自己負担分を支払わない患者を、ゼロにする

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医療関連のコンサルティング
2012/05/18
自己負担分を支払わない患者を、ゼロにする

昔は、医療費に対する患者の自己負担分は、今よりもかなり低い割合でした。ただ、現在は、下記のようになっています。

区分

負担割合

0歳 ~ 小学校就学前の乳幼児

医療費の2割

小学生 ~ 69歳以下

医療費の3割

70歳 ~ 75歳未満

医療費の2割

この表で、「0歳~小学生就学前の乳幼児」の区分に当たる負担割合は、地域によっては無料であったり、1回200円程度を上限としていたりすることが多いようです。

また、「70歳~75歳未満」の区分に当たる負担割合は、平成25年3月31日までは1割負担のままとなっていますし、もともと現役並みの収入がある人は、3割負担となっています。

どちらにしても、昔に比べると医療費に対する患者の自己負担は増えていますし、これからも法律が改正されて増え続けることは確実です。

とすると、この自己負担分を支払わない患者が増えると、医院経営や病院経営の資金繰りは悪化するのです

これは、笑いごとではありません。

すでに自己負担分を支払わない患者が多すぎるという理由で、救急の患者の受け入れを止めてしまった病院も知っています。

それだけではありません。

「前回の自己負担分を、まだ支払ってもらっていないんですけど」
「また、あの自己負担を支払わない患者が来てるよ」
「窓口で、15分ももめている患者がいるんですけど」

 

これらは極端な例ですが、実際にあるのです。こんな患者が増えると、看護師の士気にも悪影響です。

それに、窓口で自己負担を支払わない患者がいると、他の患者もいい気分はしませんし、不公平だと感じるでしょう。自己負担を支払わない患者の中には、経済的な理由で難しい場合もあるとは思いますが、違う場合も多いのです。

「昔は、1割負担でよかったはずだ。いや、無料で診察してくれたときもあった」
「今の制度はおかしいと思うし、腹が立っているから、俺は払いたくない」

どうですか?

これらは、自分が負担分を支払いたくない理由を、もっともらしく主張しているだけです。

自分は正しいんだ、今の制度が悪いと、自己を正当化して、他人のせいにしているのです。こんなのは、自分勝手なわがままの理論です。

今の医療制度が悪いことと、あなたの医院経営や病院経営とは、何の関係ありません。彼らの主張に付き合うことも、理解する努力をする必要もありません。

そこで院長として知っておくべきことは、どうやって、この自己負担を回収するかということです。

【1】裁判所の手続きで請求する

民法では、原則、債権は10年が時効となっていますが、医療費の時効は3年に短くされています。そのため、3年が経ってしまったら、医院や病院は患者に対して請求はできません。

ただし、この時効を中断させる方法があります。それは、裁判上の手続きを行なうことです。

「内容証明を送ればよいのか」と聞かれることがありますが、これだけでは時効は6ヶ月間しか中断しません。内容証明を送って、その6ヶ月以内に訴訟などの裁判上の請求をしなければいけないのです。

そのあと、裁判に勝つと時効が中断するだけではなく、時効は10年になります。もちろん、勝訴すれば、裁判所の強制執行も可能になるので、10年も待つ人はいないでしょう。

あなたは「裁判なんて大変だ」と思うかもしれませんが、そんなことはありません。

正式な裁判を行なえば、時間も費用もかかりますが、「支払督促」「少額訴訟」など、簡単な手続きもあります。もちろん、それで確定すれば、裁判で勝訴したのと同じ効果があります。

これらは、いちいち裁判所に行く必要もなく、郵送でもできます。

相手の患者が異議を申し立て始めると、時間がかかることもありますが、もともと患者は病院でサービスを受けているのですから、こちらが正当な医療費を支払ってもらうことに、争う余地は少ないはずです。

大事なことは、医院や病院として、患者負担分を支払わないという「逃げ得は許さない」という強い意思を相手にハッキリと示すことです

それが、医院経営や病院経営の資金繰りの改善だけではなく、他の患者の不公平の解消、看護師の士気の向上をもたらします。

【2】患者が支払わなくてもよい雰囲気を作らない

患者が自己負担分を支払わないのは、医院や病院が悪いわけではありません。

ただし、医院経営や病院経営として、患者に支払わせる工夫もして欲しいのです。

何度も言いますが、悪いのは医院や病院ではないことよく分かっていますが、予防はやっておくべきです。

(1)すばやく回収する

すばやく患者に支払ってもらうこと、これが大変重要です。

というのも、上記では裁判で訴訟してでも回収すべきだと言いましたが、ほとんどの患者が「うっかり忘れ」の場合が多いのです。

たまたま、お金の持ち合わせがなかったので帰ったら、もう一度、来るのがメンドクサイなった。それで1週間もすると、忘れてしまったという患者がほとんどなのです。

その患者に、いきなり内容証明を送ったら、びっくりしてしまい、二度とあなたの医院や病院に来院してくれません。これでは、医院経営や病院経営にとってもマイナスです。

そのため、窓口で現金がないと言われたら、明日中、今週中などの期限を設けましょう。

そして同時に、住所、電話番号、勤務先などを、免許書などのコピーをもらって確認し、控えておきましょう。もし期限までに支払ってくれない場合には、すぐに電話してください。

とにかく、目安は1週間以内です。

というのも、最初は支払う気持ちがあった患者でも、時間が経つと、どうしても支払いたくないという感情になりがちです。

それで裁判となれば、あなたの医院や病院も既存の患者を1人失い、患者自身も不快になり、悪いところだらけです。

(2)予約診療の場合には、知らせるか、預かる

予約診療を行なっていて、治療費が高額になる場合には、必ず知らせておくべきです。

また、美容整形など治療費がいつでも高額になりがちな場合は、クレジットカードも使えるようにすべきです。ただ、すべての患者がカード決済を始めると、カード会社への手数料がかかるため、医院経営や病院経営の資金繰りを悪化させることは覚えておいてください。数%の手数料であっても、1年間を累計するとかなりの金額になります。

また、病棟がある病院であれば、入院などの予定日が決まって、かつ長期間で高額な医療費なる場合には、必ず、前金としてお金を預かりましょう。それは患者が退院するときに、精算すればよいのです。

【3】最後に回収できないと分かったら

どうしても経済的理由や、患者から教えてもらった電話番号に連絡しても繋がらないこともあります。最初から、患者が故意に支払わないと腹をくくられてしまうと、回収できないこともあります。

その場合には、内容証明郵便で、「負担分を免除する」という通知を行ないましょう。

それで、患者負担分は、
医院や病院の決算書で貸倒処理ができます。

内容証明郵便が、不明で戻ってきても大丈夫です。とにかく、郵送する手続きが大切です。

なぜわざわざ、こんなことをするのかと言えば、この患者負担分は将来回収できる可能性がある限り、医業収益として決算書に計上されてしまうのです。

そうすると、これに該当する利益に対して法人税がかかってしまうのです。

回収できない患者負担分に税金も取られたら、バカらしいと思いませんか?

だから、毎年、決算日が近づいてきたら、もう回収できない患者負担分はピックアップして、内容証明を送りましょう。

それだけで節税できれば、医院経営や病院経営の資金繰りが少しでも改善します。

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