個人事業主の医院は、倒産防止共済(経営セーフティ共済)に加入してはいけない

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2017/10/30
個人事業主の医院は、倒産防止共済(経営セーフティ共済)に加入してはいけない

経済通産省の管轄である独立行政法人中小企業基盤整備機構(いわゆる、中小機構)が倒産防止共済(経営セーフティ共済とも呼ばれる)という商品を販売しています。倒産防止共済は昔からある制度ですが、東日本大震災を契機に、拡充されました。
法人だけではなく、個人でも加入できるため、毎年年間5万件弱で加入者が増えています。すでに加入している件数が47万件を超えていて、これからもドンドン増えていくでしょう。これはこの制度に下記のメリットがあるからです。

 

特徴①について

この倒産防止共済の最大の目的は、①の取引先が倒産したときに、お金を借りることです。

ただし掛金総額の10倍まで借りることができると書きましたが、被害額の方が少なければ、そこまでとなります。
例えば、倒産防止共済の掛金が160万円で、1500万円の貸倒れが発生した場合には、1500万円を借りることになります。それでも無担保で借りることができるため、かなり有利な制度です。

 

特徴②について

この②は法人だけではなく、個人事業主の医院や病院であっても、支払った金額の全額が経費となることが特徴です。

しかも1年分を前払いで支払っても、全額が経費となるのです。個人事業主が12月末にまとめて支払うだけで経費となる商品は他にはなく、税務的にも優遇された制度です。月額の最大の掛金が20万円ということですので、単純に12ケ月で240万円が経費になります。

 

特徴③について

③については個人事業主の医院や病院が800万円まで掛金を貯めておけば、いつでも自分が好きな時に解約してお金を戻してもらえます。

ただし注意点があります。倒産防止共済を解約する場合には、下記の3つのケースがあります。

通常は、「(1)任意解約」を選択するはずです。そのため、40か月以上を掛け続けていないと、100%の解約返戻金は戻ってきません。

 

ここまで倒産防止共済を説明してきたのですが、あなたが医院経営や病院経営を行う立場として、加入すべきと考えますか?

実は、医院や病院は倒産防止共済に加入すべきではありません。

例外なくという訳ではありませんが、個人事業主として、ずっと医院や病院を経営していく場合だけは加入してもよいと思います。それ以外はデメリットばかりなので、止めた方がよいでしょう。

その最大の理由は、医療法人はこの倒産防止共済にそもそも加入できないからです。

医療法人は加入できないため無視するとして、個人事業主の医院や病院が倒産防止共済に加入したら、どのようなでデメリットがあるのでしょうか?

 

特徴①のデメリット

特徴①でお金を借りれると説明しましたが、一般消費者向けの債権は対象となりません。つまり、事業用の取引先向けの売掛金や受取手形しか認められないのです。
個人事業主の医院や病院は、保険診療であれば市町村や健保組合からの未収金となるため、貸倒れることはありません。自由診療が中心の個人事業主の医院や病院であれば、一般消費者だけが相手になるため、やはり貸付の対象となる債権からは除外されてしまうのです。

ということで、個人事業主の医院や病院にとっては、倒産防止共済の制度の一番の目的が活用できないのです。

そのため、加入する動機は、単純に節税目的のみとなります。これは医院や病院だけではなく、飲食店やアパレルなどの小売店でも同じです。売掛金が一般消費者となるため、お金を借りることができません。

 

特徴②と③のデメリット

②で掛金は個人事業主の医院や病院で事業所得の経費になると説明しました。

とすれば、逆に③で解約して戻ってきたお金は事業所得の収入として計上されてしまいます。

通常、個人が生命保険に加入して、解約して戻ってきた場合で利益となれば、それは一時所得として課税されます。一時所得であれば50万円の特別控除を差し引き、残った金額を2分の1にするため、かなり所得税率が安くなります。

ところが個人事業主の医院や病院が倒産防止共済の解約返戻金をもらうと事業所得と合算されて、経費などの控除もなく高い税率の所得税がかかるのです。もともと少しずつ掛金を支払っていたとすれば、低い所得税の節税を行っていたにも関わらず、戻ってきたときには高い税率になってしまうのです。

ではどのような場合に、個人事業主の医院は解約するのでしょうか?
それは当然ですが、医療法人に法人成りするときです。医療法人は加入できないのですから、解約するしかありません。倒産防止共済に加入するような個人事業主の医院や病院は儲かっているはずです。所得税を節税するために、医療法人を設立するとすれば、倒産防止共済の解約返戻金には最大税率の所得税がかかるかもしれません。しかも、医療法人を設立するのが、倒産防止共済に加入してから40か月経っていないと、先ほどの表のように100%すら戻ってこないのです。

40か月も掛金を支払い続けて100%が戻ってきても、所得税の税率で損をするのに、そもそも100%すら戻ってこないとしたら、最初に加入すべきではないという結論になります。

ずっと個人事業主として医院経営や病院経営を行っていくと心に決めている院長先生以外は、「掛金の全額が経費になります」という目先のメリットに惑わされずに、冷静に判断しましょう。

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