自分の診療科目についての医療費控除について、最低限のことは知っておきましょう。

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2017/03/20
自分の診療科目についての医療費控除について、最低限のことは知っておきましょう。

自分の診療科目についての医療費控除について、最低限のことは知っておきましょう。

個人事業主だけではなく、会社役員やサラリーマンが1年間の生計一の親族の医療費を合計して10万円を超える場合には、医療費控除として確定申告すると所得税が還付されます。医療費控除は会社の年末調整では認められず、会社役員やサラリーマンであっても、確定申告が必要となります。

e-taxでの電子申告を行う人たちは医療費の領収書を提出する必要はありませんが、e-taxでの電子申告を行わない人たちは、医療費の領収書の原本の提出が必要となります。そのため、毎年、確定申告の時期になると医院や病院に患者から、「昨年、もらった領収書を失くしてしまい、再発行をお願いします」という電話がかかってくるのです。もちろん、e-taxで電子申告を行う人たちであっても、税務調査があれば、医療費の領収書を税務署に提示しなくてはいけません。

そして、10万円を超えたら医療費の全額が控除されるのではなく、10万円を超えた部分が所得控除の対象となります。

1年間の医療費の控除の上限額は10万円を差し引いた金額で、200万円となります。
例えば、1年間で15万円の医療費を使ったら、10万円を差し引いた残りの5万円が所得控除の対象となり、所得税率が45%の人であれば、22500円が還付されます。

「夫婦がまだ現役で働いている家族であれば、1年間で10万円超の医療費がかかることはあまりないかな?」と院長先生は思うかもしれません。ただ家族のうち夫1人だけで10万円超ではなく、生計一の親族の医療費を合算して10万円超になればよいという制度なのです。

生計一の親族とは、一緒に暮らしていなくても、東京で下宿している子供の医療費だけではなく、実家の両親の医療費など、生活費を負担しているならば含むという意味です。つまり、財布が一緒の親族の医療費はすべて合算してよいということなのです。例えば、妻が共働きでも、父親がまだ現役で給料をもらっていたとしても、夫の医療費控除としてすべてを合算して申告してよいのです。

基本的には、生計一の親族の中で、もっとも所得税の税率が高い人が、医療費控除による所得控除を行って申告をすると得になります。

患者からよくある質問として、「医療費は妻の通帳から支払われているのですが、夫の医療費控除の対象として問題ないのでしょうか?」というものです。生計一とは財布が一緒ということですので、夫の通帳だろうが、妻の通帳だろうが、すべて同じ家計から支払われているため、そこを気にすることはありません。

一方、もう一つよくある質問が、「今年は、インプラントを入れたので、それだけで100万円の医療費がかかったから、10万円を差し引いた90万円が所得控除の対象となることでよいですよね?」というものです。
実は、医療費控除とは「1年間で病気を治すために使った医療費が多額であれば、それを考慮して所得税を安くする」という趣旨の制度です。そのため、病気を治すために使った医療費だけが対象となります。予防のために打つインフルエンザの予防接種、病気ではない痩身を目的とした自由診療、レーザー脱毛の治療費、高額なインプラントの費用などは、対象とならないのです。

「保険診療が対象となり、自由診療は対象とならない」と勘違いしている院長先生もいますが、自由診療であったとしても、治療のために必要であれば、医療費控除の対象になります。

ガンの治療でまだ厚生労働省から認められていない治療薬を使う場合には保険診療とはなりませんが、当然、治療のための医療費に該当しますから、控除の対象となるのです。処方箋による薬だけではなく、ドラッグストアで買った医薬品も医療費の対象となります。さらには、医院や病院に通うための交通費も医療費の控除対象となります。どうしても、この医院や病院でしか治療できないので、遠方から来た場合には、その交通費も合算できます。(宿泊費は医療費控除の対象となりません。)しかも、付き添いが必要であれば、その人の交通費も医療費控除の対象となります。また遠方ではなく近くの医院や病院に行くときに、病気のために歩けずタクシーを使った場合には、その領収書も医療費控除の対象となるのです。

