今から、相続税がかからない医療法人に移行することができるのか?

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2014/10/20
今から、相続税がかからない医療法人に移行することができるのか?

持分の定めのある医療法人(経過措置型医療法人)を設立していて、院長が社員(株式会社の株主に当たる)として持分を所有していると、それに対して相続税がかかります。
一方、持分の定めのない医療法人であれば、相続税はかからず、解散しなければ、ずっと子、孫に引き継がせることができます。

そのため、事業承継していくことを考えると、持分の定めのある医療法人であることが、デメリットになります。

一方、M&Aで第三者に売却するとなると、持分が売却できる、持分の定めのある医療法人の方が、所得税が安くなるメリットがあります。

 

ここでは、親族に事業承継していくことを前提に、持分の定めのある医療法人が、持分の定めのない医療法人に移行できないかを考えます。

もし移行することができれば、今まで頭を悩ませてきた医療法人の持分の評価が高くて、子や孫が相続税を支払うために、税務署に延納を申請して利子税を支払ったり、銀行から莫大な借金を抱えて、何十年にも渡って返済していくことがなくなります。

医療法人がずっと引き継がれて、医院経営や病院経営が存続できるのであれば、そこで働く看護師や社員にとっても、患者にとっても、よいことです。

 

では、どうすれば、持分の定めのない医療法人に移行できるのでしょうか?

実は、手続きは簡単で、医療法人の定款を変更して、院長の持分を放棄するだけで、移行できるのです。

ところが、院長が自分の持分を放棄すると、他の社員(ほとんどの場合、配偶者である妻、子、孫、親戚)の持分の評価が上がってしまいます。
院長から、無償で財産が移転しているため、贈与されたとみなされて、贈与税がかかってしまうのです。

特に、院長の持分が高いことが多く、例えば、院長が80%、妻が10%、長男が10%とすれば、80%分が贈与されたことになります。
基本的に、「相続税率<贈与税率」となるため、贈与税を支払えません。

 

ただ、そもそも持分の定めのない医療法人の制度を一般化したのは、医療法人を相続税でつぶさずに、存続させることが目的でした。
そこで、他の社員に贈与税をかけない特定医療法人という制度が用意されています。
これは生前に持分を放棄した場合だけではなく、相続が発生してから、院長の持分を相続した妻や子が、申告期限(10ヶ月以内)までに認定医療法人になれば、相続税の支払いも猶予することができます。

認定医療法人になっている間に、持分の定めのない医療法人に移行してしまえば、贈与税も、相続人の相続税も免除されることになるのです。

今から、相続税がかからない医療法人に移行することができるのか?

 

認定医療法人になるためには、移行に関する計画(移行計画)を作り、厚生労働大臣に提出するだけなので、手続きは難しくありません。
ただし、注意すべきことがあります。

【1】持分を放棄する社員の同意

社員総会において決議された移行計画、社員(株式会社の株主に当たる)の名簿とその放棄の見込みを記載した書類を添付する必要があります。
結局、持分の定めのない医療法人になれば、解散したときに、社員へ残余財産が返還されなくなります。

医療法人で働いている院長は、給料や退職金を受け取ればよいですが、社員の中には、単純に自分の持分を放棄するだけとなる親戚などがいれば、同意しないこともあるでしょう。

認定の日から3年以内に全員が放棄しないと、この認定は取り消されてしまいます。
取り消された瞬間に、贈与税、または相続税がかかります。
相続のときには、3年間という期限が決まってしまいます。

そこで、院長の生前に話し合いをして、全員が放棄できる合意を取り付ければ、認定医療法人が取り消されてしまう事態にはなりません。

【2】医療法人に贈与税がかかる

認定医療法人になって、社員全員が持分を放棄すれば、誰にも贈与税も、相続税もかかることがありません。
ところが、社員全員が持分を放棄したことで、社員から医療法人に財産が贈与されたとみなされて、贈与税がかかってしまうのです。

通常は、贈与税は個人にしかかかりませんが、ここでは、医療法人という法人に対して贈与税がかかるのです。

ではこのとき、贈与税は、どのように計算されるのでしょうか?

 

医療法人の贈与税の評価は、1億円と計算されたと仮定して、全員が持分を放棄した。院長が80%、配偶者の妻が10%、子の長男が10%を保有していた。

【1】 院長の持分(80%)の評価 8,000万円
( 8,000万円 - 110万円 )× 50% - 225万円 = 3,720万円

【2】 妻の持分(10%)の評価 1000万円
( 1,000万円 - 110万円 )× 40% - 125万円 = 231万円

【3】 長男の持分(10%)の評価 1000万円
( 1,000万円 - 110万円 )× 40% - 125万円 = 231万円

合計 【1】 + 【2】 + 【3】 = 4,182万円

 

実際には、医療法人の持分の評価は1億円を超えることが、ほとんどだと思います。
というのも、持分の定めのある医療法人は、第5次医療法改正の前に設立されているため、設立されてから、かなりの時間が経っているはずだからです。

それでも、医院経営や病院経営では、銀行から借金をして、建物を作ったり、医療機器に投資するので、医療法人に利益が出る仕組みになっています。
医院経営や病院経営の資金繰りが苦しくても、医療法人の利益が出れば、自動的に、院長の持分の評価は上がっていくのです。

とすれば、まだ評価が安いうちに贈与税(ここで計算されたのは、約4,000万円)を支払って、相続税の問題を解決してしまうという考え方もあると思います。

税金が高額となるので、すぐに意思決定はできないかもしれません。
一度、コンサルタントに相談して、評価してみてもよいでしょう。

 

最後に1つだけ、実は、社員全員が持分を放棄したときに、贈与税も、相続税もかけないという制度があります。
それは、下記の4つの要件を満たすことが、前提となります。

【1】医院経営や病院経営の運営組織が適正で、医療法人の役員等(社員は関係ない)の親族割合が、現在も将来も3分の1以下であること

【2】贈与する社員やその親族、MS法人などに、医療法人が特別の利益(貸付や社宅を含む)を与えないこと

【3】解散時の残余財産は、定款により国等に帰属すること

【4】医院経営や病院経営で、法令違反、隠ぺい、仮装(粉飾決算)、公益違反等がないこと

医療法人の持分を所有する社員が放棄するという同意が取れた段階で、認定医療法人になり、そのあと、3年をかけて、上記の要件を満たす医療法人に変われば、贈与税も、相続税も回避できるのです。

それでも、この制度を使える医療法人は、ほとんどないと思います。
というのも、上記の4つの要件を満たす医院経営や病院経営は、贈与税や相続税を回避するときだけではなく、将来もずっと守らなければいけない条件だと定められているからです。

あなたが、自分の医療法人を子や孫、親戚に継がせたいと考えているならば、早いうちに、贈与税を支払う前提で、一度、社員全員の持分を放棄することを検討してみてください。

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