今から医療法人を設立すると、出資持分がなくなるって、どういうことか?

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2012/12/04
今から医療法人を設立すると、出資持分がなくなるって、どういうことか?

医療法人の出資の持ち分(出資持分)を、社員と呼びます。社員がいわゆる株主であり、医療法人の最高意思決定機関になります。

この社員によって、医療法人の執行機関である理事を選任し、理事会で理事長が選任されます。

また社員によって、株式会社の監査役に当たる監事も選任します。

医療法人の出資持分に対しては、配当できません。
そのため、医療法人に利益が発生すると、法人税を支払ったお金が、ずっと貯まり続けます。

これは、医療法人が解散するときに、出資持分に応じて、残余財産を分配していました。
もしくは、社員が退社すれば、その出資持分に応じて財産を払い戻していました。

ところが、それぞれに大きな問題があったのです。

【1】解散しないと相続税がかかる

実際に、医師であり、開業して今までずっと運営してきた父親が亡くなっても、ほとんどの医療法人が解散しません。子供が医師になり、あとを継いだのです。地域医療の点からも、医療法人を解散してしまうことは、それだけ医療サービスが低下することを意味し、好ましくありません。

ただ医療法人の出資持分は相続財産となり、それを相続した子供に相続税がかかるのです。

しかも配当できない出資持分の評価はかなり高くなり、相続税が高額になりました。
それでも、医療法人は解散しないかぎり、出資者に対して配当できません。

そこで、子供は父親の相続財産の現預金から支払うことになるのですが・・・母親の老後の生活資金も必要です。
結局、子供は自宅を担保にして銀行からお金を借りるなどして、なんとか支払ったのです。

【2】払い戻しができない

医療法人の理事である父親の出資持分がほとんどであれば、それを継ぐ子供も相続税を支払う覚悟をします。

ところが、子供は兄弟2人で、医療法人は父親が3分の1、長男と次男もそれぞれが3分の1ずつ所有していたとします。
どちらも医師で、事業承継で迷っていたため、父親は両方に出資持分を持たせていました。

実際に相続税の対策から考えると、父親が1人で所有するよりも、最初から子供たちに出資させることは賢明な方法と言えます。

ところが兄弟で1つの医療法人を継ぐともめることも多いですし、兄が後継者となり、弟は大学病院に残ることになりました。3分の1の出資持分を所有している意味が、弟にはありません。

配当もないですし、もし弟が亡くなったら、事業継承に何も関係ない弟の子供は相続税を支払わなくてはいけません。

そこで、弟は社員を退社することで、出資持分に相当する残余財産を払い戻して欲しいと主張します。

このとき、出資額に応じて、通常は払い戻すことになります。
「通常は」というのは、医療法人の定款に、「社員資格を喪失した者は、その出資額に応じて払い戻しを請求できる」というのが、昔の定款のモデルになっていました。(これは、医療法の改正前のもので、今は違います)

これをそのまま、使いまわしている医療法人が、世の中のほとんどなのです。
払い戻す金額というのは、医療法人の持分を評価して決定します。

つまり、社員間、ここでは父親と子供2人の3人で、一定の基準を作って決めることができる・・・と言いたいところですが、親族間なので、贈与税の問題があり、自由には決めれません。

そもそも、医療法人の社員がまったくの第三者ということはあまりなく、子供ではなくても、叔父だったり、祖父だったりして、その場合でも同じように贈与税の問題が発生します。

原則、税法では資産を時価評価して、そこから負債を差し引いた残りの純資産を持分の口数で割って計算することを示唆しています。

上図のように資産と負債を計算していくのですが、土地は時価評価します。
ということは、かなり純資産の価値は高くなる可能性があります。

その3分の1を、弟に現預金で払い戻せるのか?という疑問が湧きます。
土地や建物は、医療法人がこれからも使い続けるので、売却するわけにはいきません。

それに、現預金や医業未収入金は、買掛金や人件費の支払い、銀行の借金の返済など、運転資金としても必要です。
分割払いで払い戻すことはできますが、一部だけということはできません。

あくまで、出資持分とは社員という地位に紐付いているため、社員を退社するかぎりは、全額を払い戻すことになるのです。

これによって、医療法人の運転資金が減り、経営が不安定になることさえあります。

このように、今までの医療法人の持分は配当できないという制限もあるため、どうしても出資持分の評価が高くなりがちで、相続税の問題は避けられませんでした。

一方、医療法人とは営利を目的にして設立されたわけではないのに、退社や解散するときに、社員が儲かってしまうという現象も起きます。
途中で、退社する社員に残余財産を分配していれば、配当を制限している意味もありません。

そこで、医療法が改正されて、現在、医療法人を設立すると、「出資持分がない」ことになったのです。

出資持分のない医療法人であれば、原則、出資持分は相続財産にはならず、相続税はかかりません。ただ、出資持分のない医療法人であっても、「基金拠出型」と言って、最初の出資金は払い戻す形態を取ることもできます。その場合には、最初に支出した基金が相続財産となり、相続税の対象になります。

それでも、だいたい医療法人を設立するときには、1000万円程度の出資です。

理由は、医療法人に社会保険診療が入金されるのは、2か月後になりますので、最初の運転資金です。それでも基金が大きくなると、登録免許税が増えるため、1000万円前後で始めることが多いのです。

基金が1000万円ならば、そのあと、どれほど医療法人が儲かったとしても、基金拠出型の医療法人の出資持分の相続税の評価額は1000円となります。

基金拠出型ではない「出資持分のない医療法人」であれば、1000万円が相続財産になることすらありません。

ただ、この出資持分のない医療法人を設立するデメリットもあります。
それは、子供に相続させずに、第三者に医療法人を売却することになった場合です。

父親としては、自分の医院や病院を子供に引き継がせたいと思うのは、当然です。
自分が開業して、ここまでやってきた医院や病院は、わが子のようにかわいいものです。
子供が、医師になったのならば、後継者になって欲しいと願います。

ところが最近は、医院経営や病院経営を引き継ぐことに、リスクを感じる子供も増えています。
大学病院に残って研究したり、海外の医院や病院に留学したまま、10年以上も帰ってこない子供もいます。それをずっと待っている訳にもいきません。

医院経営や病院経営は、重労働で、患者に気を使うので、院長は精神的にも疲れます。
70歳を超えて、ずっと医院経営や病院経営を頑張り続けることは不可能です。

子供が継がないと諦めて、医院や病院を第三者に売却する、いわゆるM&Aも増えてきています。

このとき、持分の定めのない医療法人の場合には、持分を売却することができません。

そこで、役員退職金をもらって辞めるという選択肢になります。

ただ、役員退職金を支払う金額に限度もあるので、役員報酬とセットになるのです。

つまり、M&Aで売却したけど、そのあと3年ぐらいは引き継ぎで働いてもらい、そのあと退職金で調整するということなのです。

それならば、医療法人にならず、個人事業主のまま、M&Aで売却する方が簡単です。

もしあなたが、自分の医院や病院を子供に引き継がせる気がなく、近い将来、他の医療法人に売却する気持ちがあるならば、医療法人化をしない方がよいかもしれません。

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