何が、相続財産になるのか、かなり難しい話になります。

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2014/11/30
何が、相続財産になるのか、かなり難しい話になります。

前回からの続きで、今回は、相続財産についてです。

あなたは、最初に何が相続財産になるのか、知っていますか?

何が、相続財産になるのか、かなり難しい話になります。「院長先生が住んでいる自宅、医療法人の持分、個人医院であれば、医療機器、それに個人で投資していた上場株、アパート・・・・・あとは先祖代々からのお墓でしょ」

そうです。
確かに、上記のものは、相続財産となります。でも、それ以外にも、他に相続財産となるものがたくさんあり、しかも複雑なんです。

まず、民法で決められて、遺産分割の対象となる相続財産と、相続税を計算するときの相続財産は、まったく違うということを知ってください。

民法の相続財産をもとに、親族間で話し合うのですが、まったく別の相続財産をもとに、相続税を計算して相続人に振り分けるため、遺産分割協議がまとまらない原因にもなっているのです。

【1】民法の相続財産

先ほどの院長先生が住んでいる自宅、医療法人の持分、アパート、上場株、お墓など、すべて民法上の相続財産になります。
あと、民法上の相続財産として重要なのは、特別受益です。

特別受益とは、生前にお金を贈与してもらっていたら、それが該当します。

何が、相続財産になるのか、かなり難しい話になります。

先に、院長先生の妻(子供から見たら母親)が亡くなっていて、子供2人だけが相続人としましょう。
ここで、院長先生が亡くなると、そのときに1億円の相続財産が残っていたとします。
院長先生が生前に、医院や病院を継ぐ子供に1億円を贈与していたとすると、それを加味して、相続財産となり、これをもう一人の子供と話し合って分割します。

そのため、相続人が子供2人とすれば、法定相続分は2分の1ずつですので、医院や病院を継ぐ子供は、まったく相続財産をもらうことができないことになります。
特別受益を加味して上で、遺産分割の話し合いをしなければいけないのです。
子供だけではなく、医院を継ぐ子供の子(院長から見ると孫)に贈与していても、同じです。

「この特別受益には、時効があるのですか?」と聞かれることがあるのですが・・・

特別受益に時効はありません。

そのため、この1億円が20年前に贈与されていたとしても、10年に渡って、毎年1000万円ずつ贈与されていたとしても、すべてが特別受益となり、遺産分割の対象となってしまうのです。
遺産分割でもめると、兄は海外留学しているから特別受益がある、妹はマンションを買うときに贈与してもらったはずだ、などと言い合いになり、相続財産が決まらずに裁判が長引くのです。

次に、相続財産とならないと勘違いするのが、名義貸しの財産です。

院長先生が、孫の名前の通帳を作り、そこに1000万円を預けていたり、孫の名前で生命保険に加入していると、それは名義預金、名義保険ということで、相続財産となります。
孫の通帳であれば分かり易いのですが、配偶者である妻の通帳に、かなりの金額が残っているときも名義預金なのですが、少し分かりづらいお金になります。

妻は、院長先生から生活費をもらっていて、節約して余ったお金を自分の通帳に入れたんだから、自分のものだと主張するかもしれません。それでも、専業主婦である妻の通帳に1000万円ものお金があれば、名義預金というしかありません。

ただ、院長先生の妻が医院経営や病院経営を手伝うことも多く、ずっと、給料をもらっていて、それを貯めていたということであれば、名義預金にはなりません。
医院や病院を継いだ子供がいる場合でも、事業資金として、院長がお金を貸したりしていると、それは名義預金または、その子供に対する貸付金として相続財産となります。

このとき、妻や子供が、「そもそも、これらのお金は院長先生(父親)から、生前に贈与されたものだ」と主張することもあります。
ただ、生前贈与されていたとしても、それは特別受益となり、結果的に相続財産として合算されるので、無駄な主張となります。

妻が医院経営や病院経営を手伝ってもらっていた給料以外は、院長先生からもらった財産は、その名義に関係なく、すべて相続財産となると覚えておいてください。

そのため、生前に院長先生を含めて、財産の分け方を相続人で話し合うときには、すでに贈与したお金や名義預金も相続財産に含めておかなければ、無駄ということです。
つまり、相続が発生してから、新しい相続財産が、ドンドン出てくれば、それが争いの元になるのです。

このとき、「院長先生が孫に贈与したお金なんて、他の相続人に分かるはずがない」と主張する先生もいるのですが、それは、次の相続税法上の相続財産が何かを読んでください。
バレる可能性が高いことが分かるはずです。

