子供が、父親が所有している医院の建物を増改築したら、どうなる?

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2016/01/10
子供が、父親が所有している医院の建物を増改築したら、どうなる?

供が、父親が所有している医院の建物を増改築したら、どうなる?

昔は、駅から近い賃貸ビルで開業するよりも、住宅街の中で駐車場を作って開業する院長先生の方が、圧倒的に多い時代でした。

そのため、自宅の隣りに、父親が個人名義で医院を建てて、開業していることが、圧倒的に多かったのです。
実際に、私の自宅も住宅街にありますが、その近くに医院や病院が建っていて、風邪になると、駅まで歩くのが大変なので、そこに通っています。
当然ですが、その父親が院長先生として、医院経営や病院経営を続けている間は、その建物や内装の修繕費、新たに造作した場合も、すべて確定申告で経費、もしくは建物の取得価額に加算して減価償却費として計上できます。
実際に、医院や病院は、一般の事業と違い、間取りをしっかりと作る必要があります。
診察室での患者との会話は聞き取られてはいけないものですし、医療機器によっては、特殊内装、シールド工事、防音工事などが必要になることもあります。
建築コストとして、坪100万円ぐらいかかってもおかしくありません。

 

さらに、一般の事業と違い、毎日、何十人もの患者、医薬品のMRなどの業者が行き来するため、建物の損傷もかなり激しくなります。
一定の期間ごとに、修繕をしていかないと、すぐに建物が傷んでしまうでしょう。
この修繕費に関しても、当然ですが、院長先生の確定申告で、修繕費として計上して、何の問題もありません。
そのあと、院長先生である父親が高齢になり、子供や孫がそのまま、医院や病院を継ぐということがよくあります。
子供が保健所や税務署に開業届を行い、個人事業主として、医院経営や病院経営を引き継ぐのですが、建物は、そのまま、父親が所有し続けています。
このとき、注意すべきことがあります。

 

(1)子供が支払う、医院の賃料について

子供が、個人事業主として、父親の建物をそのまま使って、医院経営や病院経営を行うのであれば、賃料を支払うでしょう。
このとき、隣りの自宅で、父親と子供の生計が一緒だと認められると、この賃料が確定申告で経費になりません。
実際に、子供が父親に賃料を支払っていたとしても、単純にお金を貸していたとみなされてしまいます。もし父親が返済をしないと、贈与されたことになり、贈与税がかかってしまいます。
賃料は経費にならなくとも、父親が負担している固定資産税、建物の減価償却費、修繕費は、子供の確定申告で経費として計上できるのです。

 

つまり、父親が不動産の賃料から利益を取ることができないということなのです。

 

ただ、所得税は累進課税となっています。
父親がすでに引退しているのであれば、収入は年金ぐらいしかないため、子供の医院や病院の利益を移転させた方が、所得税は低くなります。
父親が子供に、医院や病院の建物を貸して利益を得ることで、家族全体の所得税を節税した方が得になるはずです。
ここまでの前提は、生計が一緒ということでしたので、父親と子供の生計が別と認められれば、子供が支払っている賃料が経費と認められます。
では、生計が別とは、どのような場合を指すのでしょうか?

 

父親と子供が離れて住んでいて、それぞれの財布で生活していれば、「生計が別」となります。
今回は、医院や病院の隣りに建つ自宅に、父親と子供が同居していました。
この状態で、「生計が別」とみなされるためには、下記のような、一定の基準を満たす必要があります。

  • (1)玄関が別々になっていて、かつ中の廊下で自由に行き来できない構造になってれば、二世帯と見られます。当然、キッチン、風呂、トイレは、各世帯で専用とします。
  • (2)電気、ガス、水道について、別々のメーターが設置されていて、それぞれが支払っている事実が必要です。固定資産税などの税金も、それぞれが負担します。
  • (3)食材についても、各世帯で分担していることが必要です。

 

