患者とのトラブルに巻き込まれたら、大きなクレームに発展したら、どう解決すべきか?

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2012/11/16
患者とのトラブルに巻き込まれたら、大きなクレームに発展したら、どう解決すべきか?

私が小さいころ、親に医院や病院に連れて行かると、院長先生は偉くて、地域のみんなに尊敬されていて、「とにかく、お前は、先生の指示をしっかり聞いて、絶対に守るように」と親によく言われました。

いや、今でも、院長先生は偉くて、地域の人たちに尊敬されています。

医院や病院の院長先生は、「風邪をひいた、腕の骨を折ったと、飛び込んでくる患者の病気を治してあげたい」という気持ちで、接してくれているのです。
私たち患者も、院長先生の話を理解しようとするのは、当然です。

ところが悲しいことに、クレーマーと呼ばれる患者が増えてきたことも、事実です。

インターネットを通じて、他の人の意見を聞いたり、自分の意見を主張できる場があることも拍車をかけています。会ったことも、話をしたことがない人が、インターネットを通じて、助言してくれる時代です。

しかもその助言者が弁護士だったりするので、患者も法律に詳しくなり、やっかいです。
現在の医院経営や病院経営では、患者のクレームに、どのように対応していくのかが重要な課題の1つになっています。

例えば、会計事務所の私のところに来た相談内容は、下記のようなものです。
(私の会計事務所には、司法書士や行政書士は在籍していますが、弁護士はいません)

【1】窓口で、病気が治らないからお金を支払いたくないと騒ぎ立て、窓ガラスを破壊した

【2】医院の周りの壁に、誹謗中傷の貼り紙をされた

【3】もらった薬を飲んでも治らないという理由で、脅しの電話を1日に何度もかけてくる

これらは、ハッキリ言って、営業妨害に当たるので、弁護士や警察に相談に行くべきですと答えます。

ところが、そこまではいかないけれど、困ったクレーマーもいます。

【4】インターネットのブログで、医院や病院、それに院長の対応の悪さを書き続ける
(誹謗中傷まではいかないが、いわゆる悪口をいろいろな掲示板に書き込む)

【5】周りに、医院や病院の中に不倫している人たちがいると、根も葉もない噂を広める
(文章では、どこにも残っていないが、他の患者から教えてもらう)

【6】医院や病院のスタッフのミスや暴言を、保健所にタレこむ
(医院や病院側にミスがあったことは事実だが、相談もなくいきなり)

これらは、証拠がなかったり、内容が事実であったり、医院や病院側にも原因がある場合、なかなか院長も強い態度に出ることに躊躇してしまいます。

ただ、どんなクレームでも、必ず解決できます。
まずは、なぜクレームになっているのか、考えてみたことはありますか?
それは、医院や病院側の対応の悪さ、そして患者側の誤解に原因があります。

(1) 医院や病院側の対応の悪さ

医院経営や病院経営は、他のビジネスと違うところが多いのですが、クレーム対応に関しては、同じです。

クレームが発生する理由は、医院や病院側からの説明不足が大きな原因です。

診察内容、病気の治療方針、薬を飲む期間、患者として何をするのかなど、納得するまで説明しなければいけません。

もちろん、院長の最初の診察での見立てが間違うこともあります。当然です。
その場合でも、患者と話し合い、信頼関係を築いておくことが最大の予防策です。

言葉だけではなく、院長の表情や座り方、目線の配り方などのちょっとしたしぐさにも気を付けるべきです。

と言っても、難しいことは分かります。1日に何十人も診察して、時間も限られている中で、全員が納得するまで説明するのは不可能です。

それでも診察する前に、このことを思い出すことが院長の態度に表れて、患者に対するメッセージとして受け取られるのです。

そして、それぞれの患者によっても、患者のそのときの気分によっても、院長の態度を変えなくてはいけません。

あなたが、クルマに乗っていて、別に急いでいないときに、横から強引にクルマに入られたら、どう思いますか?

「強引だな。まぁでも、そんなに急いでいるなら、しょうがないか」
これで、終わります。

ところが、自分がすごく急いでいるときだったら、どうですか?

「くそー、おれだって急いでいるんだ。なに横入りしてんだ、この野郎!」
って、怒りますよね。

実際に、1台のクルマに横入りされても、多分、到着時間は1分も変わりません。
それが分かっていても、自分の気持ちを抑えることができないこともあるのです。
同じ人でも、そのときの状況で変わってくるのです。

それが医院や病院では、患者の具合が悪かったり、折れた骨が痛んだり、気持ちも落ち込んでいるのです。患者も、いつもとは違う心の状態なのです。

そこをよく知ってほしいのです。

もし横入りしたクルマに文句を言いたくても、自分のクルマのクラクションを鳴らさないかぎり、こちらの気持ちを相手に伝えることはできません。
自分がどれほどムカついても、怒っても、相手はまったく気づかないのです。

それは医院や病院も同じです。

ムカついた患者が、医院や病院にクレームをするのは、クラクションと同じで、自分のことをまったく院長や看護師が理解してくれないと主張しているのです。

だからこそ、院長先生は、患者の表情やその態度を観察して欲しいのです。
あなたが説明したことに納得したのか、それともまったく納得していないのか、お互いにクルマに乗っているのではなく、顔を合わせているのですから、分かるはずです。

もし納得していない態度であれば、もう少しだけ説明する時間を取ってください。
そうすれば、クレームにまで発展する確率は、グッと下がります。

さらに、患者が小さなクレームを発信していたのに、そのあと、関係がかなり悪化してしまうのは、医院や病院の対応が遅いことも要因です。

院長や看護師の記憶では、最初は「あれがクレームだったの?」と思えるほどだったのに・・・だんだんと患者の気持ちがエスカレートして・・・こちらが気付いたときには、まともに話ができないほど、関係がこじれている事例に何度か会いました。

