個人医院の土地は、後継者に貸した方がよいのか、売却した方がよいのか、それとも、贈与した方がよいのか? – その1

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2012/03/02
個人医院の土地は、後継者に貸した方がよいのか、売却した方がよいのか、それとも、贈与した方がよいのか? – その1

個人医院の土地は、後継者に貸した方がよいのかあなたが、何十年間も医院経営を行ってきて、息子が大学病院で働いていて、その子供(あなたにとっては孫)が、小学校に入学する年齢になる頃に、事業承継の話が持ち上がります。

だいたい、このときに、息子は40歳前後になっているはずです。

息子としても、大学病院の仕事は面白いけれど、年中忙しすぎるし、このまま、体力的に働き続けられるのか、そもそも大学病院に残れるのか、疑問を持ち始める年齢です。

それに、子供の教育も考えると、生活も住む場所も落ち着きたいと考えるようになります。

あなたも、息子が40歳とすれば、70歳前後になりますから、そろそろ、毎日、朝から晩まで、診療を行なうのは大変です。それで、あなたと息子が話し合うと、お互いの意見が一致して、事業承継の準備を始めることになります。

このとき、個人医院、つまり個人事業主で医院経営を行っている場合と、医療法人として病院経営を行っている場合では、事業承継の方法が違ってきます。ここでは、個人医院の場合に、焦点を当てて考えてみましょう。

最初は、息子があなたの医院経営を手伝うので、あなたが、事業主のままです。このとき、あなたと息子が、生計一であれば、息子に支払う給料は、確定申告で経費になりません。生計一とは、財布が一緒ということです。

その場合には、青色専従者として、税務署に、息子に支払う給料を事前に届けていなければいけません。その届けた金額の範囲内でしか、経費にならないのです。

私の経験では、妻が後継者になる場合は生計一なので、必ず提出していますが、孫も生まれて、自分の生活がある息子と生計一ということはありえませんでした。

実際には、息子に支払った給料は、
あなたの確定申告で経費になるはずです。

息子に給与として支払う金額は、他のアルバイトの医師と同じテーブルで計算されていたり、医師の平均的な給料水準であれば問題にはなりません。

では、明らかに高額な給料の場合には、どうなるのでしょうか?

息子が医院経営に携わり、経営の意思決定を行なっているならば、その分の給料を上乗せしたり、経理を手伝っているならば、その作業の分をプラスするは問題ありません。

その給料にした合理的な理由が客観的に分かれば、いくらでもよいのです。ただ、何の理由もなく高額な給料を支払っていると、経費と認められないことがあるので、注意が必要です。

そもそも、息子に給料を支払うことは得なのでしょうか?

実は、給料には、概算経費というものが認められています。これは、サラリーマンでも、個人事業主と同じように、家で仕事をすることもあり、そのために、事務用品やパソコンを買ったりします。

それらをまったく、経費として認めないのは、個人事業主と比べて、不公平です。

ただ、サラリーマンも全員が確定申告することになったら、税務署は対応できません。そこで、税務署が、給料に算入してもよい経費を決めているのです。

給料の額

経費として認める金額

1,800,000円以下

収入金額×40% + 
(650,000円に満たない場合は650,000円)

1,800,000円~3,600,000円以下

収入金額×30% + 180,000円

3,600,000円~6,600,000円以下

収入金額×20% +  540,000円

6,600,000円~10,000,000円以下

収入金額×10% + 1,200,000円

10,000,000円超

収入金額× 5% + 1,700,000円

医院経営で使っている経費は、すべて院長の個人事業主としての確定申告書で経費として計上しているはずです。

そのため、息子個人で実際には使っている経費がなかったとしても、概算経費が認められるので、二重に経費が認められる部分があり、得になるのです。

だから、息子だけではなく、妻(配偶者)に給料を支払っても、同じようにメリットがあります。その場合には、妻が働いている実態がなくてはいけません。

そのうち、手伝ってもらっていると、だんだんと、息子が主に診察を行なうようになります。最後は、医療法上の許認可を変更して、息子が個人事業主として開業し、あなたは廃業して、雇われるという形になります。

あなたが給料をもらえば、同じように息子の確定申告で経費となり、得です。それで、あなた(元院長)は、医院や病院に週1回から2回程度の診察を行なうぐらいになります。個人医院を息子に事業承継させるのですから、これが好ましい形です。

