勤務している常勤医師の人件費は、いくらが、妥当なのか?

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医療関連のコンサルティング
2015/11/10
勤務している常勤医師の人件費は、いくらが、妥当なのか?

勤務している常勤医師の人件費は、いくらが、妥当なのか?

あなたの医院経営や病院経営で、主な経費と言えば、医薬品などの材料費、人件費、賃料、医療機器のリース料、銀行への利息の5つになるはずです。
その中で、今回は、医院や病院の人件費に焦点を当てて、考えていきます。

厚生労働省が発表している「病院経営管理指標」を見ますと、医院や病院の人件費率は、50%を超えています。

その中でも、精神科での人件費率は、60%を超えるのです。
この傾向は、10年前からほぼ横ばいで、変わっていません。
ここで、人件費率とは、どのように計算するのでしょうか?

人件費率 =
人件費(社会保険料の法定福利費は除く)÷医業収益(売上高)

精神科は、確かに、他の診療科目と比べて、医師の給料が高い傾向にはありますが、それだけが原因ではありません。
精神病棟に入院したときに、医薬品の材料費や高額な医療機器を使うことが少なく、入院単価が低くなっています。

つまり、精神科は医業収益が少し低くなるので、人件費率が高くなると分析できます。
このように、あなたの医院や病院の人件費率をチェックするときには、医業収益が競合と比べて、低ければ、人件費率が自動的に高くなるのです。

そのため、単純に人件費率が高いから、看護師や社員への賞与は廃止する、人員を減らすという意思決定をしてしまうと、結果的に、ベテランが辞めてしまうことにもつながります。

それが、将来の医業収益を減らし、悪循環に陥ることもあるので、要注意です。
では、どうすれば、医業収益を減らさずに、この人件費率を下げることができるのでしょうか?

そもそも、医院経営や病院経営で人件費率が高くなるのは、働く医師や看護師などは、資格が必要となるため、人材の供給が少なく、給料が高くなりがちです。
受付の社員であっても、医療事務の資格を取っていることがほとんどで、誰でもよいという訳ではありません。

しかも、入院施設があれば、24時間体制で、看護師などを配置するため、深夜手当が追加されて、人件費率は上がるのです。
このように考えると、医院や病院では、人件費はコストではなく、原価と言えるのではないでしょうか。

つまり、医業収益を上げるために、
人件費に投資しているのです。

あなたが院長先生であれば、医薬品の歩留まり率高くして、廃棄率を減らすことで、利益率を高めようと考えるはずです。
ならば、高い人件費がかかるのは仕方がないとして、チームの連携を強くしたり、無駄な手待ち時間を減らしたり、業務の効率を上げることで、人件費率は下げられます。

人件費自体を下げるのではなく、
人件費率を下げることを目標にすべきなのです。

また、人件費率を下げるために、仕事の一部を外注していることもあります。
特に、医療事務については、比較検討する資料も少なく、競合会社も探せないため、本当に外注して経費削減になっているのか、再度検討することが必要です。

外注で来てもらっている人よりも、事務の社員として雇った人の方が、院長先生の話を聞きますし、看護師との連帯感も生まれます。
先ほども言いましたが、業務の効率を上げる努力をせずに、単純に人件費率が高いという理由で、外注していると、結果的に損していることもあるのです。

 

さらに、非常勤医師を雇っている場合には、その人件費率はどのくらいが妥当なのでしょうか?
一般的に、医師1人当たり、保険診療での医業収益は、1年間で1億円が目標です。
医師が診察しなくても、診療報酬がもらえるリハビリを専門とする整形外科や24時間で深夜の訪問診療を行っている内科などは、1億円を超えることがあります。

ただ、通常は、医師が昼間に保険診療の診察などを行い、請求します。
とすると、1時間で診察できる患者の数は、限られてきます。

1日8時間の診察時間で、1年間280日程度働く(木曜日の午後と日曜日は1日中休みの場合)とすると、やはり1億円ぐらいが限界となります。
もちろん、診察時間以外、院長先生が休んでいる間でも、賃料は発生します。
医薬品も日数が経てば、廃棄するものも出てきます。
医療機器も使わなくても、置いておくだけで、経年劣化します。