先ほどの【1】から【3】までのクレームを私のところに相談に来ている医院や病院は、その時点で対応が遅いと分かります。

脅かしの電話は、ほとんど犯罪ですし、患者側との関係は完全に最悪の状態です。
会計事務所が解決できたり、助言できたりするレベルではなく、早急に弁護士や警察に相談しなければいけません。

ところが、相談に来た医院や病院側は、そこまでの認識がまったくないのです。
すぐに医院や病院側が患者に謝っていれば、それだけで解決できたのに、こんなにこじれると・・・どちらにとっても、不幸なことです。

だからこそ、患者の態度をよく観察し、言葉に耳を傾けて、早急に対応することが、こじれるクレームを減らす方法なのです。

(2)患者側の誤解

医院や病院側の対応が悪いことだけで、患者のクレームが増えている訳ではありません。
患者側の誤解も原因になっています。

誤解1

  • ア)医院や病院で診察してもらい、薬を飲めば、病気は治る
  • ウ)同じ病気の人が、この医院や病院で完治したから、自分も治ると思い込む

誤解2

  • ア)医院や病院の診察に、積極的に協力する必要はない
  • イ)1つの医院や病院の意見を信用せず、セカンドオピニオンを聞いて回る

誤解3

  • ア)医院や病院は、患者の診察を断ることはできず、病気を治す義務がある
  • イ)医療法に書いてあることを、医院や病院は、絶対に守るはずだ

どうですか?

患者は自分の病気が治るために、医院や病院に通っているのであり、それが難しいと分かったり、拒否されたりすると、クレームに発展するのです。
このような誤解は、すべての患者が持っています。

また、誤解2のセカンドオピニオンは悪いことではないのですが、患者が、いろいろな医院や病院の意見を聞きすぎることは、結果的にクレームを生む土壌を作っています。

やはり、医院や病院の院長は、自分の診察を信じて欲しいと患者に訴えるべきだと思います。
院長は患者が、このような誤解の中で、診察を受けているということを頭の片隅にいつでも置いて対応して欲しいのです。

と、このように医院や病院側が患者の気持ちを理解して、対応を変えれば、かなりクレームは減ると思います。

ただ、クレームをゼロにすることはできません。
そのとき、医院や病院がやってはいけない対処方法があります。
それをやってしまったがゆえに、大きなクレームに発展することがあります。

【1】念書を書いてしまう

院長が念書に押印してしまうことが意外に多くてびっくりするのですが、日本は法治国家であり、書面は一定の法律的な効力を持ってしまいます。

そのため、早めに患者に謝ることでクレームが終わるならば、それはよいことですが、そのときに患者から一筆書いてくれと言われても、法律の専門家に相談せずに、軽く承諾してはいけません。

患者のクレームが、「これに押印するだけで、終わるならば」という気持ちで応じてしまう院長がほとんどですが、あとでもっと大きなトラブルに巻き込まれることが多いのです。

【2】毅然とした態度を取ることも重要

クレームの原因が医院や病院側だけにあるならば、謝るべきですが、まったく落ち度がないこともあります。
その場合には、医院や病院も毅然とした態度を取るべきです。
謝るよりも、患者に根気強く説明を続けて納得してもらうべきです。

また、患者からお金(示談金)を要求されることもありますが、原則、断わってください。
一方、明らかに医院や病院側のミスで、クレームになっていることもあります。
投与した薬を間違えた、スタッフが暴言を吐いたなど様々ですが、その場合でも、お金で解決する提案は、患者との交渉の最後にすべきです。

最初からお金の話をすると、あとで要求される金額が吊り上ったり、交渉が余計に長引いたりします。
患者は、医院や病院はお金持ちだという認識があるのです。

【3】代理人は無視

クレームをつけてきた患者本人ではなく、その周りの人や親族が代理人と主張して、前に出てくることがあります。

もちろん、医院や病院側にもミスがあり、それに対して患者の代理人として弁護士が出てくれば、誠意ある対応をしなければいけません。弁護士は、患者側の代理人になって、交渉するのが仕事です。

ただ弁護士でもないのに、「委任状があるから」という理由で、代理人を主張する人もいますが、話に応じてはいけません。必ず、クレームが悪い方向に行きます。
クレームをつけている本人、もしくはその弁護士と話し合わなくていけません。

【4】弁護士や警察と連携を取る

医院や病院では対応できないクレームもあります。

クレームもやり過ぎれば、犯罪ですし、医院や病院としては、スタッフや他の患者の安全を守ることが大前提です。これは、医院や病院側に明らかにミスがあっても、同じです。

医院や病院とたった1人の患者とのトラブルに、全員を巻き込んではいけません。
特に、患者から暴力や暴言があったら、絶対に許してはいけません。
この患者のクレームは、自分では解決できないとあなたが判断したら、すぐに弁護士や警察に相談しましょう。

特に、警察とはできるだけ密に連絡を取り、日ごろから情報交換を行っておくとよいでしょう。

医院や病院だからクレームが多いのではなく、少ない方なのです。
最初に解説したように、医院や病院の院長は知識も豊富で、地域では尊敬される存在なのです。

それが他のビジネス、例えば、家電量販店にもなれば、毎日、すごい数のクレームがあります。
しかも、医院や病院に対するものよりも、一方的な言いがかり的なものが多いのです。
それでも、そのクレームにうまく対処して、ドンドン解決しています。

お客の心を理解することで、どうやればクレームが早期に解決できるのか、真剣に対応しているからなのです。

医院や病院のクレームも、患者の誤解を理解して、真剣に対応すれば、早期の解決が絶対にできます。

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