持分なしの医療法人へ移行するための新しい認定療法人制度が始まります。③

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2017/08/30
持分なしの医療法人へ移行するための新しい認定療法人制度が始まります。③

前回からの続きですが、平成29年10月1日から導入される新しい認定医療法人の制度の概要は、下記となります。

③に「医業継続に係る相続税・贈与税の納税猶予制度等の適用期間を3年延長する」と記載があります。これだけ読むと、平成26年に導入された認定医療法人の制度がそのまま続くのではないかと勘違いしてしまいますが、そうではありません。まったく違う制度となっています。

今回は、前回と同じように厚生労働省が認定医療法人を認定するのですが、その要件が厳しくなります。「前回よりも、要件が厳しくなるのか?」と考えたかもしれませんが、そうではありません。

実は、今回の制度は厚生労働省が認定医療法人と認定すれば、医療法人に贈与税がかからずに納税猶予してくれるのです。つまり、税務署は判定しません。そのため、厚生労働省が決定する認定医療法人の要件さえ満たせばよいことになるのです。

その要件の概要は、下記となります。

上記以外にも、認定計画を提出することなどの要件がありますが、クリアするのは難しくなく、①から④の要件を満たすことが最重要課題となります。

上記のうち②については、基準となる金額が発表されるかもしれませんが、今後の実施状況によって、その金額も改定されていく可能性があります。
上記のうち③については、MS法人への業務委託のことですが、アイミツを取って適正な金額で行うことが必要となります。

実は今回の制度のもっとも重要なことは、この要件を満たした認定医療法人の社員(株主のこと)が持分を放棄したあと、要件を6年間だけ満たせば、医療法人の贈与税が免除されることです。

もし7年目に認定医療法人の要件を満たせなくなった場合、持分を放棄した7年前に遡って、税務署が贈与税を徴収しようとしても、それは不可能なのです。理由は簡単です。

贈与税の時効は6年だからです。

7年前に遡ることはできずに、医療法人は晴れて贈与税を支払わなくて、持分なしの医療法人に完全移行できることになります。

ここまでが新しい制度の解説ですが、これを踏まえて、あなたが院長先生であれば、これからも医療法人を運営していくうえで、下記の3つのうちどれかを選択しなくてはいけません。

1つ目は、今回の厚生労働省が認定する制度に申し込むことです。

ただし、厚生労働省が1件ずつ認定していくため、かなり混むことが予想されます。3年間で多くて2000件程度、最低1000件程度になるのではないでしょうか。現在の持分ありの医療法人の数は4万件です。そのため、この制度を利用するのは、全体の5%に留まります。
それでも3年間の時限立法であり、多分、これほど医療法人が有利な制度が延長されていく可能性は少ないと予想されます。この認定医療法人の制度を活用するのであれば、必ず平成29年10月1日以降にできるだけ早い決断と申請手続きが必要です。

2つ目は、贈与税を支払って、持分なしの医療法人に移行することです。

先ほども説明しましたが、認定医療法人の要件には役職員の給料に上限があったり、MS法人への業務委託の金額に関しても制限されます。6年間ずっと要件を満たし続けて、厚生労働省から監視されることになります。
このような監視が嫌ならば、医療法人で贈与税を支払ってしまえば、誰からも何も言われずに持分なしに移行することができます。医療法人の持分の評価を下げる対策を行えば、一定の金額まで贈与税を抑えることもできるはずです。

3つ目は、持分ありの医療法人のままでいることです。

もともと医療法人の持分は院長先生の財産であり、放棄しなければいけない理由はありません。相続税がかかるのは財産があるからであり、デメリットではありません。相続で争うかもしれないということがデメリットですが、その心配がなければ持分ありの医療法人のままでも何の問題もないのです。
そのため、持分ありの医療法人でこれからもやっていくという考えも悪くないと思います。ただ3つ目の選択をする場合には、これから厚生労働省が作る制度のメリットは取れません。

例えば、現在、持分ありの医療法人と持分ありの医療法人が合併すると、持分ありの医療法人となりますが、それ以外は、すべて持分なしの医療法人となります。持分ありの医療法人が存続法人となって、持分なしの医療法人が消滅して吸収されても、残るのは持分なしの医療法人なのです。

さらに、新しく医療法人の分割という制度もできました。
これも、持分ありの医療法人は使えずに、持分なしの医療法人だけが使えることになりました。
医療法人が、他の医療法人の親会社になることはできません。もし医療法人の事業を拡大していくならば分院を作ったり、他の医療法人と連携していくことが手っ取り早い方法です。その中で合併や分割を使うのであれば、持分ありの医療法人にこだわることはないのではないでしょうか。持分なしになったとしても、今以上に医療法人の売上と利益を拡大する方が賢明です。

これからも厚生労働省は持分なしの医療法人を前提に制度を作っていくため、本当に持分なしのままでよいのか、検討する必要はあります。

逃したチャンスは、あとから回復することはできません。

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