持分の定めのある医療法人が、持分の定めのない医療法人に組織変更しない方がよい

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2012/12/19
持分の定めのある医療法人が、持分の定めのない医療法人に組織変更しない方がよい

現在、個人で医院経営や病院経営を行っている院長が、医療法人を設立しようとすると、持分の定めのない医療法人のみになります。

常勤の医師や歯科医師が3人以上の通常の医療法人であっても、一人医療法人であっても、同じです。

この持分の定めのない医療法人の出資持分には相続税がかかりません。

子供に対する事業承継は、兄弟で争わないように、家族で争わないように、という相続対策はやる必要がありますが、相続税の節税対策に頭を悩ます必要はありません。

一方で、今までの設立されてきた医療法人は、基本的に「持分の定めのある医療法人」でした。

持分の定めのある医療法人が、持分の定めのない医療法人に組織変更しない方がよい 

上記の医療法人Xに対して、院長先生は60%の持分があるので、

2億円 × 60% = 1億2000万円

が、医療法人Xが解散するとき、もしくは社員(株主)が医療法人Xを退社するときに、もらえる金額となります。
なお、医療法人の社員とは、株式会社でいう株主のことです。

ただし、株主は配当を受け取ったり、一部だけの払い戻しを受けることもできますが、医療法人の社員の場合には配当をもらったり、一部だけ払い戻してもらうことは認められていません。

医療法人に貯まったお金が配当金できない、一部の払い戻しができないため、純資産はドンドン増えていくのです。これが将来の相続税の問題を発生させます。

例えば、上記の図で、院長先生が医療法人Xの社員を脱退せずに、理事長だけを子供に譲ったとします。
別に、「社員=理事」ではありません。

このあと、院長が亡くなるまでに、さらに医療法人Xの純資産が増えていると、出資持分に対する相続税はかなり高くなります。あとを継ぐ子供にとって、この相続税は重くのしかかります。
現在、相続税が支払えなくて、分割で支払っている(延納という)院長先生も、全国にはたくさんいます。

この分割の支払いには、利子税という利子がかかり、医療法人の経費にもなりません。

そうならないために、「生前に院長先生の持分を譲渡しておけば?」と考えても、子供に買い取るお金がありません。

それならば、院長先生が医療法人Xを脱退すると、一度に60%分の払い戻しをする必要があるため、そのお金も医療法人Xにはありません。純資産が2億円あるというのは、お金があるのではなく、資産は医療法人Xが使っている建物だったり、土地だったりします。社会保険診療報酬の未収金もありますが、これは看護師やスタッフの給料の原資となるもので、運転資金です。これらを払い戻すことはできません。

院長先生に払い戻したお金をすぐに医療法人Xに貸し付けてもらえばよいと考えても、個人には高額な所得税がかかってしまうため、それほど単純な話でもありません。

つまり、持分の定めのある医療法人は、税金の面からみると、かなり不利なのです。

一応、この「持分の定めのある医療法人」は、現在の医療法では「経過措置型医療法人」と呼ばれ、いつかは、「持分の定めのない医療法人」に移行する方針になっています。
という建前なのですが・・・いつ移行するのか、時期はまったく決まっていません。

持分の定めのない医療法人が解散すると、その残った資産は国や地方公共団体に帰属することになります。

つまり、医療法人の出資持分には財産権があるため、強制的に移行させるのは、つまり社員の財産権を放棄させるのは、永久に不可能ではないかと、私は予測しています。

もちろん何十年後かに、持分の定めのある医療法人が閉院したり、合併したりして、持分の定めのない医療法人が、世の中の90%超を占めることになれば・・・それでも20年、30年単位では、このような比率にはなりません。

現時点で、医療法人のうち、持分の定めのある医療法人が大部分を占めているのが現実です。

そこで、持分の定めのある医療法人を、持分の定めのない医療法人に変えてしまえば?と考える院長もいるかもしれません。
下記の2つの項目を社員総会決議、医療法人Xならば、院長と妻、子供の3人が同意すれば、定款を変更して、持分の定めのない医療法人に変わることができます。

【1】社員の退社時の持分に応じた払戻請求権を放棄させる条文

持分の定めのある医療法人の定款で該当する条文を削除する。通常は、モデル定款を利用していることが多いため、その場合には、第9条を削除することになる。

【2】 医療法人が解散したときには、残余財産は社員の持分に応じて分配という条文

医療法人が解散したときの残余財産(純資産のこと)の帰属先を国、地方公共団体、公益法人等に限定するように変更する。

このように、組織変更は簡単な手続きですんで、相続税がゼロ円になれば、みんな移行する気がしますよね。

確かに、医療法上では、これで問題ありません。
ところが、税金の問題が発生するのです。

このような定款の変更をしたときには、医療法人に贈与税をかけることになっています。

 持分の定めのある医療法人が、持分の定めのない医療法人に組織変更しない方がよい

先ほどの医療法人Xで考えますが、資産の時価とは建物や土地を売却したらいくらになるかということです。そこから負債を差し引いて、純資産を計算していました。

上記の図での純資産を計算するときの資産は、あくまで相続税や贈与税を計算するときの評価となります。

例えば、土地であれば、時価ではなく、その約80%の路線価となります。
建物も時価ではなく、その約50%から60%の固定資産税評価額となります。
それだけの理由で、先ほどは2億円もあった株価が、1億円に下がるわけではありません。

実は、相続税や贈与税を計算するときの医療法人の株価は、純資産だけではなく、類似業種比準価額という評価も加味して計算するのです。
ここでは、類似業種比準価額の詳細な説明はしませんが、利益を主に加味して株価を計算するというものです。

医療法人は、建物や土地、それに医療機器など、お金がかかる割には、利益は小さいと言えます。IT企業ならば、ほとんどの資産がなくても、利益を稼いでいるのです。

とすれば、純資産だけで株価を計算するならば、IT企業の株価は利益を稼いでも株価が安くなり、不公平です。

医療法人の場合には、必ず、

純資産による株価 > 類似業種比準価額による株価

となります。
そのため、上記の図では、株価は1億円と先ほどの半分ぐらいに圧縮できたのです。

この状態で、持分の定めのある医療法人から、持分の定めのない医療法人に組織変更したら、どれほどの贈与税がかかると思いますか?

  • 【1】 院長先生の分
    (1億円 × 60% - 110万円) × 50% - 225万円 = 2720万円
  • 【2】 妻の分
    (1億円 × 20% - 110万円) × 50% - 225万円 = 720万円
  • 【3】 子供の分
    (1億円 × 10% - 110万円) × 40% - 125万円 = 231万円

医療法人Xにかかる贈与税の合計 【1】 + 【2】 + 【3】 = 3671万円

どうですか?
この贈与税を支払うことができるでしょうか?
できませんよね。

医療法人Xの医業収益が増えたわけでも、建物や土地を売却したわけでもなく、先ほどの定款を2つ変更しただけで、この贈与税がかかってしまうのです。

それでは、医療法人の組織変更もできず、何もせずに放っておくと・・・相続税が高くなるとすれば・・・どうすればよいのでしょうか?

答えは、「生前に、院長の出資持分を、子供に贈与しておく」というものです。

それは、子供に多額の贈与税がかかるのでは?と思いましたか?
そこで、相続時精算課税制度を上手に使うのです。

この詳細は、次のブログで解説します。

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