医療法人を解散して個人事業主になったり、MS法人を合名会社にするメリット

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2015/08/30
医療法人を解散して個人事業主になったり、MS法人を合名会社にするメリット

医療法人を解散して個人事業主になったり、MS法人を合名会社にするメリット

院長先生が医療法人を運営していて、そこからかなり多額の報酬をもらい続けていることがあります。

生活費、特に子供の教育費のため、自宅の住宅ローンの返済のため、株の投資を行っているため、海外移住に向けて、海外の不動産を買っているためなど、院長先生の個別の事情もあるかもしれません。

私の顧客では、院長先生の父親が医療法人の前理事長で、その相続税がかなり多額になり、それを延納するために、報酬を多くもらっていたケースもありました。

また、医療法人が医院経営や病院経営で使用する建物や土地を所有していたが、土地の時価が大きく下がることもあります。
特に、医療法人は郊外で開業していることも多く、人口が減少していく影響を大きく受けることもおおいでしょう。

このような場合、医療法人が銀行などから借金をしていると、債務超過に陥っている場合があります。

債務超過とは、簡単に言えば、「資産-負債」がマイナスの状態です。
純資産の部分、つまり出資金(基金)はあっても、無視します。
通常、債務超過を計算するときには、資産も、負債も時価で評価します。

そのため、毎年、作成している決算書では時価で評価しないため、見た目は債務超過ではないが、実質は債務超過になっていることもあります。

医療法人の貸借対照表

この状態で、院長先生の相続が発生したとします。

持分の定めのある医療法人であれば、院長先生の持分はマイナスとはならず、最低金額のゼロ円となります。
持分の定めのない医療法人であれば、院長先生の持分はなく、やはり他の相続財産、例えば、個人の預金、自宅の土地や建物、生命保険などの合計が増えることはありません。

院長先生は、これを聞いて、
「それなら、それで、いいんじゃないのか?」
と考えるかもしれませんが、それは間違いです。

というのも、もしこれが医療法人ではなく、個人事業主として医院経営や病院経営を行っていれば、債務超過の部分はマイナスの財産として、相続財産から控除することができるのです。

しかも、相続税を計算するときには、医院や病院の建物は、固定資産税評価額、土地は、路線価と、先ほどの時価よりも低い金額で評価することができるのです。

つまり、債務超過金額は、時価で資産と負債を計算するよりも、大きくなるのです。

 

ところが、医療法人のままで相続が発生すると、この債務超過の部分は切り捨てになってしまうのです。
当然、銀行からの借金に関しては、院長先生が連帯保証人になっているはずです。

相続が発生すると、この連帯保証人としての地位が、相続人に自動的に、法定相続分で引き継がれてしまうのです。

もし、そのあと、医療法人がこの借金を返済できないとなれば、銀行は相続人個人の財産を差し押さえる権利を持ってしまうのです。
それなのに、相続財産から債務超過部分をマイナスできず、相続人は、高い相続税も支払わなくてはいけないことになるのです。

そのため、相続税の節税対策のためには、債務超過である医療法人は解散して、個人事業主として、医院経営や病院経営を行うという選択肢もあるのです。

 

ただし、医療法人から個人事業主成りする場合には、手続きが煩雑で、期間も数か月かかります。
それ以外にも、下記のことに注意する必要があります。

(1)社員をゼロにする

医療法人を解散する理由として、社員全員が退社することで、「社員の欠乏」という状態を作れば、都道府県知事の認可は必要ありません。
社員とは、医療法人で働く社員のことではなく、議決権を持つ株主のことです。

持分の定めのある医療法人は当然のこと、持分の定めのない医療法人であっても、議決権を持つ社員は存在します。
この場合には、都道府県知事に、「解散届」を提出することで、解散することになります。
ただし、都道府県によっては、医療法人の解散に制約があることも多いため、事前に相談するのがよいでしょう。

(2)債務超過の免除

債務超過の部分については、院長先生が銀行からお金を借りて、建物や土地、医療機器などを買取るまではよいのですが、最後に債務超過に該当する借金が残ります。

これは、院長先生が肩代わりしてあげるのですが、医療法人を清算させるときに、債務免除することで、債務免除益を計上します。

ただ、この債務免除する時期を間違ってしまうと、多額の法人税が発生してしまうことがあるため、税理士などの専門家に相談して、手続きを進めてください。

 

次に、医療法人ではなく、院長先生が、ずっと個人事業主として医院経営や病院経営を行っている場合には、MS法人を設立していることが多いはずです。
MS法人の役員に妻や子供を就任させて、個人事業主の利益を移転させることで、節税対策になります。
このMS法人は、圧倒的に、株式会社で設立していると考えられます。

一昔前は、有限会社があったので、特例有限会社として残っていることも多いかも知れません。
どちらにせよ、MS法人が株式会社であり、これが債務超過の場合にも、医療法人と同じ問題が発生します。

そもそも、株主は院長先生ではなく、妻や子供だというケースもあり、「相続税の節税対策とは、切り離している」と言うかもしれません。
ただ、MS法人の借金に関して、院長先生が連帯保証人になっていれば、同じことです。

つまり、MS法人が債務超であれば、解散して、借金を院長先生個人に付け替えることで、相続税の節税対策になるのです。
MS法人の解散は、2ヶ月程度で終了でき、手続きもそれほど煩雑ではありません。
ただ、債務免除益を計上する時期は、医療法人と同様に、注意が必要です。

 

MS法人は、すでに取引先が多い、もしくはコンタクトレンズを売っていたり、医院や病院の中で小売業を運営していることもあるかもしれません。
借りているビルや取引先との契約を、院長先生個人に変更するのは難しいという場合もあるでしょう。

そのときには、株式会社を合名会社に組織変更して、院長先生が無限責任社員になります。

相続税法では、
「合名会社の財産で、借金を返済できない場合には、無限責任社員が死亡した時には、その無限責任社員の負担すべき持分に応ずる会社の債務超過の金額は、相続税の計算上では、債務として相続財産から差し引くことができる」
とされています。

ただ、院長先生が個人事業主であっても、MS法人と多額の取引があると、その役職員になることができません。
当然、無限責任社員になることもできません。

そのため、個人事業主として医院や病院との取引があった場合には、その金額を減らすことが必要となります。

なお、無限責任社員が退社しても、本店所在地の登記所で、退社する登記をした以前に発生した借金に関しては、責任を負うことになります。

 

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