金融円滑化法が廃止されましたが、医院経営や病院経営に影響があるのか?

住所
医療関連のコンサルティング
医院経営/病院経営コンサルティング > 資金調達により医院・病院の資金繰りを改善する > 金融円滑化法が廃止されましたが、医院経営や病院経営に影響があるのか?
2013/05/20
金融円滑化法が廃止されましたが、医院経営や病院経営に影響があるのか?

金融円滑化法の廃止は医院経営に影響があるか?この間の3月末日に、「金融円滑化法」は延長されなかったことが、新聞や雑誌で騒がれています。

これは、リーマンショックのあと、倒産する会社が増えると予想した政府が、

「借りた会社がリスケを申し込めば、元本の返済を一部、もしくは全部の返済を猶予する」

という法律を作って、銀行に通達したことが、始まりでした。
このリスケとは、リスケジュールの訳で、借入金の条件変更を行うという意味です。

あなたが医院経営や病院経営を行っているならば、銀行からお金を借りているはずです。
借りるときに、小さい文字で書いてある金銭消費貸借契約書(いわゆる、借用書のこと)に署名して、実印を押しています。もちろん、この契約書の条件の説明を受けて、納得したうえで押印している・・・でしょう。

その借入金の契約書の条件をよく読んでいる院長先生は少ないと思いますが、

【1】誰が借りたのか(院長先生個人、もしくは医療法人、MS法人など)

【2】返済期間(10年、20年、30年など)

【3】金利の種類(変動金利なのか、10年固定金利なのかなど)

【4】連帯保証人は誰なのか(連帯保証人も、署名押印します)

【5】担保になっている不動産は、何か

と、これぐらいの情報が載っていることは知っているはずです。
そして、この契約書の中に、借入金の返済が滞った場合には、「あなたは、期限の利益を喪失します」という文言が書かれているのです。

院長先生が開業して、医院経営や病院経営を行おうと思い、内装業者や医療機器メーカーから見積もりを取ると、合計1億円だったとします。

大学病院や民間病院で働いていた給料だけでは、1億円というお金は貯金できません。
そこで、銀行の窓口に行って、お金を借りる申請を行うのです。

では、銀行がなかったら、どうなったでしょうか?

あなたは、自分の給料から1億円を貯金するまで、開業できないことになります。
今すぐに、1億円を借りることができるからこそ、医院経営や病院経営が行えて、周りの地域住民にも医療サービスを提供することができるのです。

お金を借りるというのは、時間を買うことであり、大きな利益を受けているのです。

だから、発展途上国では、早く金融サービス、特に銀行の機能を発展させようとします。
銀行が、ドンドン貸付の金額を増やすことで、新しい事業が生まれて、国が発展するスピードが早まります。これを自己資金だけで発展させようとすると、時間がかかりすぎてしまうのです。
この借入金の性質を「期限の利益」と呼びます。

ただし、銀行が「期限の利益」を与えるのは、お互いに契約した条件を守ってくれた人にだけです。守れない人の期限の利益は喪失して、「今すぐ、銀行に元本を全額、返済しろ」となります。

銀行が、無理やり回収しようとすると、担保に入っている不動産を競売したり、借りた個人、もしくは法人の預金を差し押さえることもあります。

「期限の利益を喪失する」と、銀行にお金を回収する権利が発生するということです。

ところが、金融円滑化法では、借りた人が条件を守れずに返済を滞ったとしても、銀行ともう一度話し合い、新しい条件を設定しなおすことで、「期限の利益を喪失させてはいけない」と決めたのです。銀行側のお金を回収する権利を取り上げた、すごい法律です。

ここで、金融円滑法でのリスケとは、「元本の返済期間を延ばすこと」と同じだと考えてください。
もちろん、これでは銀行側だけが損をすることになります。
そこで、リスケを申し込まれて受けた銀行側も、原則、貸倒引当金を積まなくてもよいということにしたのです。

そのため、銀行は自己資本比率を減らさずに、大きな損を出すこともなくなりました。
しかも、元本の返済期間を延ばすだけなので、結果的に、銀行は金利をもらう時期が長くなり、貸し付けた会社が倒産しなければ、儲かることになります。
どちらにとっても、利益が出るように考えた法律でした。

そのため、申し込んだほんとどの会社は、無条件で、リスケが認められてきました。
それも、この間の3月末で終わりました。

確かに、リーマンショックのときにリスケを行わなければ、倒産していた会社も、少し上向いてきた景気の中で、生き延びることができた事例もあるでしょう。

一方、延命しただけで、このあと倒産してしまう会社もあります。

この金融円滑化法は、業種に限らず認められたので、医院や病院でも申し込んだら認められたはずです。
ただ、医院経営や病院経営はリーマンショックの影響を受けなかったのか、リスケを申し込んだ医院や病院を、私は1つしか知りません。