ところが、息子と事業主が入れ替わるときに、2つの問題が発生します。

【1】医療機器等や看護師の帰属

あなたの個人事業主としての未収の診療報酬や未払の水道光熱費は、息子ではなく、あなたが受け取りと支払いを行なって清算すれば、問題はありません。

ところが、医療機器となると、高額なので、単純に息子の名義にすると、贈与税がかかってしまいます。そこで、普通は、確定申告書に記載されている金額で売買することになります。(減価償却費の累計額を控除した金額が、確定申告書に記載されています)

売買契約書を作成すること、そして、息子からあなたへの銀行振り込みの資料は必ず、取っておいてください。

次に看護師や医療事務の社員ですが、院長の個人医院は廃業届出を出すため、一度、退職してもらい、息子の個人医院で再雇用となります。

このとき、退職金規程があれば、支払う義務が院長に発生します。

私の今までの経験からすると、院長の相続税の節税対策を考えると、その場で支払って、清算する場合がほとんどでした。ただ、院長の確定申告が、その退職金で赤字になったとしても、これは、息子には引き継がせることができません。(通常の確定申告では、翌年の黒字と通算できます)

そこで、看護師から同意を取り、息子に退職金という債務を引き継がせる場合もあります。そのときには、さきほどの医療機器の支払いと相殺とする契約書を作成することになります。

なお、妻などが働いていた場合には、生計一であるため、退職金を支払うことはできません。

【2】土地と建物の取り扱い

あなたが、70歳ぐらいで、何十年間も医院経営を行ってきたとすれば、だいたい、医院や病院の土地と建物を所有していることが多いはずです。医院や病院の土地と建物をどのように扱えばよいのか、迷う人が多いようです。

まず、一番簡単な方法は、息子が、医院の建物を借りることです。息子と賃貸借契約を結んで、家賃を支払うのです。このとき、有償にすると、あなた(元院長)は、賃貸収入に対して確定申告が必要となります。そこで、無償ではダメなのか?という質問をよく受けますが、実は、有償の方が得なのです。

というのも、医院や病院の建物や内装の減価償却費が使えるからです。そして、息子の医院経営の確定申告では、賃料が経費になります。無償であれば、減価償却費の経費は誰も計上できません。

ただ、医院の建物に対する家賃が安すぎると、差額が父親から息子への贈与となり、贈与税が課税されてしまうので、注意してください。周りの相場を調べて、それと同じ水準にすることが必要です。

この場合、他の問題が発生します。それは、相続税です。

医院や病院の建物は大きいことが多いため、家賃が高額になりがちです。そのまま、父親に家賃を支払い続けると、相続のときに、その貯まった財産に対して、びっくりするぐらい高額な相続税がかかることになります。しかも、医院や病院の建物と土地は、父親のものなので、それにも相続税がかかるのです。

そこで、次に考えるのは、医院や病院の建物と土地を息子に売却する方法です。このとき、いくらで売買すればよいのかという質問をよく受けます。相続税の節税対策を考えれば、できるだけ安く売却したいと考えるでしょう。

私は、それほど費用もかからないので、不動産鑑定士が評価した価格で、医院や病院の土地と建物を売買することを、今まで勧めてきました。

それで、税務署から指摘されたことはありません。この方法によれば、今後、息子が、あなた(元院長)に医院や病院の建物についての賃料を支払う必要がなくなります。

それに、あなた(元院長)には、売却したお金が入るので、それで、投資用のマンションを買う、生命保険に加入するなど、相続税の節税対策を打つことができます。ただ、これを実行するためには、2つのハードルがあります。

1つ目は、大学病院で働いてきた息子に、医院や病院の建物と土地を買えるほどのお金が用意できるかということです。そのため、銀行から借金をして、買うことになるでしょう。とすれば、将来、銀行に支払う金利が、息子の医院経営を圧迫することになるかもしれません。

2つ目は、あなた(元院長)が所有する医院や病院の土地が、先祖代々からの土地、または相当、昔に買った土地であれば、売却益が発生して、それに20%の所得税がかかってしまうことです。これらを解決するためには、贈与という方法もあるのですが、土地の価値は高いため、贈与税もかなり高くなってしまいます。

そこで、私が今まで一番多く行なってきた方法が、医院や病院の建物だけを息子に売却する方法です。

売買価格は、あなたの(元院長)確定申告に記載されている金額(減価償却費の累計額を差し引いた金額)でよいでしょう。

減価償却してきているので、大分、安くなっていると思いますので、建物だけならば贈与してもよいかもしれません。そして、息子が、あなた(元院長)に地代を支払うのです。

このとき、医院や病院の土地に対する地代となるので、それほど、高い必要はありません。

ただ、この方法も大きく分けて2つの方法と、それぞれに注意点があります。この続きは、「その2」でお話します。

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