医院法人に、出資持分を買い取ってもらう

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医療関連のコンサルティング
2014/06/30
医院法人に、出資持分を買い取ってもらう

相続税の節税対策が間に合わずに、院長の相続が発生してしまうこともあります。
このとき、経過措置型医療法人、つまり持分の定めのある医療法人であれば、その持分には相続税がかかります。

もし、持分の評価が高くなり、多額の相続税がかかってしまった場合、相続人はどうすればよいのでしょうか?

まず、医療法人の持分を税務署に物納できるか、検討してみます。
税法では、物納できる相続財産の順番が決まっています。

  • 第一順位 国債及び地方債 不動産及び船舶
  • 第二順位 社債及び株式並びに証券投資信託 又は貸付信託の受益証券
  • 第三順位 不動産

第二順位の株式には未公開株も含まれます。
物納するときには、売却益は発生しないため、所得税はかかりません。

ただ、未公開株の場合には、原則1年以内に税務署から買い戻す必要があります。

つまり、猶予は1年しかないのです。
それでも、お金の調達に時間的な余裕ができるのは、確かです。
ところが、医療法人の持分も未公開株の一種ですが、物納できないことになっています。
そのため、物納するのであれば、MS法人の株式ということになります。

国税庁のホームページで発表されていますが、過去の平成7年が最大の件数で9,100件の物納が認められていました。
ところが、平成24年は、なんと205件しか物納が認められていません。
http://www.nta.go.jp/tetsuzuki/nofu-shomei/enno-butsuno/jokyo/01.htm

これだけ物納が減っているのは、別に相続税を納める人が減っているのではなく、国税庁が物納を認めない傾向にあることを示しているのです。

そのため、MS法人の株を物納できるから大丈夫だと、甘い期待はしない方がよいかもしれません。
やはりお金で相続税を支払う方法を考えるべきです。

そこで、持分を医療法人に買い取ってもらえば、お金が手に入ります。
医療法人が、自分の持分を買うことで、自己株式となります。
この方法であれば、将来、相続人が持分を買い戻す必要もなく、ずっとそのままで構いません。

しかも、医療法人にお金がない場合でも、銀行から借りてくればよいのです。
ただ、相続人が医療法人に持分を売却する金額ですが、原則は、純資産価額で評価されてしまいます。

純資産価額とは、医療法人の資産から負債を差し引いた差額のことです。
持分の定めのある医療法人は、配当することができないため、毎年、利益が貯まってしまい、純資産価額は増え続けてしまいます。

しかも、医療法人が昔から、土地を保有していると、その含み益も資産に加算されてしまいます。
つまり、純資産価額で評価するとは、その売買価格が高額になることを指すのです。

そして、出資した金額との差額が、配当所得とみなされて、他の所得と合算されて総合課税となり、最高で55%の所得税がかかってしまいます。
相続を支払うために、高額な所得税も支払うハメになります。

それでは、この所得税を回避する方法はないのでしょうか?

実は、医療法人の持分をMS法人に買い取ってもらえば、回避できます。

この方法を取った場合にも、MS法人は親族が運営しているはずなので、医療法人の持分は、原則、純資産価額で評価しなければいけません。
つまり、医療法人の持分の評価を下げる効果はありません。

ただ、出資した金額との差額である利益に対して、20%の所得税を支払えばよく、医療法人に売却するよりも、かなり得です。
ところが、この方法を採用するためには、1つのハードルがあります。

それは、MS法人にお金が貯まっていなければいけないことです。
医療法人がMS法人にお金を貸し付ければよいと考えるかもしれませんが、そのためには、社員総会の決議だけではなく、都道府県への届出も必要となります。

将来、ずっとそのままというわけにはいかず、やはりMS法人から、医療法人の持分を相続人が買い戻す必要がでてしまいます。

MS法人が、医療法人の株を担保にして、銀行からお金を借りることも難しいはずです。
もし借りれたとしても、銀行への返済が必要となります。
医療法人の持分に対する配当はできないので、元本返済のための原資を、相続人が貸し付けていかなくてはいけません。
どちらにせよ、資金繰り的には厳しい話です。

結局、院長が生前に、相続税の節税対策を早めに準備しておかなかったことが、MS法人にお金が貯まっていない原因なのです。
医院経営や病院経営に専念できないだけではなく、ずっと資金繰りのことで頭を悩ませることになります。

相続人である子供が、相続税と所得税で苦しまないようにするのは、院長の義務ではないでしょうか。

なお、税務署に相談することで、相続税を延納するという方法を取ることもできますが、利子税がかかります。

この利子税は、どこの経費にもなりません。
そのため、相続人は給料から所得税を引かれて、残ったお金で相続税とその利子税を支払い続けることになります。

資金効率が悪くなる方法を取るかぎり、相続人は苦しいことに変わりがありません。

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