すべてが医療費控除の対象になるわけではないので、確定申告の時期になると、大学病院の相談窓口で「なぜこれが医療費控除の対象にならないのか?」などと怒っている人を見たことがあります。
歯科医院であれば、個人医院であっても、「医療費控除の対象となると思ったので、高額な差し歯を入れたんだ。最初に教えてくれなくちゃ、困る」などと怒られることもあります。
「じゃ、医療費控除の対象とならないのであれば、治療しなかったのか!」と問いただせば、そんなはずはないでしょう。もちろん、そんな反論をすれば火に油を注ぐことになるので、丁重に対応しなければいけません。
院長先生からすれば、「医療費控除については、患者自身の確定申告のことであり、自分で調べることが原則だろ」と感じるはずです。医院や病院がそこまで面倒をみる必要はないと、私も思います。

しかし、事前に少しだけ説明しておけば、クレームを防げることも確かです。

ちょっとしたコミュニケーションを重ねることが、患者と院長先生の信頼関係を築く一因にもなります。医院や病院には顧問税理士がいるはずですので、院長先生の診療科目であれば、大体、何が患者の医療費控除の対象になるかを聞いておきましょう。もし患者に質問されたら、簡単に答えられるだけの知識があれば十分です。

ただ、入院病棟がある医院や病院は医療費控除の対象となる範囲の判断が難しくなります。例えば、患者が入院した場合に4人部屋でよいところ、自分の意向で個室に入った場合の差額ベッド代は医療費控除の対象にはなりません。このときでも、4人部屋の入院施設がすべて埋まっていて、仕方がなく個室に入ったら、その差額ベッド代は医療費控除の対象となるのです。

それでは、そもそも1人部屋の入院施設しかない産婦人科の医院や病院であったら、どうなるのでしょうか?
1人部屋しか選べませんので、差額ベッド代の全額が医療費控除の対象となります。また、2人部屋に入ったところ、来客が多いため、2人分の差額ベッド代を負担して、1人で使った場合はどうでしょうか?
1人で2人分は必要ありませんが、2人部屋のうち1人分は必要となりますので、差額ベッド代の2分の1が医療費控除の対象となるのです。それ以外にも、入院した時の食事代、シーツなどのクリーニング代、血圧計の購入なども医療費控除の対象となります。

一方で、付き添い人の食事代、パジャマのクリーニング代、歩行練習用の歩行器などは医療費にならないこともあります。医院や病院では判断がつかない場合には調べることはせずに、「税務署、または患者自身の顧問税理士に聞いてください」と患者に伝えましょう。

このように、差額ベッド代は保険診療に該当しなくても、医療費控除の対象となります。とすれば、「生計一の親族の医療費を合算できるので、親族のうち1人でも入院したら10万円ぐらいは、すぐに超えるな」と院長先生は思うかもしれません。ところがこの医療費控除は単純にかかった医療費を合算するだけではなく、それに対応して給付されたり、補てんしてもらったお金があれば差し引くのです。

自分の診療科目についての医療費控除について、最低限のことは知っておきましょう。

協会けんぽなどから支給される高額療養費、家族療養費、出産育児一時金などは当然、「保険金等で補てんされた金額」に該当します。それだけではなく、患者が自ら加入していた県民共済や民間の生命保険金からの保険金も差し引くことになるのです。
そのため、1年間で100万円の医療費がかかっても、そのうち70万円が補てんされて、差し引いた残りの金額が30万円となったとすれば、そこから10万円を差し引いた20万円だけが所得控除の対象となります。

ただ「保険金等で補てんされた金額」が、その補てんの対象となった医療費を上回る場合もありますが、他の医療費からは差し引きません。

あくまで医療費ごとに計算して、マイナスになったらゼロ円として合算していくことになります。

とにかく、生計一の親族の1人が1年間で10万円超の医療費がかかったとすれば、それ以外の医院や病院の領収書はそれに合算して、医療費控除の対象となるのです。

そのため、自分の医院や病院では保険診療だけで、1年間でその患者の自己負担分が1万円だったとしても、医療費控除の対象となれば領収書が必要になったり、質問されることもあります。

院長先生が簡単な医療費控除についての質問にも答えられるようにしておくことで、患者とのコミュニケーションにつなげましょう。

 

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