そのため、診察時間をもっと長くして、医院や病院を年末年始以外の休みをなくせば、この無駄を省くことができます。

患者からも、夜遅くまで、また土日も空いている医院や病院があれば、すごく喜ばれます。
いつも空いているというのは、患者を集めるには、すごくよい広告宣伝にもなるのです。
コンビニや飲食店が24時間営業を行っているのも、その理由からです。

とはいえ、院長先生が、そこまで働くのは無理なので、交代で来てくれる非常勤医師を雇うことになります。
医師1人で1億円なので、非常勤医師が1週間で、例えば、3日来てくれれば、半分なので、医院の医業収益は1億5000万円まで上がるはずです。

それだけではありません。

検査や画像診断、特別な自由診療の知識がある非常勤医師であれば、それ以上に医業収益が上がることもあります。
ところが、こんなことは稀で、ほとんどの場合、非常勤医師は、1週間に3日も終日で働いてくれることもなく、特別な知識があることも少ないため、結果的に、人件費率は高くなります。

 

例えば、非常勤医師が外来で1コマとして、「午前中だけ」という形で担当することが多いのです。
外来の診療報酬はそれほど高くない上に、患者がそのとき、埋まればよいですが、手待ちになることもあり得ます。

それでも、その1コマに対して給料を支払うため、どうしても、人件費率が高くなります。

 

例えば、外来で1コマ(9時から12時半)の非常勤医師への給料が5万円とします。
外来の患者の単価を1万円として、半日で10人を診察すると、人件費率は50%となります。

給料5万円 ÷ 医業収益10万円(1人1万円×10人)
= 50%

しかも、半日の出勤でありながら、当然、医院や病院は、往復の交通費を支払います。
医師1人に対して、看護師や社員が数名は必要となるので、この人件費率が50%では、医院や病院全体の人件費率が下がることは、絶対にできません。

では、非常勤医師の人件費率は、どのくらいを目指すべきなのでしょうか?

ハッキリ言って、統計的に、
医師の人件費率が15%以下であると、
医院経営や病院経営が黒字になります。

給料5万円の非常勤医師であれば、医業収益として33万円が必要です。

給料5万円 ÷ 医業収益33万円 = 15%

もし外来の単価が1万円とすれば、33人を診察する必要があります。
午前中だけで、33人を診察するのは、物理的に難しいでしょう。

一方で、非常勤医師の給料を5万円より下げたら、もう来てくれないかもしれません。
賃料、医療機器などの効率を考えると、来てもらった方が医院経営や病院経営にとってはよいことが多いのです。

とすれば、この外来の単価を上げる方法を考えましょう。
自由診療を増やしたり、保険点数が高い診療方針に切り替えるのです。

 

この15%は、非常勤医師だけではなく、
常勤で来てもらっている医師にも該当します。

例えば、年収1200万円の常勤の医師から、年収を1500万円に上げて欲しいと要求されたとします。
ここで、15%の人件費率から逆算すると、医業収益1億円を達成できなければ、この1500万円は上げられないと教えてあげる必要があります。

その常勤の医師が過去に働いた患者を数に診療単価をかけて、いくらぐらいの医業収益を達成していて、それを増やすための診療方針を一緒に考えてあげましょう。
医院経営や病院経営は、医業収益を上げることだけが目的ではなく、儲からないことでも、患者の病気を治療するためにやるべきことがあるという意見も、よく分かります。

それでも、医院や病院が赤字になり、経営が立ち行かなくなれば、結果的に周りの患者にとっては、不利益になるのです。

私は、医院や病院がすごく儲かるべきだと主張しているのではなく、医師1人の医業収益に対して、15%の人件費率に設定することが、黒字になる目安と言っているのです。

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