医院や病院を売却する側の税金を安くすることは、M&Aを成功させることにつながる。

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2012/12/18
医院や病院を売却する側の税金を安くすることは、M&Aを成功させることにつながる。

院長が医院や病院を売却するときには、4つの形態がありました。

  • 【1】個人事業主である院長が、医院を事業譲渡する。
  • 【2】院長は医療法人の社員(出資者)であり、その持分を譲渡する。
  • 【3】院長は医療法人の理事を退任して、買収した医師が理事として就任する。
  • 【4】医療法人は医療事業を譲渡したあと、院長が退任して解散する。

前回は【1】【2】を解説したので、今回は【3】からです。

《1》院長が医療法人を退任して、買収した医師が理事に就任する

現在、個人事業主で医院経営や病院経営している院長先生が、法人成りをしようとすると、持分の定めのない医療法人しか設立することができません。

この持分の定めのない医療法人は出資持分には相続税がかかりません。

つまり、相続人は相続税の心配をする必要がないのです。

その代り、持分の定めのない医療法人が解散すると、その財産は国や地方公共団体に帰属して、相続人のものにはなりません。でも実務的には、解散するときに理事長や理事に退職金を支払うため、医療法人に残る財産は多くないと予想されます。

もちろん、相続税がゼロであることとは別に、持分の定めのない医療法人であっても、事業承継されて地域医療が継続していくことが望ましいはずです。解散することを前提にするのはよくありません。

医療法人が所有していた医療機器や建物が、国や地方公共団体に移転したとしても、使い道がありません。それを使って医療行為を行う医療法人が存在し続ける方が、社会的にもよいはずです。

そして、この持分の定めのない医療法人を事業承継してくれる子供や親戚が見つからず、第三者に売却することになると、持分の定めのある医療法人とは手続きが変わってきます。
そもそも、出資持分の売却ということはできません。

そのため、現在の理事が退任して、退職金を受け取り、買った側の医師が理事に就任するという形で、「医院のM&A」を成立させます。退職金が医院のM&Aの対価ということです。

ただ、問題もあります。
それは、退職金の上限が、退職金規定で下記の数式で決まっているということです。

売却側の税金を安くするとM&Aの成功につながる

「うちの医療法人は、まったく別の数式だけど・・・・」
ということはあり得ません。

というのも、法人税法では、医療法人が退職金を支払う場合には、この数式で計算した金額を上限に経費にできると決めているからです。これを超えた金額であっても、医療法などの法律上は問題ありませんが、経費にならないので、多額の法人税がかかってしまいます。

それでは意味ないですよね。

なおここで、功績倍率とは医療法人ごとに決めるのですが、理事長であれば3.0倍、理事であれば2.0倍などが上限になります。それ以下で決めるのは自由です。

簡単に計算してみますが、院長先生が、理事長として30年間働き、最後の月額役員報酬が300万円だったとすれば、

売却側の税金を安くするとM&Aの成功につながる

が退職金の上限となります。あくまで上限なので、これ以下で支払うのは問題ありませんよ。

さらに奥さんが理事として働いていれば、同じ計算式を使って退職金を決めることができます。

医院のM&Aの対価として、これでは足りないという場合には、院長先生の引き継ぎ期間を延ばして、報酬で調整していくしかありません。

それで、持分の定めのある医療法人を売却するときには、出資持分の売却益に20%の所得税率をかけるだけでした。

この退職金は、

売却側の税金を安くするとM&Aの成功につながる

に対して所得税率がかかることになります。

医院のM&Aの対価として支払う退職金の金額にもよりますが、出資持分の売却益の20%とほぼ同じぐらいの税額になると予想されます。
一方、報酬で調整するとすれば、その分に関しては、所得税が安くならないため、税金のメリットはないことになります。

《2》医療法人が事業を譲渡したあと、院長が退任して解散する

この方法は、個人事業主の医院や病院のM&Aと同じで、医療事業を売却することになります。
医療法人から院長先生が退職金をもらい、最後は解散させます。
この方法は、余計に税金やコストがかかるデメリットがあります。

(1)売却益に医療法人に法人税がかかる

医療法人が所有していた土地に含み益があった場合、それに法人税がかかってしまいます。
同時に医療法人から院長先生に退職金を支払うことで経費を計上でければ問題ありません。

ただ、借入金の返済があれば、その元本の返済は経費になりません。それに社員寮などがあれば、売却金額が大きくなり、経費と通算できない部分も増えます。

(2)退職金に上限がある

経費として認められる退職金には、上限があります。

医療法人に残った財産は、持分の定めのある医療法人であれば、社員(だいたいが理事を兼任)に帰属するため、それは配当金とみなされて高い所得税がかかります。
持分の定めのない医療法人であれば、国や地方公共団体のものになってしまいます。

(3)登録免許税や手数料がかかる

医療法人が建物や土地を所有していて、それを譲渡すれば、買う側には登録免許税や不動産取得税がかかります。買う側が支払と言っても、これを加味して、医院のM&Aの対価が決まるはずです。

さらに事業譲渡したあとの医療法人を解散するとすれば、解散登記の登録免許税や官報公告のコスト、そして司法書士の手数料がかかるのです。
これらは、すべて無駄なコストと言えます。

あなたは、こんなにデメリットがあるならば、医療法人が事業譲渡をすることはあり得ないのでは?と思うかもしれません。

ところが現実には、意外とこの方法で、「医院のM&A」を実行している事例が多いのです。
理由は、売却側の医療法人が持つ「隠れ債務」が怖いという理由です。

 売却側の税金を安くするとM&Aの成功につながる 

ここで、医療法人の債務と言えば、製薬会社から薬を仕入れた時の買掛金、水道光熱費や通信費は翌月、もしくは翌々月に支払うため、それが未払金、銀行からの借入金が主なものです。

ところが、それ以外にも見えない債務があります。

MS法人の借入金を医療法人が連帯保証していることがあります。また、すでにリースしていた医療機器がないのに、リース債務だけ残っていることもあります。

ただ、この2つは、院長が認識できているので、まだよいのです。
それ以外の債務は院長自身も分からないことが多く、発見するのは難しいと言えます。

看護師やスタッフからの未払残業代の請求、患者からの訴訟、税務調査で追徴課税されるリスクなど、そのときになってみないと分かりません。
勤務医、看護師、スタッフ、会計事務所にヒアリングすることで、予想するしかありません。

これらの債務はどの医院経営や病院経営でも存在しているので、そんなことを言っていたら、「医院のM&A」なんてできないだろ?と言うかもしれません。

だからこそ、医療法人から事業を買い取るという形態にすれば、この隠れ債務があとで発生しても、買う側に被害が及ぶことがないのです。

ただこの形態で「医院のM&A」を行うと、売る側にとってはデメリットが大きいので、このような隠れ債務がないことをアピールしましょう。

そのためには、未払残業代がないように勤怠管理を行い、患者からのクレームには迅速に対応し、税務で否認されない処理にしておくことです。

出資持分を売却するだけでよいのに、理事が変わるだけでよいのに、事業譲渡によって無駄なコストと手間をかける必要はないはずです。

このように、医院のM&Aを行うときには4つの形態があります。
あなたの医院や病院は、どの方法を採用することになるのか、それによっていくらの税金が発生するのか、事前に計算しておきましょう。

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