この病院は病棟を大きく作り過ぎたことと、同時に勤務医が不祥事を起こしたことが重なり、患者が減って、収支が合わなくなったことが原因でした。
結局、リスケを行い、今では収支が改善しているため、もうリスケしなくても全然、問題ありません。

このように突発的な事故がない限り、医院経営や病院経営は確実に行っていれば、資金繰りに詰まることはないでしょう。ということは、金融円滑化法を使う医院や病院もほとんどない現状では、この法律が廃止されたことの影響は、ほとんどないと考えられます。

それならば、なぜ、こんな話をしているのか・・・・・将来は、多くの医院や病院が、リスケを申請する可能性があるからです。

政府は全国のベット(病床)の数を減らそうとしています。医療よりも、介護にシフトしていきたいのです。しかも消費税が10%にアップすることで、医院経営や病院経営は今までよりも5%もの利益率の悪化は確実です。(診療報酬に消費税が上乗せできる制度になるとは思えません)

そこで、医院経営や病院経営でも、銀行にリスケを申し込むことがあることを前提に、準備しておくべきです。

え? 金融円滑化法が廃止されたならば、リスケを申し込んだら、医院や病院の期限の利益が喪失して、全額返済の義務が発生するとすれば、準備もなにもないでしょ?

と考えるかもしれません。

確かに、医院経営や病院経営で資金繰りがつまり、実際にリスケを申し込んだときに、銀行が受け入れるかどうかは、分かりません。
それでも、医院や病院を潰してしまうことは、地域の医療サービスがなくなってしまい、患者や住民からの反発も予想されます。

強硬に回収しようとしても、病床がある建物の競売は、原則、できません。
だからこそ、私の予想では、ある程度のリスケは受け入れられると思います。
それでも、銀行によって、態度は変わってきます。

医院経営や病院経営が立ち直るまで、根気強く待ってくれる銀行もありますが、とにかく回収するために、院長先生の持分をM&Aでもよいので売却するように要請する銀行もあるでしょう。
これを見極めなくてはいけません。

そんなの、医院経営や病院経営が順調で、資金繰りにも余裕があるときには分からないでしょ?

そうなのですが、1つの傾向はあります。

それは、あなたの医院や病院の周りには、都銀、第一地銀、第二地銀、信用金庫の支店などがあるはずですが、銀行の規模が大きくなるほど、基本的には態度は冷たくなります。

ただ一方で、都銀のように銀行の規模が大きくなるほど、預金の調達金利が安いので、貸し出す金利が低くなるのです。しかも、信用金庫などは貸し出すエリアに制限があったり、金額の上限も低く設定されています。都銀であれば、全国どこでも、しかも医院や病院に貸すぐらいのお金ならば、ほとんど制限がないと言えます。

そのため、院長先生によっては、

「うちの医院や病院は、金利が安い都銀としか付き合わないんだよね」
「やっと、都銀が付き合ってくれる規模に、うちの医院も成長したよ」

などと言いますが、都銀は規模が大きく、上場会社とも付き合っているので、医院や病院がリスケを申し込んだときは、機械的な対応になるはずです。
地域のうわさも気になりますが、全国で貸付を行っているため、割り切って仕事をしています。

一方、地銀や信用金庫は、地域に密着して、最後まで面倒をみてくれます。

その地域でしか活動を行っていないため、うわさには敏感です。
いきなり、医院や病院を潰すことは、自分たちのためにならないことも知っています。

先ほども言いましたが、預金の調達コストが高いため、どうしても、貸し出しの金利は高くなってしまいます。

それでも、私は、医院や病院は、地銀や信用金庫とも付き合うべきだと思うのです。

都銀と付き合ってはいけないというわけではありません。

それでは、地銀や信用金庫に預金口座を作ればいいのかな?

と聞く院長先生もいますが、基本的に、お金を借りないと、金融機関の顧客にはなりません。
貸出金利が安いという理由だけで、都銀からだけ借りるのではなく、他の金融機関ともまんべんなく付き合うようにしましょう。

また、このような話をすると、「他の銀行と付き合っていることに、プライドが高い都銀は難色を示すのでは?」と聞いてくる院長先生もいますが、そんなことは全くありません。

いろいろな金融機関と付き合ってくれた方が、都銀としても安心なのです。

自分の決算書を見れば、現在、借りている金融機関の一覧が載っていますので、ぜひ、チェックしてみてください。

facebook
twitter
google+