所得税は、毎年、かかる税金です。
節税を続けて行けば、かなりの効果が期待できます。
その金額をシミュレーションしてみて、メリットがあるならば、自宅を二世帯に改装してもよいかもしれません。

 

(2)医院の建物の増改築について

子供が、MRIなどの医療機器を導入して、新たな検査室を設置したい、もしくは、在宅医療のチームを作ったので、待機部屋を作りたいなどの理由で、建物を増築することがあります。
この増築に関しては、父親からお金を出してもらえば、何の問題もありません。
それどころか、父親の財産がお金から建物に変われば、相続税を計算するときの評価額は、その部分に関しては、半分以下に低下します。
つまり、相続税の節税対策になるのです。
ところが、子供がお金を出して、父親名義の医院の建物を増改築することがあります。
なぜ?と疑問に思う人もいるかもしれませんが、理由はいろいろあるでしょう。

 

例えば、建物を増改築するお金が2000万円かかるとします。
父親としては、医院を継いだ長男のためにも、お金を出してあげたいと考えています。
ところが、他に、次男と長女がいて、2人は医院経営や病院経営とは、まったく関係ない道を歩んでいます。
すでに医院を継がせて、しかも自宅に同居している長男に対して、次男と長女から不公平だと聞かされていたとします。
ここで、2000万円もの増改築のお金を出せば、あとで、もめる可能性が高くなります。

 

もしくは、父親の体調が悪化して、すでに介護施設に入居している場合もあります。
その場合、父親に説明をして、同意を得て、請負契約書に押印してもらい、そのあと銀行の担当者に介護施設まで来てもらい、父親の銀行の通帳から振り込みを行うことになり、大変です。
途中で、請負金額が変わることもありますし、通常は、支払いも分割となります。
その都度、銀行の担当者に来てもらう必要があります。

 

結果的に、子供が父親が所有する医院の建物の増改築のお金を出すことになったならば、注意すべきことがあります。
それは、建物の固定資産税の評価額が高くなるほどの増改築を行うと、建物の価値が増えていることを意味します。
このとき、医院の建物に子供の名義を入れないと、子供が父親に贈与したことになります。
増改築の登記を行わず、放っておく場合でも、市町村は1月1日に空撮しているので、見つけたら、固定資産税の評価額を上げてきます。
登記していなかったとしても、贈与税がかかるのです。

 

そこで、この贈与税がかからないように、持分を計算して、名義を変える登記を行いましょう。

 

下記のように、医院や病院の建物に対して、増改築したとします。

  • ① 既存の医院の建物の面積 40坪   固定資産税評価額 3000万円(築20年)
  • ② 増改築部分の医院の面積 10坪   増改築に要した費用 2000万円

子供の持分 2000万円÷(3000万円+2000万円)=0.4

 

2000万円を支出した子供の持分は、4/10となり、父親の持分を6/10と登記します。
法律的には、医院の建物の1200万円分を子供に売却して、父親が受け取った1200万円を、すぐに増改築のお金として出したとみなします。
このとき、父親と子供が、医院の建物を確定申告で減価償却していて、その残り(残価)が3000万円未満になっていると、売却益が発生します。
これには、所得税がかかることになりますが、基本的には、ほぼ同じか、固定資産税評価額の方が低いことが多いでしょう。
やはり医院や病院の建物は、5年に一度、最低でも10年で、大規模修繕を行います。
この修繕費はすべて経費になるわけではなく、建物の取得価額として追加されていくからです。
最初に投資したお金に、これらの修繕費が追加されて、減価償却されていくので、それほど残価が下がらないからです。
なお、売却益が発生した場合には、20.315%の税率の譲渡所得税がかかります。
贈与税は税率が高いため、譲渡所得税を支払った方が、得になります。

 

医院を増改築して検査室を増やしたり、在宅医療を始めることは、医業収益を伸ばし、将来の医院経営や病院経営にとってプラスになることなので、ぜひ、やるべきです。

 

そのとき、子供が、増改築費用を負担するならば、医院の建物の名義を変更するという手続きを忘れないでください。

 

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