持分なしの医療法人へ移行するための新しい認定療法人制度が始まります。②

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2017/08/20
持分なしの医療法人へ移行するための新しい認定療法人制度が始まります。②

持分なしの医療法人へ移行するための新しい認定療法人制度が始まります。②

前回の続きとなりますが、医療法人の後継者ではない相続人が実際に持分の払い戻しを請求したら、どうなるのかということです。

これに関しては、平成22年4月8日に最高裁の判決がありました。

持分なしの医療法人へ移行するための新しい認定療法人制度が始まります。②

ということで、院長先生の相続が発生したことで社員(株主のこと)を退社して、その持分だけを相続した相続人が医療法人に払戻し請求すると、それに応じなくてはいけないのです。

例えば、下記の事例では次男の法定相続分は2分の1ですので、院長先生が遺言書を書かないかぎり、持分の50%を相続できることになります。遺言書がある場合には、次男は遺留分を請求することになりますが、自宅や現預金を誰が相続するかで変わってしまいます。
ただ、ここでは遺言書がなかったとして、次男が相続した持分の50%を請求したら、医療法人は2億円×50%=1億円を払い戻すことになるのです。

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「うちの医療法人の持分って、そんなに高額ではないよ」という院長先生もいます。

現在、内科の診療所の平均売上が1年間で1億円、平均の利益は1500万円ぐらいです。

「もっと医療法人の利益率は高いはずだ」と思ったかもしれません。
ただ院長先生だけではなく、配偶者も含めた親族に給料を支払い、MS法人に業務委託料を支払い、生命保険などで節税しているはずですので、1500万円でもおかしくありません。この1500万円に対して約30%の法人税がかかるので、1年間で1000万円ぐらいは税引き後の利益が残るのではないでしょうか。
これが医療法人の持分に毎年、加算されていきます。
すると、医療法人成りしてから10年間で1億円、20年間で2億円となります。
診療所を開業してからすぐに医療法人を設立するわけではありません。45歳で独立して、個人事業主の時代が5年間程度あったとすれば、さらにそこから20年後となると、院長先生は70歳です。このときの持分の評価は2億円になるのです。
それで院長先生の相続が発生した場合、その50%の取り分がある次男から請求された1億円を、医療法人は支払えるのでしょうか?

普通に考えると、医療法人に利益が出て、それに見合うお金が残っていれば支払えるはずです。でもそれは税引き後の利益をすべて定期預金にしている医療法人だけです。まず100%あり得ないでしょう。
医療法人は、儲かった利益を建物の内装の改修費に使ったり、新しい医療機器を購入するために使うはずです。お金が医療法人に残っているはずもなく、固定資産に変わっているのです。固定資産がなくなったら診療できなくなるので、次男にその固定資産を現物で支払うわけにもいきません。
結局、分割で支払うか、医療法人が銀行からお金を借りて支払うしかなくなるのです。

医療法人を継いだ長男は、新しい借金を背負うことになるのです。

でもちょっと待ってください。
医療法人の持分の評価が高いのは、次男が頑張ったわけではありません。院長先生とそこを継いだ長男が働いて稼いだことで、評価が高くなったのです。それをもとに計算されたお金を支払うことになるのは納得いかないかもしれませんが、これが相続なのです。
だからこそ、このような事態は回避しなくてはいけません。

そこで回避する1つの方法として、持分ありの医療法人から、持分なしの医療法人に変われば、持分が消滅するため相続の争いにもならず、相続税もかからなくなるのです。

持分なしの医療法人は、「持分がない」ため、遺産分割の対象とはなりません。それでも社員(株主のこと)の地位はありますが、やはり一身専属権となります。
もし院長先生が亡くなったら社員の地位は消滅して、先ほどの事例では次男は社員(株主のこと)にはなれず、持分も相続できずに何も請求できないことになります。
「でも持分ありの医療法人から、持分なしの医療法人に変わる手続きが大変なのでは?」と考えた人もいるかもしれませんが、定款を変更するだけでよいのです。
それを監督官庁の都道府県が受理すれば、それだけで、持分なしの医療法人になることができます。

ところが、1つだけ注意点があります。

それは、持分ありの医療法人の社員(株主のこと)が持分を放棄すると、医療法人を個人とみなして贈与税がかかるのです。

この贈与税は医療法人の経費にもなりません。
しかも通常、「贈与税率>相続税率」と設定されています。
贈与税の方が安かったら、生前に贈与して誰も相続税を支払わないからです。これでは、贈与税を試算して高額となる場合には、医療法人が支払うことができず、持分なしの医療法人に変わることができません。

厚生労働省は持分なしの医療法人に変われば、相続の問題を解決できると言っています。贈与税が障壁になっていることも知っているため、認定医療法人という制度を平成26年に税制改正により導入しました。
認定医療法人となっている間は、社員(株主のこと)には贈与税や相続税がかからない制度です。ところが、持分を放棄した段階で、医療法人に贈与税がかかるかどうかは、認定医療法人であったとしても税務署が判定することになっていました。

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税務署は、特定医療法人、又は社会医療法人に準ずる基準を満たせば、贈与税をかけないとしたのです。
特定医療法人と社会医療法人に準ずる基準は、下記となります。

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これから分かることは、無床の診療所は対象としていないこと、また地域で中核となる医療法人しか対象としてないことです。
とすれば、それ以外の医療法人は、認定医療法人となったとしても、贈与税の支払いは免れないのです。そのため、この制度を使った医療法人はほとんどいませんでした。

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上記の図の右下に記載がありますが、平成26年から2年半で認定件数が61件、うち完了件数は13件だったのです。1年間で全国5件ということになりました。そこで、新しい制度を平成29年10月1日より導入することになったのです。

それに関しては、次のブログで解説します。

 

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