医療法人をM&Aで売却したときに、理事長は、いつの時点で変わるべきか?

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2013/03/19
医療法人をM&Aで売却したときに、理事長は、いつの時点で変わるべきか?

医療法人をM&Aで売却したときに、理事長は、いつの時点で変わるべきか?原則として、医療法人の理事長は、常勤の医師又は歯科医師の中から選ばれます。

医師や歯科医師ではない人が、理事長になり、医学的な知識がなく、倫理的な意識も低いままで、医院経営や病院経営を行うことは、大きな問題に発展すると考えられるからです。

そして医療法人は、3人以上の常勤の医師又は歯科医師が必要でしたが、現在では、一人医療法人も認められています。
というよりも、現実は一人医療法人が全体の80%以上を占めています。

また理事長は、理事会で選任された医療法人を代表する者であり、
役員として登記簿謄本に登記されます。

このとき、理事長の名前だけではなく、住所も登記簿謄本に表記されることになります。
そして、全国の誰でも、法務局に行って、この登記簿謄本を閲覧することができるのです。

あなたが理事長であり、自分の医療法人を売却しようとしたとき、

  • 【1】 これから開業する医師や歯科医師に売却する
  • 【2】 すでに個人医院を開業している医師や歯科医師に売却する
  • 【3】 医療法人に売却する

という3つの選択肢があります。

まずは【1】の場合ですが、これは、まったく問題がありません。
買収した医師や歯科医師が、あなたの医療法人の理事長に就任すればよいからです。

次に【2】の場合ですが、買収した医師や歯科医師が理事長に就任するならば、現在の医院や病院を閉めることになります。

もしくは、私が行ったM&Aでは、買収側の医院は親子2代で運営していました。そして医療法人を買収したあとは、息子さんが医療法人の理事長になり、父親が現在の医院を分院として登記して、理事として診察を続けています。

これは理想の形ですが、実際には、医療法人に吸収する形で、医院や病院の場所を変えることが多いでしょう。
これでも医療法上は、何ら問題がありません。

最後に【3】の場合ですが、これが一番、もめることになります。
医療法人の理事長を、医師又は歯科医師が兼任できればよいのですが、その明文の規定がありません。

確かに、私は今まで、いくつかの医療法人で理事長が兼務しているケースを見たことがあります。しかし、医療法人を代表するものとして、理事長が常勤しなければいけないとして、兼務しないように指導している都道府県が多いようです。

そして、厚生労働省のホームページには、下記のように書かれています。

医療法人は複数の医療機関の開設が可能であるのに、理事長が更に他の医療法人の理事長として医業を行わなければならない必要は通常はないものと考えられます。
そのため、特別な理由や必然性がなければ、医療法人の代表者である理事長が他の医療法人の理事長を兼ねることは認められないものと考えます。

ここでの、特別な理由や必然性とは、例えば、すでに自分で医療法人を経営している医師である長男が、父親の死亡に伴って、理事長を兼務するなどの場合であると考えられます。
つまり、医院や病院のM&Aが、この特別な理由や必然性に該当するとは思えません。

とすれば、M&Aの買収側の医療法人から、あなたの医療法人へ新しい理事長を派遣する必要があります。

ただ、私は今まで、医師や歯科医師が余っている医療法人を見たことがありません。
「M&Aに備えて、常時、ちょっと多めに医師や歯科医師が働いているんですよ」と答えた理事長に会ったこともありません。現実的にありえないはずです。

どの医療法人も、常勤の医師や歯科医師が足りない状態なのです。

そもそも、常勤の医師や歯科医師が3人必要という医療法人の設立条件を満たせずに、ほとんどが一人医療法人だというのが現実なのです。

しかも、たまたま派遣できる医師や歯科医師がいたとしても、その人物が医師としての技術はすばらしかったとしても、理事長としての管理能力があるか分かりません。

M&Aで買収した医療法人の理事長がチェックするとはいえ、毎日、常勤で働く派遣された理事長が、間違った考え方を持っていたり、看護師との人間関係の構築が下手であれば、そのあとの医院経営や病院経営が上手くいくはずがありません。

では、そもそも医療法人の理事長は医師又は歯科医師しか就任できないかを考えてみましょう。
医師や歯科医師以外で、管理能力がある人でも理事長になれるのであれば、M&Aで買収した医療法人も人材に困ることはありません。

実は、都道府県知事が、医師又は歯科医師以外の者であっても、理事長への就任を認めるケースがあります。

【ケースその1】

理事長が亡くなり、又は重度の障害により、理事の職務を継続できないため、その子女が医科大学又は歯科大学在学中か、又は卒業後、臨床研修その他の研修を終えるまでの期間、医師又は歯科医師でない配偶者(妻など)等が理事に就任する場合

【ケースその2】

次に掲げるいずれかに該当する医療法人の理事長の場合

  • (1) 特定医療法人又は社会医療法人
  • (2) 地域医療支援病院を経営している医療法人
  • (3) 財団法人日本医療評価機構が行う病院機能評価による認定を受けた医療機関を経営している医療法人

【ケースその3】

候補者の経歴、理事会構成等を総合的に勘案して、適正かつ安定的な法人運営を損なうおそれがないと都道府県知事が認めた医療法人の理事長の場合

このうち、【2】の医療法人に該当するならば、公益性が高く理事長以外にも、親族以外の理事も在籍しているはずですし、そもそも医院のM&Aの対象になることがほとんどありません。【3】の要件で認められた事例も少ないはずで、私が実際に知っているのは1事例だけです。

ただ、【1】の要件だけは、私の経験からも認められた医療法人をいくつも見てきました。
実際には、子女が卒業してすぐに継承することは無理なので、配偶者が理事長になっている間に、M&Aで売却してしまうということも多くありました。

とにかく、これでは医療法人をM&Aで買収したという理由で、医師や歯科医師以外の人が理事長に就任するのは認められないことになります。

このように考えると、あなたが医療法人をM&Aで売却したあとも、かなりの期間、理事長に止まって働くことが必要になるのです。この期間を短くしようとすると、医院や病院のM&Aで売却価格を叩かれて、低くなる原因にもなります。

あなたが医療法人をM&Aで売却しようと思うならば、できるだけ早めに動くべきなのです。

2-3ヶ月もあれば、医療法人はM&Aで売却できると考えている方もいるようですが、絶対に無理です。

あなたがもし医療法人をM&Aで売却したあとに、すでにやることが決まっていて、時間の余裕がないならば、売却価格を下げることも検討すべきです。

早く動くことが、結果的に、医院や病院のM&Aでの売却価格を高くすることにつながるのです。

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