医院や病院を売却するならば、どのような形態がよいのか?

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2012/12/17
医院や病院を売却するならば、どのような形態がよいのか?

あなたにとって、医院や病院は子供、または親戚の人で医師がいれば、その人に継いでもらうのが一番よいと考えるはずです。
私もそれが、一番よいと思います。

総合病院でなければ、医院経営や病院経営は、5人から20人ぐらいの人数で運営されています。院長先生と10年以上も一緒に働いてきた勤務医、看護師、スタッフがいて、そこにずっと通っている患者もいます。

そこに、まったく知らない第三者の医師がやって来ても、人間関係が上手くいかないことも多いのです。それが、院長先生の子供や親戚の人であれば、周りの支える人の気持ちも違ってきます。

総合病院は、今以上に、診療報酬点数が高くない外来の患者を受け付けない体制になっていくはずです。

この受け皿になるのが、地域に密着した医院や病院であり、地域医療の継続という面から考えても、事業承継を成功させることが必須です。

とは言え、医師になった子供や親戚の医師が、必ず、あなたの医院や病院を継いでくれるという保証はありませんし、ハッキリ、やらないと宣言されてしまうこともあります。
それでも諦めきれずに、ずっと子供の気持ちが変わるのを待っている院長先生もいます。

ただ考えて欲しいのは、人生の選択肢に良い、悪いはないと思うのです。
医院や病院を継ぐことだけが、子供の選択肢ではないと理解してあげることも必要です。
一番よくないことは、何も選択せずに、問題を放っておくことです。

もし医院や病院を継いでくれる人がいないと判断したならば、第三者に売却する「医院のM&A」という選択肢も考えるべきです。

院長先生が80歳を超えるまで放っておいたら、誰も承継できず、医院や病院は閉院となってしまいます。働く看護師やスタッフも不安を抱え、周りに住む住民も困ってしまうでしょう。

院長先生が、医院のM&Aを選択することは、子供や親戚の人が医院や病院を継がないという選択をしたことと同じで、別に悪いことではありません。

自分にとって最善の選択をしてください。

実際に、医院のM&Aを行う場合には、下記の4つの形態のどれかを選択することになります。

  • 【1】個人事業主である院長が、医院を事業譲渡する。
  • 【2】院長は、医療法人の社員(出資者)であり、その持分を譲渡する。
  • 【3】院長は、医療法人の理事を退任して、買収した医師が理事として就任する。
  • 【4】医療法人が、医療事業を譲渡したあと、院長が退任して解散する。

この4つの形態のそれぞれで、税金が違ってきます。

【1】個人事業主として、事業譲渡する

医療法人を設立せずに、個人で医院経営や病院経営を行ってきた場合には、事業譲渡によって、医院のM&Aを実行することになります。
個人医院のままで売却するときのメリットとデメリットがあります。

(1)メリット

医院を買収する側は、個人医院から財産と事業だけを買うことになるため、負債を自動的に引き継ぐことはありません。リース会社と再契約を行うことはありますが、自動ではありません。

それに、買う側に営業権が計上されると、それは5年間で償却して経費になるため、将来の節税にも繋がります。

売る側も、土地の含め益があったとしても、一定の要件を満たせば20%の所得税ですみます。
さらに、売る側に計上される営業権は、

(営業権 - 50万円 ) ÷ 2

という計算を行ったあと、所得税率をかけるため、こちらも所得税は安くなります。

 121215_1

   

(2)デメリット

院長個人で、看護師やスタッフとの雇用契約、製薬会社との仕入契約、大家との賃貸借契約、水道光熱費や電話に関する契約などを行っているはずです。
これらは、買収した医師が再契約することになります。

ただ、医院経営や病院経営は、あまり多くの取引先と契約していることはありませんし、製薬会社や大家でも、承諾しないことはほとんどありえません。
気になるのは雇用契約ですが、これは誠意ある態度で看護師やスタッフに説明すれば、大丈夫でしょう。

ここまでは、そんなに大きなデメリットはない気がします。
ただ、医院経営や病院経営で使っている土地や建物を院長個人で所有している場合には、一緒に売却することになるため、買収側に登録免許税と不動産取得税がかかってしまいます。

医療法人であれば、出資持分の名義が変わったり、理事が変わるだけで、土地と建物の名義が変わることはありません。そのため、登録免許税や不動産取得税がかかることはありません。
とはいえ、今から個人事業主の院長先生が、医療法人を設立して、そこに土地や建物を移転させると、その時点で登録免許税や不動産取得税がかかるので、同じことです。

以上のことから、現時点で個人事業主として医院経営や病院経営を行っていて、「医院のM&A」で売却する確率が高いならば、そのまま医療法人にしない方がよいと考えられます。

一方で、個人事業主として医院の利益を節税するために医療法人を設立しようと考えている院長先生もいるかもしれません。それは、MS法人を設立すれば、同じことが達成できるはずです。

【2】院長は医療法人の社員であり、
その持分を譲渡する

今からでは、持分の定めのない医療法人しか設立することはできません。
ただ、過去にあった持分の定めのある医療法人は、そのまま、経過措置で残っています。
院長先生も含めて、社員には財産権があるので、その経過措置がいつ終わるのかは決まっていません。多分、永久に続きそうです。

それでも、この持分の定めのある医療法人も、子供に事業承継させるか、M&Aで売却するか考えなくてはいけません。
とくに持分の定めのある医療法人の出資持分は、相続税の評価がかなり高くなりすぎて、相続人が相続税を支払えずに、次のような事態(延納する)が全国で起こっています。

  • 【1】医療法人の跡をあとを継ぐ人を探している途中で、院長の相続が発生してしまった。
  • 【2】医療法人の出資持分に対する相続税が高く、相続人は分割で支払うことにする。(延納する)
  • 【3】相続人には医師がいなかったので、新しく院長を雇った。
  • 【4】相続人は理事になり、給料をもらっているが、それで相続税を支払い続けている。

相続人が分割して支払う相続税には利子がつきます。この利子は医院経営や病院経営とはまったく関係ないものです。そのため、医療法人の経費になりません。
笑えない話です。

さらに最悪な場合には、院長を探せなかったり、買ってくれる医師がいなくて、閉院になることもあり得ます。実際に院長が亡くなり、当分の間、医院を閉めてしまうと、患者が離れてしまうのです。

結局、医院の建物や土地を売却して、医療機器も中古市場で売却しても、高値にはならず、相続人はお金がほとんど残らない事態もあり得ます。
これでは、地域医療が継続できないどころか、相続人に生活費を残してあげることもできていません。

このような事態を避けるためにも、持分の定めのある医療法人の院長は、生前に事業を継承する人を、子供や親戚にいなければ、「医院のM&A」によってでも探しておくべきです。

院長先生が、出資持分を売却したときには、下記の数式で税金を計算することになります。

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ここで、取得費とは、最初に出資した金額、もしくは途中で買い取った金額のことです。

あなたが祖父や父親から医療法人の出資持分を相続したり、贈与してもらい、そのとき相続税や贈与税を支払っていたとしても、そのときの評価とはまったく関係ありません。

相続や贈与がなかったとして、そもそも出資した金額等が取得費になります。
それでも、所得税は売却益の20%でよいことになるので、かなり優遇されています。

持ち分の定めのある医療法人が、「医院のM&A」を行うときには、社員の持分を売却することが理想です。

この続きは次のブログで解説していきます。

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