【2】相続税の相続財産

こちらも、最初に言っていた、院長先生が住んでいる自宅、医療法人の持分、アパート、上場株、お墓などが、相続税法上の相続財産となります
ただ、お墓は価値がゼロ円として、相続税がかからないと決まっているため、相続財産ではないと言うこともできます。

これ以外に、相続税がかかるものが、大きく3つあります。

1つ目が、生命保険金です。

生命保険の受取人は、契約書で相続人の誰かに指定しておくことが通常です。
このとき、受取人を院長先生が決めているので、遺産分割の対象になりません。
判例では、生命保険金は特別受益にも当たらないとされているため、民法上の相続財産にはならないのです。

ただ、この生命保険金には相続税がかかります。
そのため、相続税を計算するときには、一度、相続財産に入れ戻すことになります。
つまり、相続税の申告書には記載されるため、他の相続人の知るところになります。

なお、相続税の申告書は、相続人全員が押印して、税務署に提出することになります。

2つ目が、医療法人からの退職金です。

医療法人で退職金規定を作成しておけば、院長先生が亡くなったときに、退職金を支払うことができます。
退職金には相続税の非課税枠(相続人×500万円までは、税金がゼロ)もあり、かつ所得税もかなり安いため、支払うと節税になります。
死亡が原因で支払う退職金の受取人も、退職金規定で指定しておけば、遺産分割の対象にはなりません。

ただ、やはり相続税を計算するときの相続財産には組み込まれてしまいます。

3つ目が、名義預金と3年以内に贈与された財産で、これは民法の相続財産と一部だけ、かぶります。

名義預金は、民法の相続財産を特定したときと同じです。
そして、贈与は、相続が発生した日から3年以内のものだけが対象となります。
民法とは違い、期限が決まっているのです。

ということで、3年以内に行われた、相続人への贈与はすべてなかったものとして、相続財産として相続税を計算し、すでに支払っている贈与税があれば、差し引くことになります。

結果、3年以内に相続人に贈与された財産があれば、相続税の申告書に記載するため、他の相続人の知るところになるのです。
3年以内にかなりの金額が贈与されていれば、その前も贈与されているはずだと、普通は考えるでしょう。

このとき、あくまで相続人への贈与だけですので、院長先生が孫に贈与していた場合には、対象にはなりません。

孫への贈与は、相続税の申告書に、一切記載しないため、他の相続人が気づきにくい財産となります。
ところが、相続税の税務調査が入ると、孫への贈与が名義預金ではなかったのかと追及されてしまうのです。

その事実を孫が知らない場合は、当然、贈与は成立していませんが、贈与契約書を作成していなかったり、贈与税を支払っていないと、贈与とは認めてくれません。
「贈与税の時効は、最長で7年なので、もう過ぎているはずだ」と主張する先生もいますが、そもそも贈与されていなくて、名義預金であれば、時効は関係ありません。

問題は、贈与が無効にされてしまうことだけではなく、孫への贈与が、他の相続人にバレてしまうことです。
名義預金となれば、遺産分割の対象となります。

税務調査が入るまでには、相続が発生してから数年は経つため、名義預金の金額が大きいと、そのときになって初めて他の相続人が知ったとすれば、気分はよくありません。
しかも、孫のへの贈与が無効とされて、それが相続財産に組み入れられたら、他の相続人の相続税も上がってしまうことになります。これは、相続税が累進課税だからです。

つまり、税務調査で、新しく名義預金が見つかったことで、それを1円も相続しない相続人も追加で相続税を支払うことになってしまうのです。

今までずっと仲良くやってきたのに、この段階まできて、遺産分割でもめるのは、もったいない話です。
孫も巻き込まれてしまい、良い気分ではありません。

これを回避するためには、院長先生が孫に贈与したことをハッキリと宣言して、それを加味して財産をどのように分けるか、決めておく必要があります。
そして、税務調査で否認されないように、贈与契約書を作成して、お金の振込みも銀行を通じて行っておきましょう。

このとき、「少しでもよいので、贈与税を支払うように贈与をした方が、税務署は、贈与を認めてくれるのではないか?」と聞いてくる院長先生もいますが、そんなことはまったく関係ないので、無駄な贈与税を支払う必要はありません。

もちろん、院長先生の財産が多ければ、贈与税を支払ってでも、子供や孫に、生前贈与しておく方が、相続税は節税できることは、確かです。

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