医療法人が院長先生に、お金を貸すと問題があるのか?

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2013/09/30
医療法人が院長先生に、お金を貸すと問題があるのか?

医療法人と院長先生の銀行の口座は、まったく別のものです。
医療法人は、自分の銀行の口座の動きだけを把握して、それを決算書に反映させることになります。

そのため、院長先生の口座から医療法人にお金が振り込まれたり、医療法人から院長先生の口座にお金を振り込むと、医療法人の決算書に出てくることになります。

医療法人が院長先生に、お金を貸すと問題があるのか?  

このような、院長先生と医療法人のお金のやり取りは問題がないのでしょうか?

【1】 院長先生からの借入

医療法人が、院長先生からお金を借りることはよくあることです。
例えば、院長先生が個人で医院経営や病院経営を行っていて、数年後に医療法人を設立したとします。

個人で医院経営や病院経営を行っていたときの建物の内装設備や医療機器を医療法人の名義に移すと、その価格と同じ金額を医療法人が借りたことになるのです。

ここで注意が必要なのは、お金のやり取りがなくても、医療法人が院長先生からお金を借りて、固定資産を買ったとみなされることです。
それ以外にも、院長先生が医療法人で支払うべきお金を、個人で立替えることも多いのでしょう。

例えば、患者の送迎を行うクルマのガソリン代を院長先生の個人のカードで支払ったり、看護師の夜食を買う時に、自分のお金で支払ったりすると、この立替金が増えていきます。
この立替金も、口座でのお金のやり取りがないのですが、医療法人は院長先生から借りたことになります。

この借金が多くなってくると、医院経営や病院経営で注意すべきことが出てきます。

(1)相続税が高くなる

院長先生が保有する医療法人の持ち分は、相続税法では評価を安くなる特例があります。

今から医療法人を設立するならば、その持ち分には相続税が、そもそもかかりません。
医療法人を事業承継する子供が、相続税が支払えなくて、医療法人を解散しなくてはいけないとなれば、本末転倒になるからです。

ところが、院長先生から医療法人への「貸付金」に関しては、安くなる特例はなく、そのまま評価されてしまいます。

例えば、院長先生が医療法人に1億円を貸していたとすれば、相続税率が50%の場合、5000万円もの相続税がかかることになるのです。

あなたは、「医療法人からお金を返してもらえばよいのでは?」と思うかもしれません。
ところが、院長先生が貸したお金で、医院や病院で使う建物や土地を買っていたり、医療機器に変わっていれば、お金を返すことができません。

そのため、院長先生からの「貸付金」が大きい場合には、一度、相続税を計算してみてください。
平成27年度からは、相続税の税率は最大で55%になります。

(2)金融機関からの融資が止まる

医療法人は、院長先生からの「借入金」にも、銀行からの「借入金」にも、平等に返済することになります。

もし医院経営や病院経営で資金繰りに詰まって、医療法人が倒産した場合、院長先生と金融機関は貸している比率で返済されることになります。
院長先生は、銀行の「借入金」の連帯保証人だから、平等での返済にはならないと言うかもしれません。

ただ、院長先生が個人で他人から借入をしている可能性もあります。

もちろん、医院経営や病院経営で資金繰りに詰まって倒産したり、院長先生個人が多額の借金をしている可能性は少ないのですが、金融機関は社内のルールもあり、最悪の場合を想定するようになっています。

そのため、院長先生からの「借入金」が大きい医療法人は、金融機関からの融資が止まってしまうことがあります。

このように、医療法人が院長先生からお金を借りると、医院経営や病院経営に影響を及ぼすことがあります。

そのため、院長先生からの貸付金が大きくなり過ぎないように、金融機関からお金を借りるか、資本金(基金)として院長先生に出資してもらうようにしましょう。

院長先生からの貸付金を、医療法人の持ち分として現物出資することもできます。

【2】 院長先生への貸付

医療法人が、院長先生にお金を貸していることもあります。

私が見てきた医院や病院で院長先生にお金を貸している事例は、それほど多くなかったのですが、中には院長先生が自宅を買う資金として1億円以上も貸しているケースもありました。

