医院の持分を、甥に売却したら、贈与税がかかることがある

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2014/12/30
医院の持分を、甥に売却したら、贈与税がかかることがある

医院の持分を、甥に売却したら、贈与税がかかることがある院長先生から、
「自分の子供は、大学病院でずっと働くことに決めたようだ。そのため、私が生前に、弟の子供である甥に、自分の医療法人を譲ることに決めた。その方が、相続の問題も起きないし、医療法人で働く看護師や患者も安心だろう。ただ、タダであげるというわけにもいかないので、医療法人の持分を売買することにした。金額に関しては、弟も入れて、甥と話し合い、3000万円を分割で支払うということで話がついた。これ、問題ないかな?」
という相談を受けたことがあります。

私が、
「3000万円とは、どのように決めたのですか?」
と聞きました。

すると、院長先生は、
「いや、2年前ぐらいに、すでに子供から『医院を継がない』と聞かされたので、医院のM&Aの専門の会社に来てもらって、査定してもらったんだ。そしたら、5000万円ならば、買いたい医師、または医療法人を探して来れると言われたんだ。そのときに、医療法人の持分を査定してもらった資料もある。」
と言って、私に資料を手渡してきました。

私が、
「それならば、なぜ、5000万円ではなく、3000万円で売買するのですか?」
と聞くと、

「そりゃ、甥なんだから、他人に売却するよりは、安くしてあげるだろ。それに、差額の2000万円に関しては、私が理事として残り、1週間のうち2-3日は来て、仕事を手伝ってあげて、それで給料をもらえばいいかなと思っているんだ。3年ぐらい手伝って、毎月50万円もらえば、3年間で1800万円になる。第三者に売却していたら、すぐに理事長を辞めることになったから、結果的に、金額は同じになるだろ」
と答えたのです。

あなたは、この会話の中で、何が税務上のリスクになるか、分かりますか?

ここで、医療法人だけではなく、個人医院を売却することもできます。
このとき、売却の方法には、3種類あります。

売却の方法

持分の定めのない医療法人は、持分の売買はできないので、院長先生(理事長)の交代という形を取ります。

このとき、売却する院長先生は、退職金をもらうので、それが売買価格と言えるでしょう。
医療法人の現預金では足りない場合には、買う側の院長先生、株式会社が、お金を出資する、または貸すことになります。

次に、持分の定めのある医療法人ですが、この場合には、持分を売却することができます。
これが、今回の最初の会話の医療法人に該当します。
あなたは、医療法人の持分を売却するときの価格は、どのように決定してよいと思いますか?

実は、売却する相手が第三者であれば、価格の決め方は自由になります。

お互いに同意すれば、あとで、税務上の問題になることはありません。
もちろん、売却した院長先生は、

「持分の売却価格-持分の取得価額-譲渡費用」
× 20.315% = 所得税

を納めることになります。

ここで、「持分の取得価額」ですが、通常は、医療法人を設立した時の価格となります。
だいたい、1000万円で作ることが多いと予想されます。
ただ、医療法人の持分を、第三者から買ってきているならば、そのときの価格が取得価額となります。

このとき、買ったわけではなく、祖父や父親から相続したり、贈与されている場合には、その人の取得価額を引き継ぐことになります。
つまり、相続や贈与がなかったものとして、取得価額を計算するのです。
その場合、やはり医療法人を設立したときの価格として、1000万円が取得価額となることが、多いはずです。

例えば、父親から継いだ医療法人の持分(設立時の取得価額は1000万円とする)を5000万円で売却できたとすれば(売却の仲介手数料が300万円とする)、

(5000万円-1000万円-300万円)×20.315%
=約750万円 =所得税

手取り =
5000万円-300万円-750万円=3950万円

となります。

最初の会話に戻りますが、3000万円で甥に売却したとすると(仲介手数料はかかりません)、

(3000万円-1000万円)×20.315%
=約400万円 =所得税

手取り =
3000万円-400万円=2600万円

となります。
つまり、1350万円の差額となります。

ただ、このあと、院長先生が、医院経営や病院経営の仕事を手伝って、毎月50万円を3年間もらい続けるとすれば、手取りで約1500万円となります(所得税だけではなく、社会保険料も控除しています)。

院長先生としては、働き続けるという手間はありますが、甥に売却した方が、手取りは多くなります。
甥にとっても、最初の初期投資が3000万円でよく、そのあと1800万円を給料として支払うとしても、それは医療法人の経費になるのです。

ただ、世の中は、やはり簡単には節税させてくれません。

院長先生が、子供や孫だけではなく、甥も含めて親族に、持分を売却するときには、所得税だけではなく、贈与税という問題が発生するのです。
もし、医療法人の持分の評価が5000万円だったにも関わらず、3000万円で甥に売却して、すぐに院長先生が亡くなったとすれば、そのあとの給料はもらえません。

院長先生が手にした、手取りの2600万円に相続税はかかりますが、給料でもらうはずだった1800万円(亡くなったことでもらえない)は、甥に無料であげてしまったことになるのです。
これを許すと、相続税を自由に節税できてしまうことになります。

そこで、親族間で医療法人の持分を売買するときには、税法上で、

持分の純資産価額による評価×50%+持分の類似業種比準価額×50%

純資産価額 =
医療法人の資産の時価 - 医療法人の負債

類似業種比準価額 =
主に医療法人の利益から評価

として評価した金額で、売買しなければいけないと決まっているのです。

これ以上、安い金額で売買すれば、甥に差額を贈与したことになり、贈与税がかかります。
今回の事例で計算すると、例えば、上記の評価がたまたま5000万円となったとすれば、それを3000万円で売却したので、院長先生から甥に2000万円を贈与したことになり、775万円もの贈与税が、甥にかかることになります。

とすれば、節税どころか、全体の税金の合計は高くなってしまうのです。
一方、上記の評価した金額よりも、持分を高く売買すれば、院長先生の方が、甥から贈与されたとして、贈与税がかかるのです。

ここで注意すべきことは、院長先生が甥に医療法人の持分を贈与するときの評価と、売買するときの評価は違うということです。

あくまで、上記の評価は、持分を親族に売却するときの金額を計算しているのです。
ということは、先ほどの院長先生の会話の中で、第三者が5000万円で買ってくれる(仲介会社が、売ってくれる)という資料は、税務上では、基本的は使えないことになります。
甥に売却するときの金額を計算しなおす必要があります。

ただ、第三者に安く売却してもよいと考える院長先生はいないので、結果的に、上記の評価とそれほど、大きくズレていないことも多いのが現実です(土地や建物の評価によっては、かなり違うこともあります)。

このように、親族に持分を売却するときには、所得税は発生するのは仕方ないですが、無駄な贈与税が発生しないように、十分に気を付けるようにしましょう。

院長先生として、少し安くしてあげようと思ったことが、結果的に、多額の贈与税を発生させてしまったら、意味がありません。

なお、最後の個人医院を売却するときにも、建物、土地、医療機器などの資産を個々に、甥に売却することになります。
このときも、個々の資産が時価よりも安ければ、すべて甥に対する贈与となり、贈与税が発生します。

注意すべきことは、やはり贈与税を計算するときの評価とは違うということです。
これらの資産を贈与するときには、建物は固定資産税評価額、土地は路線価などで評価しますが、売却するときには、あくまで時価(不動産鑑定士などによって査定してもらう)で売却しなければいけません。

売買と贈与では、法律行為がそもそも違うので、税制も変わってくるということなのです。

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