カルテは、何年、保存する義務があるのか?

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医療関連のコンサルティング
2015/11/20
カルテは、何年、保存する義務があるのか?

カルテは、何年、保存する義務があるのか?

院長先生から、
「受付の後ろにあるカルテの棚だけど、かなり量が増えたので、一部は廃棄していきたいんだけど、うちは何年間、保存する義務があるのかな?」
と聞かれることがあります。

答えは、カルテは、5年間の保存が義務付けられています。

ただし、医院や病院での診療が終了した日から、5年間となります。
そのため、診療が継続している患者は、5年間以上、保存しなければいけません。

診療の記録としては、カルテ以外にも、エックス線フィルムや照射録、処方せん、透析記録などもありますが、こちらは、3年間の保存と決められています。
また、看護記録、病棟日誌や検温表など、看護関係の記録も3年間の保管が義務となっています。
ただ、カルテと同様に、診療が継続していれば、ずっと保存の義務が続きます。

医院や病院は、診療だけではなく、医薬品などを使用した場合にも、下記の記録を保存しておく義務があります。

  • (1)医薬品などの譲受人の氏名、住所その他の厚生労働省令で定める事項
  • (2)販売業者・賃貸業者は、販売等の記録を提供
  • (3)医師その他の医療関係者は、「特定生物由来製品」を使用した患者等の氏名、住所等

では、この使用記録は、何年間の保存が義務付けられているのでしょうか?

ヒトその他生物を原料にして、製造した医薬品や医療機器などを生物由来製品と呼びますが、そのうち、血液製剤(輸血用血液製剤など)の使用記録は、有効期間+10年間、特定生物由来製品の使用記録は、20年間の保存が必要となります。

特定生物由来製品とは、人赤血球濃厚液、新鮮凍結人血奬、人免疫グロブリン、人血清アルブミン、乾燥濃縮人血液凝固第Ⅷ因子、人血小板濃厚液などのことです。

 

これほど保存期間が長い理由としては、感染症などが発生した場合に、感染拡大防止のための安全対策を作ったり、原因究明するために必要だからです。

なお、製造業者や提供者は、特定生物由来製品は30年間の保存、人血液成分以外の成分に関する記録は10年間の保存、人血液成分を含む場合の人血液成分に関する記録は30年間の保存が義務付けられていて、医院や病院よりも長くなっています。

 

ここまでは、医院や病院に特有の保存義務でしたが、医療法人となると、税法によって、取引記録などの保存義務が発生します。
税務調査が入ったときに、請求書や領収書がないと、経費として認められなくなります。
特に、消費税を納めている医療法人であれば、領収書の保存が必要です。

院長先生が立替えて、クレジットカードで支払い、その明細があればよいと考えて、領収書は捨ててしまう場合もあります。
クレジットカードの明細があっても、経費としては認められますが、消費税では不利な取扱いになるのです。

それと、労務関係の書類も、あとで、労基署などが検査に入ったときに、開示しなければいけません。
下記に、それぞれの書類の保存期間を一覧にしました。

経理・税務関係書類

書類名

起算日

保存期間

根拠

① 取引に関する帳簿
具体的には、仕訳帳、現金出納帳、固定資産台帳、売掛帳、買掛帳など。

② 決算に関して作成された書類
決算書や法人税の申告書は、繰越欠損金が10年繰り越せるので、基本的には10年間保存する。

③ 現金の収受、払出し、預貯金の預入れ・引出しに際して作成された取引証憑書類
具体的には、領収書、預金通帳、借用証、小切手・手形控、振込通知書などのこと。

④ 取引証憑書類
具体的には、請求書、注文請書、契約書、見積書、仕入伝票などのこと。

帳簿閉鎖日および書類作成日・受領日の属する事業年度終了の日の翌日から2か月を経過した日(当該事業年度分の申告書提出期限の翌日)

7年

法人税法
施行規則

59、67

電子取引の取引情報に係る電磁的記録
具体的には、取引に関して受領または交付する注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類に通常記載される事項の記録のこと。

電子帳簿保存法施行規則8

給与所得者の扶養控除等(異動)申告書、配偶者特別控除申告書、保険料控除申告書

法定申告期限

国税通則法70~73

給与所得者の住宅借入金等特別控除申告書

課税関係終了の日

源泉徴収簿(賃金台帳)

法定申告期限

課税仕入等の税額の控除に係る帳簿、請求書等(5年経過後は、帳簿または請求書等のいずれかを保存)

課税期間末の翌日から2か月を経過した日

消費税法30等

資産の譲渡等、課税仕入、課税貨物の保税地域からの引取りに関する帳簿

消費税法58等

労務・人事関係書類

書類名

起算日

保存期間

根拠

① 従業員の身元保証書

② 誓約書などの書類

作成日

5年

身元保証ニ関スル法律1、2

雇用保険の被保険者に関する書類
具体的には、雇用保険被保険者資格取得等確認通知書、同転勤届受理通知書、同資格喪失確認通知書などのこと。

完結の日(その適用事業所を退職等した日

4年

雇用保険法施行規則143

労働者名簿

死亡・退職・解雇の日

3年

労働基準法109、労働基

準法施行規則56

賃金台帳(国税通則法では7年保存を義務づけ)

最後の記入をした日

雇入れ・解雇・退職に関する書類

退職・死亡の日

災害補償に関する書類

災害補償の終わった日

賃金その他労働関係の重要書類
具体的には、労働時間を記録するタイムカード、残業命令書、残業報告書などのこと。

完結の日

企画業務型裁量労働制についての労使委員会の決議事項の記録

有効期間の満了後

労働基準法施行規則24の2の3、24の4

労使委員会議事録

開催日

労災保険に関する書類

完結の日

労働者災害補償保険法施行規則51

労働保険の徴収・納付等の関係書類

労働保険の保険料の徴収等に関する法律施行規則72

雇用保険に関する書類
具体的には、雇用保険被保険者関係届出事務等代理人選任・解任届などのこと。

2年

雇用保険法施行規則143

健康保険・厚生年金保険に関する書類
具体的には、被保険者資格取得確認および標準報酬決定通知書、標準報酬改定通知書などのこと。

健康保険法施行規則34

以上のように、医療法人が保存すべき書類は多岐に渡ります。

私が顧問先の医院や病院に行くと、経理と労務関係の書類が混じっていたり、山積みになっていて、すぐに探せなかったり、どの書類がどこにあるのか分からないことさえもあります。
長年、医院経営や病院経営を続けていると、担当していた看護師や社員が、自分流で保管していて、上手に引き継がれていないという理由もあります。

あとを引き継いだ人は、その時点からはちゃんと保管しても、前の資料までは知らない、責任がないと感じていることも原因です。
書類がなくなれば、もっとも困るのは院長先生だということを肝に銘じて、保管方法を徹底して守らせるようにしましょう。

上手なファイリングというセミナーもあるので、一度は出席して見ても良いかもしれません。

まずは、書類の保管方法を文書化して、
誰でも同じように保管できる体制を作ってください。

 

最近では、書類をPDFなどの電子保存する医院や病院も増えてきています。
もちろん、忙しい仕事の合間に、書類をPDFにスキャンするのは、大変です。
それでも、ちょっとでもやり始めないと、進まずに、いつかは置き場所が足りなくなり、パンクします。

これらの保存期間は長くなり、マイナンバーが導入されると、書類も増える傾向にあります。
今から少しずつでもよいので、進めていきましょう。

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