個人医院の土地は、後継者に貸した方がよいのか、売却した方がよいのか、それとも、贈与した方がよいのか? – その2

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2012/03/15
個人医院の土地は、後継者に貸した方がよいのか、売却した方がよいのか、それとも、贈与した方がよいのか? – その2

前回は、あなたが、個人で医院経営を行っていた場合の事業承継の方法について考えました。結論としては、あなたの医院の建物を事業承継者(ここでは、子供と仮定します)に売却するのが、一番よい方法と提案しました。

前回の記事はこちらから

贈与もできますが、医院経営では、建物自体もRCや鉄骨造りで、内装に投資する金額も大きいため、贈与税が高くなってしまいます。そこで、建物を売却するという方法を採用することになります。ただ、医院や病院の建物だけを売却することができるのでしょうか?

実は、医院や病院の建物だけを売却することは、
普通できません。

え?と思わないでください。下記の図を見てください。

子供の医院や病院の建物を売却すると、借地権がそれと一緒に移動してしまうのです。

土地の所有者が、建物を利用している人を、自分の意思で追い出して、勝手に建物を壊すことはできません。その土地を利用する権利を借地権と呼んでいるのです。それでも、土地の所有者は、院長のままなので、登記簿謄本からは、借地権者が移転したことが、分かりません。

一方、医院や病院の建物の名義は、売却するので、子供に変わります。このとき、何もしなければ、借地権は子供のものと推定されてしまいます。とすれば、借地権は院長と子供が売買していないので、贈与されたことになってしまうのです。

それを避けるためには、借地権も、建物と一緒に売買するしかありません。ただ、そもそも、土地の価格が高いので、医院や病院の建物だけを売却するという方法を採用したはずです。

では、どのような方法を使っても、医院や病院の建物だけを子供に移転させ、借地権を含めて、土地は院長の所有のままということはできないのでしょうか?

実は、子供が、医院や病院の建物を使うことに対して、院長に地代を支払わなければ、借地権が発生しません。

そして、「借地権の使用貸借に関する確認書」を税務署に提出します。これによって、院長から子供に、医院や病院の敷地の借地権部分を贈与したとはみなされないことになります。

ところが、この方法にも問題があります。それは、相続税です。

結局、医院や病院の建物は、時間が経過すれば劣化するため、価値は減っていきます。ところが、土地の価格は、下がることもありますが、上がることもあるのです。

借地権が発生しないということは、土地のすべての価値が院長に帰属することを意味するのです。つまり、相続が発生すれば、土地全体が相続税の対象になります。

それならば、無理をしてでも、借地権を子供に売却してしまうという方法があります。底地も一緒に売却するよりは、安い価格になります。

例えば、借地権割合が60%の地域ならば、底地40%の部分のお金は節約できます。(国税庁がホームページで公表している路線価図で、誰でも、全国の借地権割合を調べることができます)

そのあと、子供が、院長に地代を支払うのです。先ほどの「借地権の使用貸借に関する確認書」は、税務署に提出しません。これにより、借地権が発生するので、院長の財産が減り、相続税の節税対策になります。

ただ、この方法にも、問題があります。

子供は、医院経営や病院経営で使うための敷地に対して、地代を院長に支払い続けます。そのとき、この地代は、下記の計算式を使わなくてはいけないと決められているのです。

地代の金額 = 土地の相続税評価額(または、過去3年間の平均) ×6%
(※なお、地代は、3年以内に1度は見直しをすることが、原則です)

ということは、子供から、院長が地代を受け取り続ければ、そのお金が貯まり、結局、相続税は高くなってしまうかもしれません。1年間で6%もの地代を支払うのであれば、17年間で相続税評価額と同じ金額に達してしまいます。

あなたが、これから20年以上も長生きするならば、地代などもらわない方が得だったことになるでしょう。

ただ、ここで、考えて欲しいのは、
院長の相続税のことだけではなく、
税金には、医院経営や病院経営で、
毎年、子供が支払う所得税もあることです。

地代を支払うことで、子供の医院経営では、経費として認められ、所得税を節税できることになります。子供が中心となって、医院経営を行っているため、所得税の税率は高くなっているはずです。

一方、医院や病院の事業承継を行なうことが前提なので、あなたは、院長という役割を引退して、毎日、診察を行なわなくなり、ドンドン給料が少なくなっていくはずです。あなたの所得税の税率は、かなり低くなっている中で、地代を受け取ることになります。

ということは、下記のような関係であれば、毎年の所得税率が節税できます。

子供の医院経営による所得税率 > あなたの給料の所得税率

この節税できた所得税の合計金額と、相続税のシミュレーションを行い、医院経営や病院経営の事業承継するときに、

【1】借地権も地代もゼロにするのか

【2】借権を発生させて、地代を支払うべきか

を決めるべきです。

そして、そのシミュレーションの結果、借地権を発生させて、地代を支払うという結論になったならば、最後に1つだけ、注意点があります。

それは、医院や病院の建物だけを子供に売却するのは、子供が医院開業するときに、内装・外装のリニューアルをしたり、医療機器をあなたから買ったりするのに、お金を使うため、土地を買うお金がないという理由でした。

そのため、最初に、子供が借地権を買うお金が用意できないという根本的な問題があるかもしれません。

その場合には、あなたが、子供にお金を貸し付けて、医院や病院を事業承継して、子供の所得が高くなったら、返済してもらうという契約書を作成して、売買を行なってください。

さっそく、建物は子供に売り、そのときに、借地権も一緒に売却すべきか、シミュレーションを行なってみてください。

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