院長先生に役員報酬を支払えばよいのですが、所得税が高額になるのを嫌がっていたり、自宅などの不動産を買うために、急いでお金が必要になることもありからです。

院長先生が医療法人からお金を借りていると、医院経営や病院経営に大きな問題が発生します。

(1)利息が発生する

院長先生が医療法人にお金を貸しているときには、利息を取る必要がありません。
個人は、子供や親せきにお金を貸しても、利息を取らないこともあります。
非営利で、不合理な行動を取るのが人間であり、法律でもそれを許しています。

ところが、医療法人が院長先生にお金を貸したときには、利息を取らなければいけません。
建物や医療機器に投資していれば、医業収益を上げることができるのです。

医療法人のお金は、利益を稼ぐために、その利益は患者に還元するために使わなくてはいけないのです。

これは、院長先生への貸付だけではありません。看護師やスタッフへの貸付でも同じように利息を取る必要があります。

この利息は医療法人の利益になり、法人税がかかるのです。
一方、院長先生が支払った利息は経費になりません。所得税は一円も減らないのです。

つまり、医療法人が支払う法人税の分だけ損をすることになります。
それでは、この利息は、何%で計算すればよいのでしょうか?

医療法人が金融機関からお金を借りていれば、その金利の平均を取ります。
もし医療法人が金融機関からお金を借りていないと、現在は、4.3%で計算すると決められているのです。

1億円を貸していたら、年間43万円の利息です。
これに40%の法人税がかかるとすれば、17万2000円にもなります。10年間続ければ、170万円以上です。

このお金は医院経営や病院経営に何の貢献もしません。お金を捨てていることになります。

なお、院長先生への貸付が、災害、病気等により臨時的に多額の生活資金が必要になったという理由があり、合理的な返済期間内であれば、利息はゼロでも構いません。

(2)金融機関から見たら最悪

銀行などの金融機関は、転貸しをすごく嫌がります。

例えば、医療法人にお金を貸したら、そのお金をMS法人に貸してしまった。
医療法人にお金を貸したら、そのお金を院長先生に貸してしまった。
このような行為を転貸しと呼びます。

もちろん、お金に色はないので、誰から借りたお金が、どのように回ったのか分かりません。そのため、決算書でMS法人や院長先生にお金を貸している事実があると、金融機関からは転貸しを行ったと見られてしまいます。

なぜ、そんなに嫌がるかといえば、金融機関は医療法人の財産の状況を判断して、お金を貸しているからです。
MS法人や院長先生個人の財産の状況は見ていません。

本業ではなく、転貸しのお金が回収できずに医院経営や病院経営が破たんしたとあっては、金融機関としては、許すことができません。

そもそも、MS法人や院長先生が使うならば、直接、金融機関に融資を申し込めばよいのです。
そうすれば、MS法人や院長先生の財産の状況で判断できるのです。

このように、医療法人の決算書に、院長先生への多額の貸付金が載っていると、金融機関がお金を貸してくれないことがあります。

(3)医療法でも問題になる

医療法では、医療法人が院長先生にお金を貸す行為は、付帯業務になりません。
そのため、そもそも貸付ができるのかという疑問もありました。

ただ、平成19年3月30日の厚生労働省医政局長通知で、院長先生や看護師への貸付は福利厚生としてならば、行ってもよいと明らかになりました。

そのため、院長先生にお金を貸すときには、看護師やスタッフも含めた全社員を対象とした貸付に関する内部規定を作成しておかないといけないのです。

ただ、意味のない利息や金融機関と関係が悪化するという問題があるので、医療法人から院長先生にお金を貸し付けるのは、できるかぎり止めましょう。

役員報酬として計画的に支払えば、このような事態にはならないのです。

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