あくまで、保険診療では、患者が保険証を持つ資格がないと、医院や病院が支払基金に請求することができません。

患者が会社を退職していたり、転職して保険証の内容が変わっていたり、有効期限が切れていると、医院や病院にとっては大きな損失となります。
1割負担の患者であれば、9割の保険診療が請求できないことになり、完全に赤字の診療になってしまいます。

保険証の確認は、受付で行うのは当然ですが、病棟があり入院患者がいる場合には、そこでも再度、確認して二重チェックを行いましょう。

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