医療法人同士で合併したら、いきなり多額の法人税と所得税がかかるという噂は本当か?- その(1)

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2012/07/17
医療法人同士で合併したら、いきなり多額の法人税と所得税がかかるという噂は本当か?- その(1)

合併とは、2社以上の医療法人が1つの医療法人になることを指します。

このとき、社団医療法人同士、財団医療法人同士は、合併できますが、社団医療法人と財産医療法人同士の合併はできません。

財産医療法人は数が少ないので、社団医療法人同士の合併を前提に話を進めていきます。

そもそも、医療法人同士が合併するメリットは、どんなものがあるのでしょうか?

  • 【1】消滅する医療法人の権利を自動的に引き継ぐため、取引先との関係を継続できる
  • 【2】消滅する医療法人が保有していた資格や許認可があれば、それも引き継げる
  • 【3】医師や看護師との雇用契約をそのまま、引き継げる
  • 【4】一定の要件を満たせば、消滅した医療法人が持つ、法人税の繰越欠損金を引き継げる

つまり、消滅する医療法人が保有していた営業上の資産がすべて何も気にせず、使い続けることができるのです。

それが、医療法人同士が合併する一番のメリットです。

例えば、あなたが他の医療法人の院長から事業承継者がいないから、継いでくれないかと相談されたとします。歴史のある医療法人なので、取引先には学校や企業団体などが多数あり、魅力的だとします。

それでも、あなたも、すでに自分の医療法人を持っていて、両方の院長として現場に立つのは物理的に無理ですし、いきなりあなたが相手の医療法人に乗り込んでいき、そこの看護師に命令しても、聞いてくれるはずがありません。

そこで医療法人同士を合併させてから数年間、その理事長と一緒に仕事をやり、あなたの医療法人から医師や看護師を出向させたり、相手からも出向してもらうことで交流します。そして、相手の医療法人の現場で働ける医師も1年ぐらいかけて育てます。

そこの患者や取引先があなたやその医師に馴染んだところで、相手の院長には引退してもらうという方法が考えられます。

また、あなたの医療法人が、どうしても病床を増やしたいと考えた場合、すでに病床を持っている医療法人と合併するという方法もあります。

現在、相手の医療法人が持っている権利をそのまま使いたいときには、合併という方法はピッタリなのです。

もちろん、メリットがあれば、医療法人同士が合併するデメリットもあります。

  • 【1】相手の医療法人の負債も自動的に引き継ぐため、隠れ債務があると怖い
  • 【2】合併法人の中に、1社でも持分の定めのない医療法人があると、出資持分が消滅する
  • 【3】合併したあとに喧嘩したときに、お互いに別れるのが難しい

医療法人と合併したあと、隠れ債務が発見されると資金計画が狂ってしまいます。また、お互いに喧嘩したときに、上手に分裂して元に戻すことができません。

ただ、事前調査を綿密に行うことで債務を洗い出し、相手の医療法人の医師や看護師とも面接をしてよく話し合うことで、これらのリスクを回避することはできます。

これに加えて、医療法人同士が合併するときに特に気をつけるべきことがあります。

それは、適格合併か、非適格合併か、
ということです。

はぁ???
とあなたは、思われるかもしれません。
あまり聞き慣れた言葉ではないので、当然です。
税務上の言葉になります。

項目

適格合併 非適格合併

資産及び負債が移転することに対する税金

存続する医療法人

消滅する医療法人の帳簿価格をそのまま引き継げる

消滅する医療法人の資産と負債を時価で引き継ぐ

消滅する医療法人

資産の売却損益は発生せず、法人税はかからない

資産の売却損益が発生し、法人税がかかる可能性がある

決算について

合併の日の前日までの期間で決算を行う

利益積立金の引き継ぎ

消滅する医療法人の利益積立金を引き継ぐ

消滅する医療法人の利益積立金を引き継がない

繰越欠損金の引き継ぎ

要件を満たせば、引き継げる

引き継げない

院長の持分の売却益

なし

存続する医療法人の持分を取得する場合は売却益が発生しないが、お金を受け取ると発生して、所得税がかかる

院長の持分に対する配当

なし

所得税がかかる

詳細に書くと、上記の図のようになりますが、簡単に言えば、医療法人が合併したときに、非適格合併と判定されると、

【1】消滅する医療法人の資産が売却したものとして処理されてしまう

【2】消滅する医療法人の出資持分が売却されたものとして処理されてしまう

ということなのです。

2つの医療法人が合併しただけで、誰も儲かったわけでもないのに、売却益が発生して、【1】であれば医療法人に法人税が、【2】であれば院長に所得税がかかることになるのです。

これから、一緒にがんばってやっていく矢先に、いきなり多額の税金がかかれば、そのあとの資金繰りが悪くなってしまいます。

しかも、消滅会社にあった繰越欠損金も非適格合併になれば消えてしまいます。

この繰越欠損金とは、
医療法人の過去の赤字のことです。

普通、医療法人が黒字であれば、それには法人税がかかります。

一方、医療法人が赤字になったときには、法人税が還付してもらえません。
(前年度に支払った法人税を還付してもらう方法はありますが、あまり使いません)

とすれば、国はいつも儲かったときだけ税金を持っていくことになってしまいます。

「お役所なんてそんなもんだ」と言わないでください。

実は、医療法人が赤字を出した場合には、その赤字は、翌年から7年以降の黒字と通算してもらえることになっているのです。

この図でも分かるように、2年前の5000万円の赤字が、1年前に3000万円分使われて、今年は2000万円分使われて、残った今年の2000万円の黒字にだけ法人税がかかるのです。

これだけで、「5000万円 × 法人税率(40%) =2000万円」も医療法人は助かるのです。

ところが、あなたが非適格合併をしてしまうと、
この繰越欠損金は引き継げず、ゼロになってしまうのです。

医療法人が持っていた繰越欠損金がなくなり、この例で考えれば、2000万円も損をしてしまうならば、合併する時期を遅らせるという選択肢もあるはずです。

つまり、繰越欠損金をすべて使い果たしてから、合併するということです。

でも医療法人同士の合併は、勢いもありますし、時期も大切です。

できれば、医療法人同士の合併を適格合併にして、繰越欠損金を引き継げれば、そんなことを考える必要はなくなるのです。

では、非適格合併にならないためには、どうすればよいのでしょうか?

もちろん、適格合併になる要件を知り、それをクリアすればよいのです。

長くなってしまうので、次回にします。

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